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アストロフュージョンプラズマ物理研究部門概要

更新日:2022年9月19日更新

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研究部門の概要   

 我々の知っている宇宙全体の物質の99%以上はプラズマ状態にあると言われるほど、プラズマ物理学の世界は、宇宙の数多くの物理現象にとって根本的な原理を与えます。また人類究極のエネルギー源と期待される核融合発電にとっても、プラズマ物理の理解は研究の原動力となっています。


 自然科学研究機構の二つの研究所、核融合科学研究所と国立天文台は、このようなプラズマ物理学の中核的な研究施設であり、またそれぞれが世界的な研究ネットワークを築きあげて国際的研究活動を推進してきました。これらの研究所でこれまで研究されてきたプラズマ物理学を、分野融合した国際的研究分野として発展させることを目的として、アストロフュージョンプラズマ物理学研究部門(IRCC-AFP)が発足しました。


核融合プラズマ研究と天体プラズマ研究を総合化した融合プラズマ物理学は、欧米の研究環境においても新しい動きとなっていて、ドイツのマックスプランク協会は、マックスプランクの国際研究活動部門であるマックスプランクセンターの一つとして、米国のプリンストン大学と共同してフラズマ物理学研究センターを設立しています。IRCC-AFPは、この米独間の国際共同研究の動きとも連動して、日米欧の三極の国際連携研究活動として、融合プラズマ物理学の発展に寄与していきます。


 IRCC-AFPの主要な研究活動の担い手として、プリンストン大学及びマックスプランク協会と協力して、IRCC-AFP専任の国際博士研究員を国際公募によって採用し、米国あるいはドイツに長期派遣することにより、実質的な国際連携研究を進めています。また国内の大学で国際連携研究を積極的に推進している研究者とも連携して、全国的な融合プラズマ物理学の国際連携研究ネットワークを構築することも、IRCC-AFPの重要な活動の一つです。

 

研究活動

(1) マックスプランク・プラズマ物理研究所との連携による国際共同研究

 国際特任研究員(Ph.D.):Fabien Widmer

 研究指導者1:町田真美准教授(国立天文台)

 研究指導者2:Dr. Emanuele Poli(マックスプランク・プラズマ物理研究所)

 主な研究場所:マックスプランク・プラズマ物理研究所(ドイツ・ガルヒン市)

Fabien Widmer

 天体プラズマと核融合プラズマの双方において、プラズマの乱流現象、磁気再結合過程、また磁気島のダイナミクスの間には、重要な相互作用のあることが知られています。ミクロスコピックな乱流過程と、磁気島のような大きなスケールの構造形成の間では、非線形な相互作用やエネルギーのやりとりが発生するからです。我々の共同研究では、位相空間の5次元の変数の動きを直接追跡することが可能なGyrokineticシミュレーションコードを用いて、これらの物理現象において特に重要な研究課題と考えられている、1) 磁気再結合過程を引き起こす乱流のダイナミクスの解析、2) 磁気島と乱流現象との間の相互作用について、理論・シミュレーション研究を行います。さらに詳しい説明 [PDFファイル/36KB]

 

(2) プリンストン大学天体物理学科との連携による国際共同研究

 国際特任研究員(Ph.D.):Arno Vanthieghem

 研究指導者1:藤堂 泰教授(核融合科学研究所)

 研究指導者2:Prof. Anatoly Spitkovsky (プリンストン大学天体物理学科)

 主な研究場所:プリンストン大学天体物理学科

Arno Vanthieghem

超新星残骸などの高エネルギー天体で観測される非熱的放射は、無衝突衝撃波が熱的プラズマから非熱的な宇宙線粒子を生成する非常に効率的なチャンネルであることを示唆している。宇宙線の大部分はイオンが担っているが、加速された相対論的電子宇宙線は、自己生成する磁場によってシンクロトロン放射するため、加速サイトの同定や加速機構の推定に繋がる。加速粒子の存在は、プラズマの不安定性を誘起し更なる加速を導くため、マルチスケールで複雑な粒子加速機構を解明する事が非常に重要である。我々は、このような高度に非線形でマルチスケールの問題に対して、運動論的シミュレーション技法と解析的なモデリングによって取り組むことにより、様々なベータ値とプラズマの流れに対して、衝撃波の構造と粒子加速機構について明らかにする。さらに詳しい説明 [PDFファイル/50KB]

 

(3)プリンストン大学天体物理学科との共同雇用による国際共同研究

 共同雇用者 : プリンストン大学天体物理学科研究員 Samuel Totorica

 共同研究者1: 町田真美准教授(国立天文台)

 共同研究者2: Amitava Bhattacharjee(プリンストン大学天体物理学科)

Samuel Totorica

細く収束した超音速のプラズマ流である宇宙ジェットは、原始星やX線連星などのpcスケールのジェットから、100kpc以上に伝搬する活動銀河核ジェットなど、宇宙の中の様々な階層で観測されている。ブラックホールの莫大な重力エネルギーは宇宙ジェットを介して星間空間に解放され、その伝搬距離はSchwarzshild半径の108倍にも達する。宇宙ジェットは、高エネルギー宇宙線の加速起源の有力候補であり、X線連星系では1015から1017eV、活動銀河核ジェットは1018eV以上のエネルギーの加速粒子を生成できると考えられている。粒子加速サイトは、超音速のジェットビーム内で生じる様々な衝撃波による衝撃波加速が主な機構と考えられているが、プラズマ流は磁場を伴うため、磁気リコネクションによる加速も重要となるであろう。我々は、運動論的PICシミュレーションを用いて、これらの現象における粒子加速と放射場のメカニズムを解析し、宇宙ジェットの解析に広く用いられているMHDモデルの改善を目指す。さらに詳しい説明 [PDFファイル/59KB]

 

(4) 日米独の国際連携関係

三極構造

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