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チンパンジー親子トリオ(父親-母親-息子)の全ゲノム配列を高精度で解明

更新日:2018年6月13日更新

News   2017年11月2日

2017年11月2日
プレスリリース[PDFファイル/284KB]

 自然科学研究機構 新分野創成センターの郷康広 特任准教授(自然科学研究機構 生理学研究所併任)は、今回、京都大学 高等研究院の松沢哲郎 副院長・特別教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の藤山秋佐夫 特任教授、学習院大学 理学部の阿形清和 教授(元 京都大学 理学研究科)らとともに、京都大学霊長類研究所のチンパンジー親子3個体(父:アキラ、母:アイ、息子:アユム)の全ゲノム配列(遺伝情報の配列)を高精度で決定(解明)し、父親・母親それぞれのゲノムが子どもに受け継がれる際に起きるゲノムの変化を明らかにしました。今回の研究では、霊長類研究所において長期にわたる比較認知科学研究(通称「アイ・プロジェクト」)の中心となっているチンパンジーを研究の対象としました。
 チンパンジーは、進化的に私たちの最も近縁であり、99%のゲノム情報を私たちと共有している「進化の隣人」です。しかし、残りの1%のゲノムの違いに、「ヒトをヒトに」「チンパンジーをチンパンジーに」した原因があると考えられています。本研究では、そのチンパンジーを対象として、進化の駆動力である新規突然変異が、親から子どもへとゲノムが伝わる過程でどのように生じているか、その詳細を明らかにしました。
 全ゲノム配列を高精度に明らかにするために、チンパンジーゲノム(約30億塩基対)の約150倍にあたる4500~5700億塩基対(新聞朝刊の約7000~8000年分の文字数に相当)の配列の決定を3個体すべてに対して行い、1世代における新規突然変異率の推定やそのパターンを解析しました。
 本研究で得られたデータ量は、これまでのヒトを含めた個人ゲノム研究として前例のない大規模データになります。それらの大規模データの解析を行った結果、チンパンジーの生殖細胞系列では、1世代に生じる新規一塩基突然変異は1億塩基対あたり平均1.48個生じていました。この値はヒトで報告されている値(0.96~1.2)より高い結果でした。また父親(精子)由来が75%でした。さらに、高精度な配列を得たことにより、1世代で生じるゲノム構造変化(新規遺伝子交換や新規コピー数変異)の動態も高精度に明らかにすることができました。これらのゲノム構造変化は、ヒトゲノム研究においても、その詳細がいまだ充分に明らかにされていないため、今回の研究で開発した方法や得られた結果は、ヒトゲノムの構造変化を含めたよりダイナミックなゲノム変化を解析するための方法論も提示することができました。
 本研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版 に掲載されました。
 あわせて行われた記者会見で、本機構 新分野創成センターの郷康広 特任准教授は「たくさんの行動・心理データを持つ、個性豊かなチンパンジー親子3個体のゲノムが、どのような分子基盤をもって個性として表れているのか、探って行きたい。今回の研究結果で、基礎となるデータを得たことにより、ゲノムの違いが実際にはどのような機能として発現していくか、今後の研究につなげたい」と記者からの質疑応答にコメントしました。

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