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プラズマバイオコンソーシアム第2回ワークショップ開催しました

更新日:2019年9月20日更新

2019年8月23日 プラズマバイオコンソーシアムワークショップ(@九州大学馬出キャンパス)を開催

 プラズマバイオロジーの裾野の拡大および生命科学研究者とプラズマ科学研究者の相互理解を深める目的で、九州大学馬出キャンパスで、「プラズマバイオコンソーシアム」のワークショップを開催しました。

 今回のワークショップでは、プラズマバイオ研究の第一線で活躍されている先生方のほか、世界の脂質バイオロジーを牽引する有田誠先生、植物ホルモン研究の第一人者である榊原均先生にお越しいただき、講師およびコンソーシアム構成機関以外の所属の研究者を含め総勢35名の参加を得て、これまでのプラズマバイオ分野の研究概要や生命科学の最新の知見を交えたご講演と活発な意見交換が行なわれました。

田中先生伊藤先生古閑先生

 名古屋大学低温プラズマ科学研究センター・田中宏昌准教授には、殺菌・滅菌効果や創傷治癒、抗腫瘍効果など、これまで見いだされている低温大気圧プラズマ照射による多彩な治療効果についてご説明いただいた後、このような治療効果の分子機構の全容を解明するための指針として、分子レベルから個体レベルまで、様々な階層で検討することを提案されました。

 名城大学理工学部プラズマ科学研究センター・伊藤昌文教授には、プラズマ照射の農学分野への応用技術の開発について、古くから知られている殺菌効果に加え、農作物の殺菌と成長促進作用との両立や、バイオマス利用の効率化などの有益な効果が見いだされつつあることを紹介いただきました。

 九州大学システム情報科学研究院/自然科学研究機構新分野創成センター・古閑一憲教授には、大気圧低温プラズマ照射による実験結果の再現性に影響を与えうる要因について、各論的に紹介いただきました。また、活性酸素種や活性窒素種といったプラズマ照射による代表的な生成物の組成表を作成するなど、プラズマ発生装置の標準化に向けた指針作成に向けた取り組みを紹介いただきました。

有田先生榊原先生

 慶應義塾大学薬学部退社生理化学講座/理化学研究所生命医科学研究センター・有田誠教授には、脂質研究の最先端を紹介いただきながら、プラズマ照射による現象と脂質の関与の可能性や、その分子機構の解明の手段として「ノンターゲット解析」による様々な脂質代謝物を網羅的に探索できる手法などの適用可能性などについても議論いただきました。

 名古屋大学大学院生命農学研究科・榊原均教授には、植物ホルモンであるサイトカイニンの成長制御に果たす役割について講演いただきました。また、プラズマ照射による植物の生長促進作用について、ご自身の研究と関連付けて議論いただき、この現象の機構解明においては植物ホルモンへの影響を調べることの重要性を示唆いただきました。

 

 今回のワークショップでは、特にプラズマ照射効果の再現性について多くの意見がありました。このことは、コンソーシアム内外での共同研究がいよいよ活発になり、生命科学研究者のプラズマバイオ分野への参入が増え、分野の裾野の拡大が進んできていること、さらにはプラズマの扱いの難しさも示しているのだと思われます。プラズマバイオ研究において、実験結果の再現性に影響を与えうる要因は多岐にわたり、いかにしてプラズマ照射の持つ生物学的な効果を定量的に評価し、その手法を公正に標準化していくかについては、今後も議論の焦点となると思われます。また、その標準化には、今回有田先生と榊原先生に講演いただいたような、最先端の生命科学の研究内容や技術が寄与すると思われます。今後も、ワークショップを開催し、最先端の生命科学の研究を学ぶ機会を設け、プラズマ科学研究者と生命科学研究者の自由な討論の場を通じてプラズマバイオ分野が学問としてまずます発展することに寄与してまいります。


●当日のプログラム及び講演要旨集はこちらからプログラム要旨集 [PDFファイル/143KB]

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