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自然科学研究機構シンポジウム

第18回自然科学研究機構シンポジウム
生き物たちの驚きの能力に迫る(2015年3月22日開催)
高校生記者による取材記事


※下記の記事タイトルをクリックすると、記事内容が表示されます。

蒼海の一粟が物語る動物門の危機 (明星学園高等学校 前田 黎 さん)
 私たちの真の原点とは、蒼海の一粟な動植物なのかもしれない。しかし私たちは今、千年一日の如く親しまれてきた動植物を抹消しようとしている。 かつて天下泰平であった蒼海が今や天下多事へと変化してしまっている。それは、地球温暖化による海面や海水温の上昇が主な原因だと言えるだろう。ヒトが未来永劫に追いかける快適な空間の獲得によって、十年一日の如く暮らしてきた海洋生物たちが殺されてしまっているのだ。その海洋生物たちを少しでも未来に残そうと研究なさっているのが、今回ご講演くださった高橋俊一先生である。高橋先生は造礁サンゴそのものの個体に焦点を置くのではなく、造礁サンゴの体内で共生している褐虫藻に注目している。褐虫藻とは、浅瀬に住んでいる造礁サンゴから無機塩類を受け取る代わりに、光合成をしてサンゴに糖を提供している藻類一種である。先生がこの褐虫藻に着目したのは、環境が悪くなって海水温が上昇、あるいは下降しても褐虫藻がサンゴに糖を提供し続けることができたならば、造礁サンゴは生き続けることが出来るからだという。『しかし今の目覚ましく進歩し続けている科学技術を駆使すれば、どんな環境にも耐えられる、いわばスーパー褐虫藻を創ることは容易なのではないか』と高校生記者。すると『暑さに強い褐虫藻は逆に寒さに弱いんです』と高橋先生。「つまり暑さにも寒さにも強い中間の褐虫藻をつくればいいんですが、他の植物と違って品種改良みたいなことはできないんですよ。しかも褐虫藻側も造礁サンゴ側にも相性があって、好みの広い、だからどんな造礁サンゴにも共生できる褐虫藻のピックアップから始めるんです。」と笑顔で語ってくださった。このままだと二〇三〇年には六〇%が白化され失われてしまうというサンゴだが、スーパー褐虫藻を開発することに加え、すでに白化してしまったサンゴにまた命を吹き返らせることをしたいと高橋先生はいう。今回の取材を通して、私は蒼海の一粟ともいえるサンゴこそが往古来今の地球の豊かさや厳しさを物語っているのだと感じた。
生き物たちと研究 (大阪市立桜宮高等学校 大門 一輝 さん)
私は、科目の中でも「生物」が一番好きです。今回のシンポジウムのテーマを知った時、絶対に参加したいと考えました。参加させていただき、ありがとうございました。

今回のシンポジウムはどの講演も大変興味深いものでしたが、私は、高校生記者として、「サンゴと褐虫藻の関係」について、講演していただいた高橋先生と直接お話できるという貴重な経験をさせていただけることになりました。
その取材の際に講演でのお話を更に深く伺うことができ、「研究」という仕事に対する認識が少し変わりました。
中でも高温に強く、多種類のサンゴに共生できる「スーパー褐虫藻」を利用して、サンゴの白化を防げるということに驚きました。
そのことから私は「研究」とは単に調べたり発見するだけでなく、今後のために活用することも大切だということを改めて実感しました。

また、質問にも答えていただきました。
私は講演中にサンゴが減少していることを聞いていて、「オニヒトデ」を思い浮かべました。
以前、和歌山県の串本海中公園でオニヒトデが大量発生し、原因でサンゴが白化しており、人がオニヒトデを駆除してサンゴを守っている事実を聞いていたので、そのことについて訊ねました。

その質問とご回答は以下のとおりです。

Q1:オニヒトデはどのようにしてサンゴを白化させたのですか?
A1:オニヒトデは褐虫藻だけでなくサンゴごと食べているので厳密に言うと白化ではない。
Q2:オニヒトデは何故大量発生したのですか?
A2:人が海に流す農場肥料や都市排水によりサンゴ礁が富栄養化したため大量発生した。
Q3:オニヒトデでの対策は考えておられますか?
A3:考えてるそうです。

私は研究とは対象のものだけでなく、幅広い視野と知識が必要だと感じました。
以上です。
タイトルなし (東洋高等学校 川辺 悠士朗 さん)
 今回、シンポジウム及び研究者の方との交流会を通して、私の生物への関心はさらに深いものとなりました。特に、高橋教授のご講演や交流会では人間による環境破壊とバイオームへの影響を深く考えさせられました。

  高橋教授のお話では、珊瑚が褐虫藻と共生していること、褐虫藻には共生できる珊瑚の種類が幅広いものもいればそうでないものもいること、褐虫藻はその種類によって耐えられる温度の幅が決まっていることなどを新しく知りました。現在は地球温暖化による海水の温度の上昇により多くの褐虫藻が死に、それにともなって珊瑚の個体数も減少しているという問題があり、その問題を解決するため高温にも耐えられ、かつ多くの種類の珊瑚と共生できる褐虫藻の発見に取り組んでいるというお話を聞きました。そのとき私は遺伝子組み換え技術を使って理想の褐虫藻を人工的に作り出せないか、と質問しました。しかし、それは褐虫藻の構造上難しいという答えが返って来ました。それでは理想の褐虫藻は新しく発見するしかないのか、そんな終わりの見えないようなことができるのか、その前にそんな褐虫藻はそもそも存在するのか、と思いました。 しかし、他の研究者の方のご講演を聞いても、初めは無理だと思うような実験、研究を重ねてきたようでした。
 研究者の皆様のご講演は、この世界には知らないことの方が多い、我々の求める答えは必ずこの世界のどこかにある、ということを間接的に示唆しているように感じました。そして、生物界の奥深さを改めて知りました。
褐虫藻の共生 (桜蔭高等学校 村上 侑里夏 さん)
 ご講演では、岩礁サンゴが褐虫藻と共生して貧栄養の環境下で生存しており、海水温の急激な上昇により、褐虫藻がサンゴから離れたり、光化学系Ⅱを修復できなくなったりすることでサンゴが白化するとお聞きし、今までは多様な生物の生存環境となるサンゴが白化していて生物多様性が失われると危惧されていることしか知りませんでしたが、サンゴの白化がサンゴの死滅に繋がる理由を知り、白化の防止策として考えられるのはどういったことかについてもお聞きしました。
 褐虫藻との共生を、観察のしづらいサンゴではなく、モデル生物であるイソギンチャクで見させていただきました。学校での勉強では、「こうである」と学んでから観察をするので、それを前提にして見てしまい、自分から何かを見つけようとする意識はありませんでした。一方、今回は「褐虫藻がどこに存在するか」という姿勢で能動的な見方ができたように思います。顕微鏡の使い方が危うい中始めたので戸惑いもありましたが、サポートしていただきながら、褐虫藻の共生したイソギンチャク・白化させたイソギンチャク・褐虫藻を実体顕微鏡で見、褐虫藻・イソギンチャクの触手を切ったものを光学顕微鏡で見ていきました。切った触手の観察で褐虫藻が内側の細胞にのみ共生している様子が観察できました。始めに実体顕微鏡で褐虫藻の共生したイソギンチャクを見た際には、触手の外側の細胞に共生しているのかと思いましたが、改めて見ると細胞の膜が見え、その内側に褐虫藻が存在していることが確認でき、中空の構造をとっているために細胞の外側にあると勘違いしていたことが分かりました。また、ご講演で見た共生の仕組みの図を思い出し、褐虫藻のみで観察していたものと比較することで、楕円状に見え鞭毛をもって独自に動いていた褐虫藻が、イソギンチャクと共生しているものでは丸く膜で囲まれて見えることも観察できました。
 学校では内容理解の補助のようになっている観察が、生物の構造を知る際に非常に重要であると気付きました。器具の使用に慣れておらず、きれいに観察できたのは、偶然丁度良くピントが合い、偶然丁度良くプレパラートの触手が潰れたからでした。観察でのこのような器具の扱いはしっかりとする必要がありますが、偶然性が発見につながることも感じられたように思います。自分で見つけようとする観察がどんなに楽しくわくわくしたものかを感じることができ、生物学に対する興味がより一層深まりました。
 お話しさせていただく中で、ポスドクの段階までは比較的広く開けているものの、その先まで研究を続けていこうとすると道が狭くなってしまうこともお聞きし、研究者になることは容易ではないのだと改めて知りました。ですが、実際に観察する体験をさせていただくことで、自分が生物について知ることに興味を持っていることや、知らないことを知る楽しみを実感し、研究者になりたいという思いはより強いものとなりました。 最後になりましたが、このような貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

褐虫藻の共生しているイソギンチャク
(褐虫藻の共生した細胞が触手の内側の細胞に見られる。白化したものと比較すると、細胞が中空であり、その構造上の細胞に褐虫藻が共生している様子が分かる。)
白化させたイソギンチャク
(イソギンチャクが死なず、共生していた褐虫藻の光化学系Ⅱの修復ができず、色素が壊れてしまう程度の高温におくことで白化させることができるそうだ。)
褐虫藻
(褐虫藻のみではイソギンチャクとの共生時の丸い形状をしていない様子が分かる。)
切ったイソギンチャクの触手
(写真中部はイソギンチャクの細胞。縦に長い構造をしている様子が見られる。写真下部はイソギンチャクの褐虫藻の共生した細胞。一見内側全てに細胞が存在するように見えるが、中空の構造をしている。)

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