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  • アメリカLIGOグループの観測結果に関する記者会見を受けた佐藤機構長コメント

2016年2月11日のアメリカ東部時間の午前10時30分(日本時間12日午前0時30分)に、LIGOグループとVIRGOグループが行った重力波の観測結果についての記者会見を受けた佐藤自然科学研究機構長のコメントを以下に掲載いたします。


この度、LIGO-Virgoが物理学や天文学において長年の課題であった重力波の観測に成功したと発表がありました。このような大発見をされたLIGO-Virgoに敬意を表すると共に心からお祝い申しあげます。一般相対性理論成立から100年の年にこの理論から予言されている重力波が直接観測されたことは実に素晴らしいことです。アインシュタインにより「一般座標変換に対する共変性」、「重力と加速度との等価原理」などの原理から、理論的に論理を詰めることによって導かれた一般相対性理論が、この発見によってさらに検証されたことは理論物理学の一大勝利であり、理論物理学者の一人としてたいへん喜びにたえません。

今回の信号の解析により連星ブラックホールの合体によって生じた重力波であることが明らかになったこと、さらに連星のそれぞれの質量や合体して作られたブラックホールの質量まで推定することができたことは、まさにこの発見によって、重力波で宇宙を観測する重力波天文学が創始されたということができます。 しかし、LIGOの2装置だけでは重力波放出天体の正確な位置はわからないため、天文学的観測のためには建設中の日本のKAGRAやヨーロッパのVIRGOなどが加わった重力波国際観測ネットワークが稼働することが不可欠です。この三地点観測により精度の高い到来方向の情報が得られるならば、重力波放出天体の同定も可能となります。このネットワークと、ハワイ・マウナケア山頂の光学赤外線望遠鏡すばる、日米欧で建設し、南米チリ・アタカマ砂漠で運用している電波望遠鏡ALMA、さらには近く打ち上げられる日本のX線天文観測衛星、アストロH、さらに加えて日本も参加して建設が進んでいる大規模なガンマ線望遠鏡群CTAなどとの連係により重力波天文学は飛躍的に進むと期待されます。 さらに、日本はこのような電磁波による望遠鏡に加えてニュートリノも検出できるスーパーカミオカンデを有しており、KAGRAが完成すれば日本は大きく重力波天文学に寄与することができるでしょう。そして、今回のLIGO-Virgoによる重力波の直接観測はKAGRAの早期完成を後押しするものです。

重力波天文学の最大の課題はビッグバン宇宙時に放出された原始重力波を捕らえ宇宙誕生の様子を描き出すことです。ビッグバン宇宙の誕生の理論、インフレーション理論はLIGO、VIRGOやKAGRAでは検出困難な、より波長の長い重力波が現在の宇宙に満ちていると予言しています。近年、この原始重力波の痕跡を宇宙マイクロ波背景放射の中に見つけようという観測計画が日本を含む世界の研究者によって進められています。そのなかでも有力なものは日本の人工衛星観測計画、LiteBIRDでしょう。もし早急に予算処置がされ世界に先駆けこの衛星を打ち上げることができれば、原始重力波の観測は日本が最初に成功できるでしょう。さらにこの原始重力波を直接観測しようとする人工衛星も計画されています。2015年12月、ヨーロッパ宇宙研究機関、ESAは人工衛星「LISAパスファインダー」を打ちあげ、その準備を始めています。日本でも同じような重力波観測衛星、DECIGO計画も提案されています。原始重力波の直接観測には長い年月がかかるでしょうが、今世紀末までには必ず実現し、宇宙誕生の現場を重力波で描き出すでしょう。

この度の歴史上はじめての重力波観測から始まった、重力波天文学の今後の進展に期待しております。


平成28年2月12日
自然科学研究機構長 佐藤 勝彦