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イベント情報

自然科学研究機構シンポジウム

第10回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第10回自然科学研究機構シンポジウム
「多彩な地球の生命―宇宙に仲間はいるのか」(2010年10月10日開催)
講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者の先生方からの回答です。


質問と回答


Q1:植物の免疫と動物の免疫の相違点について教えてください。
A1:動物は免疫細胞という特殊な細胞が個体全体の免疫を担っています.一方,植物にも侵入者に対する防御機構はありますが,動物の免疫細胞に相当するものはなく,個々の細胞それぞれが,動物の免疫細胞とは全く異なる(サリチル酸を誘導するなど)防御機構を発動させるところが違います.(回答者:皆川先生)


Q2:酸素発生型光合成はある程度必然か、全くの偶然かどちらとお考えですか?つまり、O2の存在はバイオマーカーとして有力な物質と考えられるのでしょうか?
A2:酸素発生型(つまり水利用型)の光合成は,地球のような水に恵まれた環境では,光のエネルギーを使って無尽蔵に電子を取り出せるという意味で,エネルギー的に圧倒的に有利です.O2の存在は,地球のような水惑星におけるバイオマーカーとしては有力だと思います.もっとも,水惑星以外の惑星には通用しないので,そういう意味では普遍的なバイオマーカーとは言えないかもしれません.(回答者:皆川先生)


Q3:過剰な光を消去するしくみがあることは分かりましたが、光呼吸やCAM、C4植物のようにして過剰な光を利用する植物の仕組みはどうなっているのですか?
A3:光呼吸は,過剰な光によって生産される過剰な還元力の"ガス抜き"機構として捉えるのが一般的で,過剰な光を利用する機構としては捉えられていません.一方,過剰な光も利用しようと,CAM植物やC4植物が進化しました.ここでは,光が過剰(光エネルギーの吸収量に固定すべきCO2の吸収量が追いつかない状態)にあり,通常はそのエネルギーを捨ててしまう状況であっても,ある程度は余分にCO2が確保され,固定されます.(回答者:皆川先生)


Q4:
・アンテナの再編について、波長依存性はありますか?
・PS1とPS2で波長依存性は?
A4:ステート遷移では,PSI(クロロフィルaを多く含むため青色,近赤外光を多く吸収する)とPSII(クロロフィルbを多く含むため青緑色,赤色光を多く吸収する)の励起波長特性に依存して,2つの光化学系の励起バランスが取れるようにアンテナを再編成します.(回答者:皆川先生)


Q5:光科学系1・2のアンテナの「面接」が環境(光の波長など)によって変化するのは面白かったが、そのメカニズムについていまいち深い理解は得られなかった。その詳細を改めて説明して頂けるとありがたい。
A5:簡単に解説するならば,光化学系IIが励起しすぎる状況では,光化学系II用の光のアンテナであるLHCIIを光化学系IIからはずして光化学系IIの励起レベルを抑えます.また同時に,はずしたLHCIIを今度は光化学系Iに接続して光化学系Iの励起レベルを上げます(逆も起こります).最新の研究によるより詳細なメカニズムはMINAGAWA labをご参照ください.(回答者:皆川先生)


Q6:35億年前に分裂して1型、2型が再び一緒になったのは、どのようなメカニズムがあったのでしょうか?
A6:メカニズムは(もちろん)わかっていません.ただ,一緒になった生物が地球上に栄えた理由は以下のように考えられています.ある時,たまたま1型,2型両方の光化学系を共存させた生物が現れ,その生物は2つの光化学系のダブルポンプアクションにより水から電子を引きぬくことができた.無尽蔵に還元力を得られることが,地球上での生存競争に有利だった.(回答者:皆川先生)


Q7:
・アンテナタンパクの移動も、分子モーターや細胞骨格などによるのでしょうか?
・アンテナタンパクの移動の判断(スイッチ)は何(どのタンパク)が行っていると考えられているのでしょうか?
A7:アンテナタンパク質の移動は,細胞骨格系などとは関係なく,ゆらぎ・熱平衡によるものだと考えられていますが,詳細はまだわかっていません.移動の判断は,2つの光化学系の間に存在するシトクロムbf複合体という分子が細胞膜内の酸化還元状態を認識することによって行われます(リン酸化酵素のカスケードが活性化され,LHCIIがリン酸化され,LHCIIが移動する).(回答者:皆川先生)


Q8:PS2のアンテナタンパク質がPS1複合体のまわりに移動するというお話だったかと理解したのですが、その移動のメカニズムあるいはそのエネルギー源についてはどのようにお考えでしょうか?
A8:移動のメカニズムについては,三つ前の回答をご覧ください.移動のエネルギーに関しては一つ前の回答の前半をご覧ください.(回答者:皆川先生)


Q9:グリーゼ581系のような赤色わい星でも光合成は可能でしょうか?太陽光の波長が赤外よりのようですが・・・
A9:地球上であっても赤外光を利用するタイプの光化学系を持つ光合成細菌,シアノバクテリアなどが存在します.赤色わい星と言っても,ある程度の可視光や近赤外光は放射されているでしょうし,これを利用して適当な惑星上で光合成を行うことは可能であろうと思います.(回答者:皆川先生)


Q10:アンテナが離合集散する分子レベルでの仕組み(水素結合などの結合状態の変化?)は分かっているのでしょうか?電気泳動、イオンの存在下、光の波長の変化など条件を変えた場合には、どうなるのでしょうか?
A10:厳密にはわかっていません.これから明らかにしていかなければならない課題です.(回答者:皆川先生)


Q11:地球温暖化との関係で、CO2排出削減に直接貢献できる効率と規模での光合成および人工光合成の技術が21世紀中に確立できると考えていらっしゃいますか?
A11:CO2排出削減に直接貢献できるか否かは,システム全体をパッケージとして考えた場合のコストの問題(輸送過程におけるCO2排出等)がボトルネックになると考えます.光を使ったCO2削減という意味では,現時点では,太陽電池の性能向上による化石燃料型発電所の代替がもっとも現実的な解だと思いますが,21世紀中という長い時間をいただくならば,人工光合成もある程度は現実的なものになってもおかしくないと私は考えます.(回答者:皆川先生)


Q12:自己複製するRNAあるいは合成RNAポリメラーゼ研究の現状は?そう呼べるほどのものが作られていますか?
A12:現在人工進化で創られたRNAポリメラーゼの機能をもったリボザイムは、これまで20塩基くらいまでならばRNAを伸長できる事ができています。ただ、それ以上は無理で、タンパク質酵素のように、鋳型になるRNA上を動く事がうまくできないようです。そこが、現在の限界でしょうか。(回答者:菅先生)


 

Q13:1)細胞膜の形成についてはDSCの研究などから、リン脂質分子の疎水性、親水性から説明できませんか?
2)分子構造のインフォメーションやビヘイビアについてはDSCと生化学の両刀使いでかなり解明できませんか?
A13:細胞膜自体の形成はおっしゃる通り、既に説明できています。細胞膜の要素であるリン酸脂質単体となる合成経路が、タンパク質酵素誕生以前にどうやって創られていたかがわかりません。(回答者:菅先生)


Q14:RNAが『鶏と卵』の両方になれるより原初的物質であるという仮説は非常に興味深いが、塩基配列が最初からATGCしかなかったのか?またそれはなぜか?
A14:その問題はまだ解決できていません。が、実はATCGおよびもう一つ天然にあるイノシン(I)以外の塩基を人工的に合成すると、安定性がかなり低いことが知られています。つまり、安定性の面では、ATCG(I)がかなり優れているので、それが生き残ったという解釈も可能でしょう。(回答者:菅先生)


Q15:抗体に変わるタンパク質の検出法についてお話下さいましたが、詳細を聞き逃しました。その原理をお教え頂きたいです。
A15:これは付け足し的に話しました。またいつか別の機会に、私の現在の研究の講演をお聴き頂ければわかると思います。この紙面上では複雑過ぎて、書ききれません。ごめんなさい。(回答者:菅先生)


Q16:講演最後のご研究部分の説明が早くて、内容を追いきれませんでした。話の筋道の補足説明を願いします。
A16:これは付け足し的に話しました。またいつか別の機会に、私の現在の研究の講演をお聴き頂ければわかると思います。この紙面上では複雑過ぎて、書ききれません。ごめんなさい。(回答者:菅先生)


Q17:時間をかければDNAシステムが自然にできるとはなかなか思えないのですが、根拠はあるのですか?宇宙からDNAシステムが流れてきた場合は、宇宙の中には多数の生命体が存在すると思う。
A17:生命の誕生は自然にできるとはなかなか思えません。いくつかの中間的な段階を経て誕生したのではないかと考えられています。DNAシステムの前にRNAシステムが有ったと推定できる理由はいくつかあります。宇宙での生命体の存在はもう一つの非常に重要な研究課題です。(回答者:山岸先生)


Q18:RNAワールドから発展した知的生命体としての人間が、全宇宙の発生や展開の理論・論理を解明できると考えますか?宇宙より生れ出たと確実視される人間が、その発生源の全宇宙を解明できると考えることは、パラドックスと言えませんか?
A18:個々の原子がいつどこにあるかがわからないという意味でならば、われわれは宇宙を決して理解できないということになります。ただし、我々が物事を理解しようとする時、しばしば法則という形で理解します。100万原子の動きもいくつかの法則で理解可能です。(回答者:山岸先生)


Q19:
1)シアノバクテリアの出現から大気中の酸素増加の7億年間に、なぜ酸素が存在しないのでしょうか?
2)リボザイムRNAの構造は一様に決まるのでしょうか?温度で構造が変化しそうな気がします。
A19:
1)酸素が発生しても、海中の還元型鉄イオンの酸化に酸素が使われて、最初は空気中の酸素濃度が上昇しなかったと推定されています。
2)大変多くの種類のリボザイムがおそらく誕生したとおもいます。現在の生物細胞の中にも、多くの種類のリボザイムが残っています。(回答者:山岸先生)


Q20:なぜ高等生物のタンパク質は進化の過程で耐熱性を失ったのでしょうか?同じ活性を有するなら、耐熱性が残っていた方が生存競争に有利な様に感じます。
A20:生育する温度で蛋白質が安定であれば良いので、耐熱性を失っても低温では生存に不利にはなりません。多くの変異は耐熱性を下げる方向に働くので、耐熱性は徐々に低下したと推定しています。(回答者:山岸先生)


Q21:過去の古細菌が、進化につれて好熱型から熱に弱くなっていったのにはどのような要因があるのでしょう?
A21:生育する温度で蛋白質が安定であれば良いので、耐熱性を失っても生存に不利にはなりません。多くの変異は耐熱性を下げる方向に働くので、耐熱性は徐々に低下したと推定しています。(回答者:山岸先生)


Q22:プロティノイドによる細胞構造が限定的との事ですが、RNAワールドを経て好熱菌のコモノートに至るには耐熱性の高い細胞膜に進化する道筋というのはみえているのではないかと期待しますが、いかがでしょうか?
A22:この段階は証拠が無く、確定的なことは言えませんが、RNAワールドからDNA生物が誕生し、プロティノイドから脂質膜に変わりました。その後、様々な温度に適応した生物が誕生し、その中から高温に適応した生物(コモノート)が生き残ったと考えています。(回答者:山岸先生)


Q23:生物が誕生したとき、複数種いたものがコモノート1種に淘汰されたのか、もともと1種しかいなかったのか、お教え下さい。また、複数種いた場合、コモノートが生き残った理由について知りたいです。
A23:複数種いたものがコモノート一種に淘汰されたと考えています。その理由は隕石の衝突で温度が高温になって、一種を残して絶滅したのではないかと考えています。ただし、コモノートが一種かどうか、本当に絶滅が起こったのかについてまだ多くの議論が続いています。(回答者:山岸先生)


Q24:プロティノイドミクロスフェアからリポソームへの変換は、どのように進行したとお考えですか?
A24:プロティノイドの中でRNAの遺伝子が誕生し、遺伝子からリボザイムによって蛋白質が合成される様になってから、蛋白質によって脂質合成系が誕生したのではないかと思っています。(回答者:山岸先生)


Q25:祖先の遺伝子推定について
核DNAとミトコンドリアDNAの推定、どちらが優先的に行われていますか?(以前ミトコンドリアイヴの話が出て、雄の祖先はどうなったんだろうと思いました。)
A25:ミトコンドリアの誕生は、今から20億年前ころです。全生物の共通の祖先はその遙か前、今から40億年前の事で、ミトコンドリアのDNAの情報を祖先遺伝子の推定に使うことはできません。原核生物(細菌と古細菌)のDNAの情報を使います。(回答者:山岸先生)


Q26:ミトコンドリアは20億年前、ブフネラは2億年前から共生しているというお話でしたが、それはどのようにして分かるのでしょうか?
A26:分子系統学解析と化石情報から計算されています。宿主昆虫のアブラムシは世界中に4000種以上いますが、それらのアブラムシはごくわずかな例外を除いてすべてブフネラを持っています。より正確に言うと、アブラムシの系統関係とブフネラの系統関係が一致します。これは、アブラムシとブフネラの共生開始の起源は一度で、そのあと共進化してきたことを意味しています。化石証拠から地球にアブラムシが登場した年代がわかるので、これらの情報から共生の起源の時期を推定できます。今年国際生物学賞を受賞されたNancy Moran博士らが明らかにしました(Moran et al 2003 Proc Royal Soc London Series B)。(回答者:重信先生)


Q27:ブフネラとの共生の起源は寄生と考えてよろしいですか?葉緑体は捕食されたものが生き延びたと考えられますが、ではミトコンドリアの共生の起源は何でしょうか?ミトコンドリアとなった好気性細菌のペプチドグリカンはどうなったのでしょうか?逆に、ミトコンドリアを取り込んだ原始真核細胞にペプチドグリカンはなかったのでしょうか?
A27:
ブフネラ:系統的にブフネラは腸内細菌と近縁なので、腸内細菌のような細胞外共生が出発であったと考えられます。それがどのようにして細胞内にとりこまれたかはよくわかりませんが、食作用による呑み込んだ食べ残し、と考える研究者もいます。
ミトコンドリア:ミトコンドリアの起源はアルファプロテオバクテリアと考えられています。アルファプロテオバクテリアは、リケッチアのような感染性を示すことが多いので、ミトコンドリアの祖先バクテリアもそのように感染したのかもしれませんし、上記ブフネラの項に述べたような過程かもしれません。進化の過程で細胞壁は大幅に退縮したと考えられています。(回答者:重信先生)


Q28:未解決の問題として『システム統合』と書かれていましたが、もう少し分かりやすく説明をして頂きたい。理研横浜研究所の免疫学の先生の講演で、生命(人間)の免疫システムの巧妙さを知りましたが、もしかしてこの免疫システムと関係のあるお話でしょうか?
A28:鋭いご指摘です。共生微生物と宿主の免疫系の関係はとても重要で、いろんな共生システムを対象に研究が進められています。(回答者:重信先生)


Q29:他者であるミトコンドリアを取り込んだ生物は、自分の遺伝子の中にどのように反映できたのでしょうか?
A29:ミトコンドリアの遺伝子の多くは宿主の核ゲノムに移行しています。(回答者:重信先生)


Q30:ミトコンドリアと同様に細胞内に細菌を取り込む例はいくつもあるとのお話でした。ブフネラの共生と人間の白血球、腸内細菌とはどのように異なるのか、もう少し説明を頂きたい。
A30:腸内細菌は細胞外に存在します。(回答者:重信先生)


Q31:アブラムシの共生細菌の生育適温はどうなっていますか?地球温暖化の影響はどうですか?この共生細菌の培養はできますか?
A31:宿主昆虫の生育適温が、共生細菌の生育適温です。生育可能な温度の範囲は狭く、37度くらいの高温にすると死んでしまいます。また、この共生細菌はアブラムシの共生器官細胞の外では増殖することができません。したがって、培養はできません。海外では、地球温暖化の影響をアブラムシを利用して研究している研究者がいるようです。(回答者:重信先生)


Q32:真核生物は、他の膜に囲まれたバクテリアが入ってきたので自身のDNAを囲むことによって誕生したというシナリオは考えられますか?つまり共生がそのきっかけとなったというように・・・。
A32:核膜の起源の問題と関わってきますね。鋭いご質問です。ミトコンドリアの好気呼吸によって発生する活性酸素がDNAにダメージをあたえるので、それから守るのに核膜が役に立っているのは事実です。(回答者:重信先生)


Q33:
1)ブフネラが合成能をもつ必須アミノ酸の原料はどこからくるのか?
2)ブフネラは『アブラムシの世界』の外から何かを得ているのか?
A33:
1)ブフネラが合成能をもつ必須アミノ酸の原料の多くはアブラムシ由来です。この共生の緊密さがわかりますね。
2)たとえば、アブラムシの餌は植物の師管液ですが、それらに含まれる栄養分はアブラムシを通してブフネラも利用していると考えられます。
(回答者:重信先生)


Q34:ミトコンドリア内のシトクロム系酵素タンパクのDNAはミトコンドリアと核内両方に共存している。これは、ミトコンドリア内で発生するフリーラジカルの影響を避けるためと考えられているようですが...、ではなぜ全てのDNAを核内に移転させなかったのでしょうか?
A34:核DNAにコードされている遺伝子は翻訳後ミトコンドリアへ輸送されなければいけません。しかし、タンパク質の性質によっては輸送にエラーが生じやすいものがあることが実験的にわかっています。そのようなタンパク質はミトコンドリアゲノムにコードされています。(回答者:重信先生)


Q35:アブラムシとブフネラのゲノムレベルで美しい相補性があるということが分かりましたが、遺伝子が相手に依存できれば必要ないという発想がとても興味深く感じました。ゲノムに不要な遺伝子をコードすることによって、何かしらの不利益を被るという例があれば教えて頂きたいと思います。
A35:Use it, or lose itの原則が進化のいたるところで観察されますが、ゲノム進化も同様です。不要な遺伝子断片は失われる傾向にあります。その理由についてはいくつかの説があります。不要な遺伝子を維持することはリソースの無駄遣いであることが指摘されています。(回答者:重信先生)


Q36:ミトコンドリア、アルファプロテオバクテリアが寄生する以前の生物は今日では全く存在しないのでしょうか?存在するとすれば、それはどのような生物なのでしょうか?
A36:鋭い質問です。ミトコンドリアが存在しない生物を世界中の生物学者が探しています。ギアルディアなどいくつか知られており、以前はミトコンドリアが寄生する前の始源真核生物だと考えられたこともありましたが、ゲノム情報などより、現在では二次的に失われた結果であることがわかっています。今のところそのような生物はまだ見つかっていません。(回答者:重信先生)


Q37:ブフネラに関しては、小胞内ではなく細胞質に露出している?
A26:細胞質に露出しているのではなく、宿主由来の膜にひとつづつパッケージングされています。(回答者:重信先生)


Q38:D型アミノ酸でつくられたタンパク質は地球には存在するのですか?
A38:タンパク質の中にD-アミノ酸が入っている例は多くみられます。例えば、目のレンズをつくるタンパク質中には多くのD-アミノ酸が含まれますが、これらは、L-アミン酸が徐々に変化してできたものです。すべてD-アミノ酸からできたタンパク質は見つかっていません。もちろん、実験室でD-アミノ酸をつないで、タンパク質を合成することは可能です。(回答者:小林先生)


Q39:暗黒星雲のような低温で、アミノ酸合成などの化学反応は起きるのでしょうか?化学反応は、高温高圧の場所(原始地球のマグマオーシャン)のような場所で起こるのではないでしょうか?
A39:一般には、温度が低いと反応は起きにくく、特に、固相での反応は限られます。しかし、宇宙線のような高エネルギーの放射線が氷に入ることにより、その通路が一時的に高エネルギー(高温)状態になるため、様々な反応が起きると考えられます。高温環境では、反応が起きやすいのですが、できたものがこわれるのも早いため、マグマオーシャンのような場所では有機物は安定に存在できません。海底熱水系では、高温に加熱された後、ふつうの海水により冷却されるため、合成された有機物がこわれずに残ります。(回答者:小林先生)


Q40:

  • 星の円偏光にによるL-Dーアミノ酸の選別は、どの星でもL-D-どちらか一方に偏っているものなのですか?
  • 陽子線照射に円偏光を照射することを組み合わせるとどうなりますか?

A40:国立天文台が今年発見した銀河の中の円偏光領域が原因とすると、地球上や太陽系の他の天体上や、太陽系の周辺の他の惑星系でもL-アミノ酸を使っていることになりますが、少し離れたところで、D-アミノ酸を使う生物がいる可能性が考えられます。陽子線照射と円偏光を組み合わせると、陽子線照射でできた有機物中のアミノ酸(前駆体)が徐々にD-かL-のアミノ酸に変わっていくことが期待できますので、そのような実験をしたいと思いますが、実際には2種類の加速器を同時に使うのは難しいですね。(回答者:小林先生)


Q41:宇宙から飛来した有機物は、地球上での生命誕生に十分な量であったと考えられるのでしょうか?だとすれば、46-40億年前に集中的に飛来したことになると思いますが、それは山岸先生のいう隕石重爆撃によるものでしょうか?それとも、現在でも日常的に飛来しているのでしょうか?
A41:宇宙からの塵は、今も少しずつ地球に降ってきており、南極の氷の中などから見つけられています。その量は、太陽系ができたてのころや、隕石重爆撃期の方が今よりはるかに多かったと推定されており、現在の地球上の生物を構成する炭素量よりもはるかに多くの炭素が隕石重爆撃期に降ってきた、との試算もあります。(回答者:小林先生)


Q42:SETI等の探査で人類以外の文明を探していますが、地球レベルの電波通信をとらえるためにも、NASAはDSNの大きなアンテナを使用しています。ALMAを使って地球の外の衛星を干渉計を構築しても分解能とか感度がまだまだ不足だと考えますが、ブレイクスルーとかありえますか?その芽は感じていますか?恐竜並みに長期に生存すればよいのでしょうか?
A42:地球外文明を検出できるとはほとんどの天文学者は考えていません。そもそも何を検出すれば「文明」の兆候なのか、誰も何も分かっていません。(回答者:大石先生)


Q43:生命誕生の加速剤(敢えてそう書かせて頂きます)である有望な星間高分子体の検出がレア(講演中の表現では高い分解能の電波望遠鏡でなければ確立できない)とのことですが、これは惑星上で生命が発生する上で有効な量の有機物の惑星上への落下自体が確立上、絶対量的に不足する条件もあり得るということを意味しているのでしょうか?
A43:地球上での生命発生の条件は何ら分かっていないと言っていいでしょう。どれだけの量の有機物が存在すれば生命になるのか、をお答えするのは極めて困難です。
確かに宇宙における既知の大型有機物の存在量は少ない(水素分子の存在量の100億分の1程度以下)ですが、惑星を形成するガス雲は元来巨大(1/10光年内外)ですので、例え存在比が極めて少なくても、集積すれば膨大な量となります。あくまでも仮説ですが、そのような膨大な量の有機物のごく一部が原始地球に到達したとすれば、そこからさらなる化学進化を起こさせればよい、ということになります。(回答者:大石先生)


Q44:星間分子など宇宙塵の凝集(重力による)で惑星ができるなら、地球内部にも有機物はたくさん存在しやすそうなのに、地球表面にしか見あたらないのはなぜでしょう?
A44:天文学者が正しい回答をできるとは思いませんが、地球深部は温度が非常に高いので、仮に有機物が深部まで沈み込んだとしても熱で解離してしまうのではないでしょうか?(回答者:大石先生)


Q45:すばるによるオリオン星雲の写真で誕生星は黒く写っていました。すばる星団の星は青白い恒星で星の寿命は短いと聞いています。星の寿命と生命発生の関係はどのようにお考えですか?星間塵起源とすると、星の寿命は必須ではないのでしょうか?
A45:地球上の生命発生は数億年程度で起きたと言われていることから考えれば、中心星が数億年より長い寿命を持っている必要があるでしょう。(回答者:大石先生)


Q46:電波でアミノ酸が見つかっていない主な理由はなんですか?有機分子の量に比べて少ないということでしょうか?どれくらいの相対存在比までなら観測にかかると考えられますか?有機分子が広い領域で見つかるのに比べて、狭い領域でしかみられないというのは、予想されていることですか?
A46:理由はいくつか考えられます。アミノ酸を含む大型分子の場合、スペクトル線が非常にたくさん存在できるために1本1本の信号強度が少なくなります。また、これまでの電波望遠鏡による空間分解能が最高で数秒程度でありアミノ酸などの分子が存在する領域に比べて大きい領域までしか分解できませんでした。このため検出効率が低かったという問題がありました。どのくらい存在すれば、という質問ですが、用いる望遠鏡の感度を考慮しないとどの程度ならということが言えません。有機分子といっても原子数が小さいものは様々な形成過程が考えられますが、大型有機分子は星間塵上でないと生成効率が低いと考えられ、星間塵に凍り付いている物質が観測されるのは、その近くで誕生した星からの紫外線によって加熱された場合なので、必然的に存在領域は狭くなります。(回答者:大石先生)


Q47:40年ほど前に岩波書店から出版された『生命の起源』(オパーリン著)を読み、その中のコアセルベートという物質に興味もった覚えがあります。そのコアセルベートという生体とは一体どんなものなのか教えて頂きたい。
A47:コアセルベート(coacervate)とは、コロイドからなる液胞の流動層と液層が入り混じった物体です。コアセルベートという用語は、1929~1930年に命名されました。このとき含まれるコロイドはほぼ球状で、数から数百マイクロメートルに達します。このコロイドは分裂・融合・周囲の物質の吸収などを起こす性質があるため、命名当時生命の起源を研究していたオパーリンが生命の起源や進化に重要な役割を果たしたと考えました。しかし現在では、無生物から細胞に至る前にはもっと多くの段階を通過してきたと考えられており、コアセルベートが直接最初の細胞となったとはもはや考えられていません。(回答者:大石先生)


Q48:かつて火星にいたと思われる生命体は、地球で存在する、または存在した生命体のどれに近いのでしょうか?
A48:火星隕石中ではバクテリアの化石と主張される構造が発見されています。おそらく、バクテリアや菌類のようなものであったと思います。 (回答者:佐々木先生)


Q49:火星は重力が小さいので、すぐ水が宇宙に飛散してしまわなかったのでしょうか?(講演では数億年間は水が存在していたようでしたが・・・)
A49:集積直後も衝突による、水の散逸があったと考えられています。激しい衝突が終わったあとは、数億年間は、火星の磁場が大気の散逸を妨げていたと考えられます。(回答者:佐々木先生)


Q50:火星において、地下は高温とのお話でしたが、これはマントル、火山活動に起因する物を想定していらっしゃるのでしょうか?
A50:火星内部のマントル・地殻物質に含まれる放射性熱源(カリウム、ウラン、トリウム)による加熱のため、内部に行くほど温度は高くなります。火星のマントルも地球と同じく対流をしていると考えられ、対流の上昇域では温度が高く、火山活動が生まれています。(回答者:佐々木先生)


Q51:恒星の1/3くらいは多重星だったと思いますが、それとハビタブルゾーンの関係は?
A51:本日の話は単独星の場合でした。多重惑星系の場合は、より複雑になりますが、単独星の場合と同様に惑星軌道の位置に応じてハビタブルゾーンを議論することができます。(回答者:田村先生)


Q52:
1)地球物質の何倍までの惑星に生命がいる可能性があるのでしょうか?
2)地球上でも極限環境で生きている生命がいるように、人間の標準ではなく、考えもつかない環境で生きる生命の可能性はないのでしょうか?例えば、水がないとか、極熱、極寒など...。
A52:

  1. 主星の重さによってハビタブルゾーンの位置は変わりますが、主星の重さにとくに制限はありません。
  2. 生命がいったん生まれてしまうと極限環境化でも長期間生存できると思います(長沼さんの話)。しかし、そのような環境で生命が誕生しうるかどうかは別問題で、一般には難しいと思われます。(回答者:田村先生)

Q53:ケプラー衛星では影でとらえるため大きさしか分からないとの事でしたが、質量はどのようにすれば調べられるのでしょうか?
A53:ドップラー法によるフォローアップ観測が通常行われます。周期的な速度変化が検出できれば、トランジット法の結果を併せて、質量が正確に求めることができます。(回答者:田村先生)


Q54:太陽系誕生から46億年後に高等生命が発生した事が典型的時間スケールと考えると、系外惑星と生命を探査(SETIなど)する際、年齢40~50億年くらいの恒星を集中的に調べてはどうでしょう?
A54:はい、高等生命の探査が目的の場合は、その方針は正しいと思います。通常の系外惑星探査のためには、我々はまずは生命の兆候を探すことに重点を置いています。観測的には、近傍であればあるほど調べやすいので、距離と年齢などでサンプルが決まってきます。(回答者:田村先生)


Q55:「好条件化では、地球上からでも数千個の天体が見える」と聞いたことがあります。その内訳は、星と銀河だと思って良いのですか?星と銀河の比率はどのくらいですか?また、1点に見えていても実は前後にある複数の天体が重なっているという事は確率的にほとんどないものですか?銀河同士の相対的な位置関係やそれぞれの位置は長期的に不変ですか?早いものでは、どのくらいの時間で位置が変わっていくのですか?
A55:どのくらい暗いものまで見るかによって、見える星と銀河の割合が変わります。明るい天体に限るとほとんどが星です。一方、イントロでお話ししたように暗い天体まで見えるとほとんどは銀河です。もちろん銀河を構成するのは星ですが、個々の星は見分けられません。全宇宙では、もちろん星の方が数が多いです。星の背景に星が重なるのは、天の川銀河の中心部では見られていますが、他の場所ではまれです。銀河同士の位置関係は不変ではありません。天の川銀河もお隣のアンドロメダ銀河と数十億年で衝突すると言われています。(回答者:田村先生)


Q56:火星の質量はおそらく変わっていないのにも関わらず、昔は存在したとされる大気が、重力が小さいからとの理由で宇宙に散ったと考えるのはなぜですか?
A56:惑星表面の水は、微惑星の衝突合体で原始惑星が成長していく過程で放出され、惑星を取りまく原始大気となったものだと考えられています。惑星重力が弱い場合は、この原始大気が次第に失われて行くのです。(回答者:田村先生)


Q57:宇宙の知的生命体からの信号が観測されない理由をどうお考えですか?ドレイクの式での文明の持続時間が極めて短いからだとは思いたくないのですが...。知的生命体は自らを滅ぼす宿命を持っているのですか?
A57:文明の持続時間は最も重要な原因の一つと考えています。また、惑星で生命が進化できる確率や生命が知的生命に進化する確率も不定性が大きいと思います。(回答者:田村先生)


Q58:水惑星と呼ばれる天体には、水の氷が大量にあるのですか?水以外の氷(CO2やメタン)などは、どれくらいの比率で存在しますか?
A58:水惑星ではなく氷惑星のことに言及されているのだと思います。氷惑星の氷は惑星質量の80%程度です。低温星間塵と組成が同じだとすると、水以外の氷の比率は、アンモニアが8%以下、メタンが2%以下、CO2は25%程度です。(回答者:田村先生)


Q59:科学技術の振興のために、予算とか税金とかそれ以外から、もっと将来の投資となるような、一般から協力できることはありますか?
A59:今の日本の(あるいは世界的)情勢では、単一目的(たとえば第2の地球を見つけるため)の専用望遠鏡の建設は難しくなっています。複数の目的を満たすようにお互いの機能を譲り合うのですが、地球型惑星の直接分光と他の天体の観測機能はなかなか相容れません。そのような中で、一般の方々で宇宙における生命に興味を持つ方々の寄与が上手く活かされ、また、次世代の研究者となる若手が多数現れれば、素晴らしいと思います。(回答者:田村先生)


Q60:気の遠くなるような長い時間と広い空間が宇宙です。人の人生が80年としても、宇宙の流れからするとそれは一瞬の出来事です。宇宙誕生の時、ただ一つの力から枝分かれしていく時間の経緯が10-44とか10-36秒後でごく短い時間に表現されます。何故、10のマイナス何乗か不思議に思えます。一年後でも同時です。同時にでもない訳があるのでしょうか?
A60:宇宙や素粒子の学問分野、特に両者の境界領域である宇宙論の分野では、時間の長さ、空間の大きさ、エネルギーの大きさなどは極微から極大までスケールが桁違いに異なります。数値は対数で考えるのが当然といえるでしょう。
秒という人間世界のスケールである単位から考えるとほとんどかわりはないように思われますが、対数で考えると大きなちがいです。(回答者:佐藤先生)


Q61:宇宙の誕生、地球の誕生、生命の誕生をはかる物差しは何ですか?詳しくお願いします。宇宙の誕生145→137億年、地球形成48→46億年、生命誕生39→38億年、少し前に知った知識と比べ、最近若干数字が小さくなったと感じますが?何か新しい事実発見があったのでしょうか?
A61:
宇宙の年齢は観測の進歩によって、昔から大きく変わってきました。20年前は100億年でも、200億年かもしれないと言われてきましたが、2003年のWMAP宇宙背景放射の観測によって137億年という数値が導かれ、今はこの数値が宇宙の年齢となっています。他の観測もこの数値と矛盾はありません。(回答者:佐藤先生)
地球の誕生は、月や隕石の年代から推定されます。月や隕石の年代測定は同位元素の組成分析によって行われます。新しいサンプルが分析されたり、組成分析精度があがるとより正確な年代が推定される様になります。
生命の誕生の時期は現在でもまだ多くの議論があるところです。議論となるのは、炭素の同位体化石を、生命の痕跡と見るかどうか、同位体化石が岩石と同時にできたかどうかという二つの点です。38.5億年前の化石に関しては、周囲の岩石ができてから大分後で生物が岩の割れ目に入った可能性があり、疑わしいという指摘があります。
従って、信頼できるのはその次に古い38億年前の炭素同位体化石であり、生命の誕生は38億年前までに起きたという事になります。(回答者:山岸先生)


Q62:「仲間」とは何か?生命とするのであれば、定義はなにか?その点が気にかかった。
A62:シンポジウムタイトルの「仲間」は地球のような生命を持つ星を意味しています。しかし、「生命」の定義は様々です。どのような「生命」なら地球以外に存在する可能性があるのか、という点について、演者とともに考えてもらうことがこのシンポジウムの目的でした。(回答者:岡田先生)


Q63:『2001年宇宙の旅』や『ソラリス』のような知的生命体の期待はできますか?
A63:知的生命体が存在する可能性は否定できないと思います。しかし、シンポジウムの席でも話題になったように、人間がそれらの知的生命体と交信・交流できる可能性はずっと小さいでしょう。(回答者:岡田先生)