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第13回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第13回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第13回自然科学研究機構シンポジウム
「日本のエネルギーは大丈夫か?
~ E=mc2 は人類を滅ぼすのか、救うのか・・・~」
(2012年9月29日開催)
講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者の先生方からの回答です。


質問と回答

※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。


Q1:太陽活動と地球の活動について興味深くお話を伺いました。磁場の局在というお話もありましたが、太陽活動周期が発生するメカニズムについて教えていただければ幸いです。
A1:太陽が磁場を作る能力は、黒点の数の増減で知ることができます。黒点の磁場は、太陽の内部で作られますが、その詳細なメカニズムはまだ分かっていません。 (回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q2:温暖化、寒冷化をもたらす影響因子において、1例として宇宙線と雲の関係をご紹介されたが、他の影響因子について、程度と種類は現在どう解釈されているのでしょうか。
A2:講演では一つの説を中心に取り上げましたが、他に2つ説があります:(1)太陽の明るさ(太陽定数)が黒点数の増減とともに変動しており、黒点が多い時期は太陽が少し明るくなります。このため、黒点の極端に少ない時期に地球が寒冷化する可能性があります。(2)太陽からの紫外線の変動は非常に大きく、黒点の多い時期は紫外線が強い。太陽からの紫外線が地球の上層大気の電離と加熱を引き起こしていることが知られており、何らかの原因で、このことが地球の気温に影響を与えている可能性もありえます。(回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q3:数年~10年位で次の黒点極小期に入る周期のようにグラフからは推定されるが、地球温暖化問題でCO2削減が重大テーマになっているが、太陽の黒点極小期に期待出来ないか、黒点の極小による地球の気温の影響の方が大きいのでは。
A3:現在のところ1960年代以降の温暖化は温室ガス効果により、太陽自身の影響は少ないと考えられています。ただし、これから太陽がマウンダー極小期のような黒点のない状況に突入すると、地球の気温を下げる方向に働くので、温室効果による気温の上昇とどちらが優勢となるかは自明ではありません。(回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q4:先日、京大の柴田先生のお話(スーパーフレア)を聴く機会もあり、あわせて非常に興味深く聞かせていただきました。主系列星の典型(言いすぎ?)では太陽も体調が変動する。-その基本メカニズムはなんなのでしょうか。変光星という恒星がありますが、活動の基本が核融合反応であるわけですから、それが活発になったり、退潮になったりするということでしょうか?また、もし太陽活動の極小期が訪れるならば、それは地球温暖化を引き伸ばすことになりえますか。その間に温暖化対策技術を確立するチャンスを太陽が人類に与えたということになるのでは?
A4:太陽の核融合反応による発熱量は~億年のスケールでゆっくり変化していますが、ここで話題としたような10年から数100年単位では極めて一定です。太陽の黒点もスーパーフレアも太陽の内部で作りだす磁場が重要な役割を果たしています。磁場の持つエネルギーは核融合反応の生み出すエネルギーに比べて非常に小さいですが、それによるわずかの変化が地球環境に影響を及ぼしています。地球温暖化との関係は質問6を参照ください。(回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q5:太陽が4重極状態となり黒点が減ることによって地球が寒冷化する以外にわかっていることはありますか?
A5:太陽の磁場の増減と地球環境の影響は経験的に分かっているだけで、そのメカニズムについてはほとんど分かっていないのが現状です。(回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q6:黒点発生時になぜNとS部位が分離していくのでしょうか?
A6:黒点は太陽の内部を東西方向に走る磁力管の一部分が表面に出てきた切り口です。最初この浮き上がってくる磁力管が表面に頭を出した状態では、ペアの黒点の距離は小さいですが、表面に出る磁力管の距離が長くなるにつれペアの黒点の距離は増えていきます。(回答者:国立天文台・常田佐久先生)


Q7:石油が天体由来である可能性について興味深くお話を伺いました。天体由来説の観点から石油が偏在することを説明することはできるのでしょうか?(例えば隕石の衝突地点と産油地域との関係とか...)
A7:太陽系の惑星は微惑星の衝突でできたと考えられています。石油の天体由来説というのは、地球を作った膨大な数の微惑星が持ち込んだ炭化水素が、酸化されずにそのまま残った(始原的)とする説であり、隕石孔が残っているような特定の隕石によって持ち込まれたと考えるわけではありません。  石油が偏在する理由については、生物起源説でも非生物起源説でも明確な証拠はないと思いますが、たとえばゴールド著「未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる」では、地殻下部に大規模な裂け目のような構造があり、それに沿って地球深部から炭化水素の流体が滲み上がってきたという考えが紹介されています。  偏在例のひとつとして、石油が堆積岩のなかに多く存在することは、石油の生物起源説の証拠のひとつですが、火成岩中にも石油が発見されることがあるようです。火成岩中に石油が存在することは、石油が地中深くから昇ってくる(upward migration)と考える場合には自然ですが、生物起源説の場合には、いったん堆積岩中にできた石油が、横方向に長距離移動(lateral migration)したと考えられているようです。(回答者:国立天文台・林正彦先生)


Q8:褐色矮星が重水素の核融合で輝き続けるのはどのぐらいの長さですか
A8:だいたい100万年です。  重水素は、普通の水素に対して1万分の1くらいの割合で宇宙に存在しています。太陽は、普通の水素の核融合反応で輝いており、その寿命は100億年と言われています。褐色矮星は、核融合を起こせる燃料(重水素)が太陽の燃料の量(普通の水素)の1万分の1しかないので、寿命も太陽の1万分の1くらいなのです。(回答者:国立天文台・林正彦先生)


Q9:地中からわき出すメタンで石油を換算すると現状の石油エネルギー消費率で換算すると、あと何年もつのでしょうか?
A9:メタンが化石燃料であるか始原的であるかにかかわらず、地中から湧き出している流量が不明ですので、明快なお答えができずに申し訳ありません。  あと何年もつかの下限としては、現在発見されているメタンハイドレートの量を、現在の天然ガス+石油の消費率で割れば良いわけですが、少なくとも100年以上にはなるのではないかと思っています。ちなみに、最近メタンハイドレートが日本近海でも盛んに発見されていますが、メタンの始原起源説から見ればこれは当然のことで、メタンハイドレートは海底のどこにでも存在するはずです。(回答者:国立天文台・林正彦先生)


Q10:私が中高生の時代、地学のTEXTでは石炭は「化石」だが、石油の成因はよくわかっていない-ということだったと記憶しております。それがいつの間にか「化石燃料」というコトバで石油もそのカテゴリー内に入ってしまったということで先生のご指摘はたいへんフレッシュな思いがしました。先生の仮説はもともと星間物質として存在したメタン他炭化水素が地球ができたとき地殻内にとじこめられたということでしょうか?
A10:その通りです。微惑星によって地球に取り込まれた星間炭化水素が、酸化されずに残ったと考えるわけです。ただし、地球初期のマグマオーシャンや、地中深くの高温の状態では、炭素は岩石(シリケート)中の酸素と結合して容易に二酸化炭素となってしまいます。そのため、始原的炭化水素が現在まで残ることは極めて困難だと考えられており、生物起源説が有力なのです。  現在でも、「石油の成因はよく分かっていない」というのが正しい言い方だと私は思います。生物起源説は有力ですが、講演で触れましたように、石油や天然ガスがヘリウムと同時に産出することを説明できないなど、問題点も多くあります。  私は、現在の我々の理解のレベルにおいては、石油が化石燃料だと教科書に書いてあること自体は大きな問題ではないと思っています。ただ、「なぜ」石油を化石燃料と考えなければならないのか、その理由を誰も説明できないことが問題だと思っています。石油が生物起源であることを実験的に証明した人はいません。石油を始原起源と考えるには上述のように問題が大きいことから、とりあえず今は化石燃料と考えるのが有力である、という言い方が適切だと思っています。(回答者:国立天文台・林正彦先生)


Q11:初期の地球でCO2にならなかったメタンが残ったというふうに考えられるのか?それは十分可能性があることなのか?
A11:始原起源説ではそのように考えますが、その可能性を疑う研究者が大半なので、生物起源説が有力と考えられているわけです。  始原起源説では、微惑星によって地球に取り込まれた星間炭化水素が、酸化されずに残ったと考えるわけですが、地球初期のマグマオーシャンや、地中深くの高温の状態では、炭素は岩石(シリケート)中の酸素と結合して容易に二酸化炭素となります。実際、二酸化炭素は火山性ガスの主成分です。  ただし、地下100km程度(温度で300度C)までは、メタンやエタンなど低炭素の炭化水素は、酸化されずに安定に存在できるようです。また、地球形成終期に衝突してきた微惑星や小惑星に含まれていた炭化水素の一部が、地表付近で酸化されずに残ることは可能かも知れません。  この観点で、火星や、土星の衛星タイタンのような岩石惑星・衛星にメタンが発見されていることは重要です。地球と同じような高温の形成過程を経たにもかかわらず、炭化水素が実在しているわけですから。火星のメタンは、生物起源説もあって興味を引いていますが、地中で蛇紋岩が水と反応してできるという説が出されています。火星のメタンは少量なので、蛇紋岩の反応でも足りるようです。火星のメタンについては、始原起源説はあまり唱えられていません。一方、タイタンにはメタンやエタンが大量にあり、その起源は謎です。始原起源が有力だと私には思えます。(回答者:国立天文台・林正彦先生)


Q12:現在の情緒的な反原発運動に危うさを感じています。大変困難な状況の中にありますが、再生エネルギーの限界、新世代の原発の安全性、今後の原子力の新技術開発、安全性、21世紀半ばの核融合等について明確に発信すべきではないでしょうか?
A12:ご指摘の通り、最新の安全性に優れた原子炉や廃棄物処理における高レベル廃棄物の低レベル化技術等を明確に発信すべきと思います。反原発の声にもみ消されぬよう、国民の耳に届くような発信の仕方を考える必要があります。本シンポジウムばかりではなく、テレビとか新聞・雑誌が良いと思いますし、専門家が意見広告の形で、専門家としての見識と判断を示すべきと思います。が、なかなか果たせません。インタネットにより正論を堂々と発信し、反原発の方々からの強く激しく批判されている方もいます。冷静で情緒的に流れない本シンポジウムのような対話は極めて貴重な場であると考えます。 (回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q13:もんじゅの設計はすぐれているという話でしたが、それにもかかわらずどうして事故が続いたのでしょうか
A13:あの事故は二次系の配管につけてあった温度計のさやから、冷却材ナトリウム(放射性物質を含まない)が漏洩し火災となった事故で、原子炉の安全性(炉停止後に炉心を冷やす機能、放射性物資を閉じ込める機能)とは基本的には関係ありません。したがって、炉心の溶融もおこらず、燃料も損傷せず、また一次系の放射性物質を含む冷却材ナトリウムも漏れませんでした。冷却材の漏えいは、開発初期時にありうる事故で、数ヶ月程度で復旧再運転できるレベルのトラブルでした。  さらに言えば、福島第一原発のような、全電源喪失事故時には、もんじゅの安全性は3重の防護されていて、炉心溶融に至ることに対して、多重に防護されていて、強固に安全性が高められています。 (回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q14:CO2削減の現実的な行動は人類の生産活動、消費活動を低活性化することと同義として良いと思う。つまりひとりひとりのエネルギー消費活動を2~5割下げる施策と実践をしなければならぬと思う。でなければ国際会議は会議のための会議に終結してしまう。
A14:一人ひとりが2割~5割下げるような施策に賛成です。要は日本でできても、米中が出来るかどうかです。地球温暖化の抑制は、世界の半分の二酸化炭素を排出している、米国と中国がどう排出削減するかです。日本の排出量はマイナーです(4%程度)。湯水のごとく化石燃料を消費する米国と中国はさらに成長し、彼らの生活や産業、交通をどう変えろというかがこの問題の本質です。  私は世界全体での抑制量目標を共有し、世界全体でコストミニマムで最適化するかについて、提案したのです。他に米国、中国を説得する手立てがあるなら、良いのですが、思い当たりません。成長を抑制し、生活レベルを抑制せよと提案して、彼らが同意するとお考えでしょうか、その議論をして、COP等の国際会議が破綻したと考えています。(回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q15:2℃UPを越えない。これを目標にするが、すぐに450ppmを越えてしまったので、一時的に2℃オーバを許容して、その後CO2を吸収して対応する?ほんとにだいじょうぶですか?想定外の様々なファクターがPositive feedbackによってカタストロフが発生する危険はほんとにないのか?
A15:大気中温室効果ガス450ppmを超えている現状から、450ppmにもどす手立てがあればよいのですが、大気中から温室効果ガスを吸い上げるのも、現実的ではありません。何とか現実的に折り合える、削減目標を考えているのです。ほんとに大丈夫かどうかと問われてお答えするすべはありません。何とか現実的に、世界で共有できる目標と公平な削減分担を描こうと検討してまいりました。  政府機関がそういう観点から世界でリーダシップをもってやっていただきたい。そのためのデータを提供しているつもりです。(回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q16:先生の発表をお聞きするとCO2削減→温暖化防止は不可能と思えます。人間にはより快適な生活をしたいという欲望がある。もうムダな努力はやめ、環境に関する研究、温暖化防止に対する投資をやめてそのresonceを他の分野にふりむけたらどうか。有意な人材を育てれば今より良い(無論技術発表含む)英知が出てくるかもしれない。不運な人をsupportするなども良い。とにかく長期rangeのことを心配しても仕方がない。災害は予期しないことからおきるもの。
A16:「CO2削減→温暖化防止」は不可能とのご指摘ですが、それでは現状と将来に向けた削減努力をやめて、温暖化の進行を放置するということになります。科学者たちが積み上げて来た温暖化に関する知見を受け入れて、技術や経済の専門家は温暖化の防止に向けて、あらゆる提言をすべきだと考えています。地球温暖化問題は極めて長期にわたる問題で、人類文明が目指すべき方向を技術と経済の専門家が英知を集めて指し示すべきであると考えています。(回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q17:緻密な日本人といわれたが、その様なことは比較の問題です。原子力で最も悪いのは軍事に関連することで、技術がクローズしていることと思います。もんじゅは安全に作られているとのことですが、本当に壊れた時に安全でないといけないのでは?トリウム溶融塩炉のような被害の限定が可能なものでないと工学としては永久に落第だと思います。
A17:プラントを国産技術開発でゼロから積み上げる自主開発技術と技術導入により商業化されたプラントからスタートすることには差があると申し上げたかったのです。高速増殖炉の技術がクローズしているとは思いません。またトリウム溶融塩炉が安全性に優れている概念であるとのご意見には理解いたしますが、軽水炉であれ高速増殖炉であれ、高温ガス炉であれ、炉心溶融事故を限定的なものにとどめることは、工学的に可能なことと考えております。私の論点は、技術開発はしっかりとした設計概念の上に、一つ一つ積み上げて行くものだと言いたかったのです。(回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q18:地球温暖化論を支持されているとのことですがこれは未だ議論が残っているのではないでしょうか?GCMの結果説明ではインパクトなし(人為CO2排出)地球気候変動は自然界変動の研究が必要ではないでしょうか。
A18:気候変動モデルなどが完成されたものではないとのご意見と理解いたしますが、科学者たちが導いたその時点時点でのもっとも確からしい結果によって、技術者たちが温暖化抑制と対策案を技術的可能性の中で策定していく手法をとりました。  科学的に証明され、その結果をだれもが受け入れるまで待つというのも政策かと思います。しかし、私は大多数の科学者たちの見解(IPCCなど)を受け入れて、技術的、政策的に可能な手を打っていくという立場から研究を進めております。今回の提言はそこから一歩進めて、科学者たちが進めて来た排出シナリオ(大気中濃度を安定化させ、温度上昇を抑制するというコンセプトの排出シナリオ)から、現実を見定めて、増大する排出ガスが最大値に達した後に排出ゼロを目指すことによって、大気中濃度と温度上昇が最大値(ピーク)に達した後に減衰する(ディケイ)するシナリオ(オーバーシュート+ゼロエミッション)シナリオを採用したものです。温度上昇がおおよそ2℃に収束するようなエネルギー起源の二酸化炭素の排出曲線を制約条件として、世界全体でコストミニマムの最適化によって、将来技術も考慮し技術的に可能なエネルギー構成を産出いたしました。その結果として各国の排出量を長期にわたり算出するものです。排出削減に伴う費用を平等に振り分け、公平性を維持するものです。  科学的検討、技術的検討、経済的公平性の検討をワンセットで検討を進めるというやり方で提言をまとめました。(回答者:キヤノングローバル戦略研究所・湯原哲夫先生)


Q19:廃棄物を短寿命化した場合、それが原子力発電のコストにどれぐらいはねかえりますか
A19:精度の高いコスト評価はまだできない段階ですが、原子力機構で過去に行った試算では、これまでの軽水炉と再処理の路線に対して分離変換技術を適用すると、発電コストが0.1~0.2円/kWh程度上昇するとの結果になりました。これには処分場の面積が大幅に減る効果も入っています。また、OECD/NEAの試算では、再処理しない場合に比べて10~20%のコスト上昇となっており、発電コストを5円/kWhとすると、0.5~1円/kWhのコスト上昇となります。こちらには分離技術の適用による処分場面積低減の効果は入っていません。 (回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q20:大変興味深いご講演をありがとうございました。これからの発展と実現に大いに期待させて頂きます。以下3つの質問をさせて下さい。(1)未臨界炉心はどのような頻度で交換していくのでしょうか?(2)窓が難しいと一言触れられましたが具体的な問題を教えて下さい。(3)冷却が止まったときの崩壊熱の問題は大丈夫ですか?
A20:(1)炉心の燃料は2年に1度、総取換えするか、毎年半分づつ交換する設計です。 (2)ビーム窓を陽子ビームが通過するときに発熱するので、うまく冷却する必要があります。また、陽子と中性子で常に照射されている環境なので、材料が照射損傷で硬くかつ脆くなります。核破砕ターゲットの鉛ビスマスは550℃を超える高温で鋼材を腐食しやすい性質があります。これらのことから、ビーム窓は定期的に交換することになります。 (3)自然循環で最終的には外部大気に崩壊熱を逃がす設計になっています。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q21:ADSのエネルギー収支には、郡分離に必要なエネルギーも考慮する必要がありませんか?
A21:その通りですが、まだ、群分離工程、核変換用燃料製造工程、照射済燃料の再処理工程等に要するエネルギーを精度よく算定できるほどの設計検討が進んでいません。一般に、原子力発電では、わずかな量の燃料で大きなエネルギーを生むので、これらの工程に必要なエネルギーは、発電で生み出されるエネルギーに比べて小さいと考えています。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q22:FBRの「もんじゅ」を核種変換技術の開発に使われる予定ですか?使う予定であれば、どのような核種(FP,MAなど)を変換することになりますか?
A22:現在、文部科学省の委員会において「もんじゅ」の今後の計画について議論が進められています。なお、現在のところ、「もんじゅ」では、マイナーアクチノイド(MA)や核分裂生成物(FP)の照射試験等を通して核変換の研究が実施可能だと考えられます。核種としては、Np、Am、Cm、ヨウ素129、テクネチウム99等が核変換対象です。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q23:再処理すれば産業物が大幅に減ると言われましたが、再処理燃料を使う見込みがなければ全て廃棄物ではないでしょうか。もんじゅも一向に進まず、MOXも再稼動できない現状では使えないものと思います。
A23: 使用済燃料の90%以上を占めるウランや1%程度を占めるプルトニウムは、今後も原子力発電を進めようとする国にとっては貴重な資源です。また、意見が分かれるところかもしれませんが、エネルギー自給率が4%に過ぎない日本において、これらの資源を放棄するすることは、長期的な視点から性急過ぎる判断だと思います。既にフランスでは軽水炉でのMOX燃料の利用を進めており、技術的には可能な選択肢です。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q24:ADS4基にて日本の使用済核燃料は処理出来るとの事ですが早くテスト装置を作ってテストを始めて下さい。ADSのコストは、テストは完了はいつ。実用化の予定は。現在の取組み状況は?日本の状況は?インドはトリウムとありますがADSとトリウム溶離塩炉の関係は?
A24:まずはJ-PARCを使った基礎実験を開始し、並行して、欧州等と協力して、かなり大規模なADSの実証実験を行いたいと考えています。それらを経て、2030年代の実用化を目指します。
 熱出力800MWのADSの建設費用は1基で2300億円と試算しています。この他、分離工程や燃料製造工程等のインフラや、運転費と解体費も含めて、4基のADSを40年間動かすのに必要なコストは約4兆円となります。これに売電益と処分場の面積低減の効果を考慮すると、発電コストは0.1~0.2円/kWh上昇すると見積もっています。  分離変換技術に関する日本及び世界の状況等については、原子力委員会で行われた「分離変換技術検討会」の資料を参照していただけると良いと思います。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/bunri/index.htm
 トリウム溶融塩炉を未臨界状態でADSとして運転する概念の研究はなされていると思いますが、この炉心はトリウムからウラン233を生産することを目的としています。MAの核変換を行うためには高速中性子が望ましいため、溶融塩は不向きとの考えがあります。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q25:福島原発の廃跡にある残ガイも回収/分離の必要があると思うが、それらの"再処理工場"のキャパは大丈夫だろうか?
A25:事故で溶融していない燃料については六ケ所工場での再処理が可能だと思いますが、一度溶融して固まった燃料は、組成が一定しないため、簡単には処理できない恐れがあります。現在、原子力機構において、様々な溶融燃料の模擬燃料作って、処理の可能性について研究を行っていますが、溶融燃料については容器に入れてそのまま廃棄する可能性も高いと思われます。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q26:分離技術の内容、やり方、現在の進捗をおききしたかったです。実際にどの程度分離技術はできているのでしょうか?(乾式、湿式・・・)トリウム炉でのお話も聞きたかった。
A26:抽出分離法や吸着法等を使った様々な方法が提案され、研究されています。これらについて、実験室規模では分離が可能であることが示されていますが、工学規模の試験はまだ行われていません。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q27:ADSの変換(n→MA)の反応について詳しく教えて下さい。
A27:マイナーアクチノイドは数百keV以上の高速中性子によって核分裂反応を起こしやすくなる性質があります。また、それより低いエネルギーの中性子は吸収しても核分裂を起こさず、他のアクチノイド核種になります。従いまして、できるだけ高速中性子による核分裂反応で核変換することが効率の点から重要になります。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q28:核分裂と陽子、中性子、電子を制御できる技術が確立されたら原子番号の大きい物質からたとえばAu、Ag、Ptなど作ることができるのでしょうか?
A28: そのような技術が確立されれば自由に元素を作ることができると思いますが、有意な量を生成しようとすると膨大なエネルギーが必要になると思われます。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q29:放射性廃棄物の捨て場所として「宇宙に放出する」という選択肢はないのか?
A29:ロケットに積み込むのは「打ち上げ失敗」のことを考えると危険だと思います。信頼性の高い宇宙エレベータができれば可能になるかもしれませんが、大変なコストがかかると思われますし、安全性の確保の観点からも、できるだけ核変換してから地中に埋めるのがベストだと考えられます。(回答者:日本原子力研究開発機構・大井川宏之先生)


Q30:幅広いアプローチと並行して進めているということですが、ダイバータの開発がかなり難しそうですが、これが解決しないと他の巨大な投資が無駄になってしまうような気がしますが、難しい課題から先にしてシリーズに開発していくほうが、リスクを少なく出来るのではありませんか。
A30:ITERは、1985年の米ソ首脳会談を皮切りに、概念設計(CDA)、工学設計(EDA)を経て、現状の建設段階に移行しました。このEDAの段階では、ITER建設の是非を判断する工学R&Dが実施され、その中でダイバータの実規模試作も実施して、その性能を確認しています。このように、CDA,EDAを通して多くの技術課題に優先順位を付け、リスク低減を図っています。また、原型炉に向けた開発では、同様の考え方で核融合炉開発を進めています。(回答者:日本原子力研究開発機構・多田栄介先生)


Q31:恒星の内部では1500万度でP-P連鎖反応が起きているのにITERではなぜ1億度も必要なのですか
A31:太陽における密度は約160g/m3であるのに対して、地上で実現する核融合炉のそれは10-10g/m3であるため、地球上で太陽のように高密度状態を保持するのは困難です。このため、地上で核融合反応を起こすためには、温度を1億度程度まで上げる必要があります。(回答者:日本原子力研究開発機構・多田栄介先生)


Q32:2027年から本格テストが始まり、2050より実用化ということですが、将来原発にとって変わる可能性はあるのか。2100でもその比率が25%位でメインになれない理由は?設備のライフタイムはあるのか。大容量容器の真空度の保持技術は確立されているのか。
A32:核融合炉は将来のエネルギー源として7極が協力して開発を行っており、現状の電源(軽水炉を含め)の代替えとなる可能性はあります。 電源構成比率については、(1)その時の経済・国際情勢が支配要因であること、(2)エネルギー安全保障上ベストミックスが存在することから、核融合炉の比率に現時点でこだわる必要はないと判断しています。 設備については、現状の軽水炉並のの寿命を想定して開発を進めています。また、プラズマを保持する真空容器内の真空を保持する技術は既に実証されています。(回答者:日本原子力研究開発機構・多田栄介先生)


Q33:発電所建設のcostはいくらぐらいですか?原発の何倍程度でつくれますか? 商業的にペイしますか?
A33:核融合炉は、他の主要電源並の経済性を有する必要があり、これは市場に受け入れられるための必須条件と考えております。今後の核融合炉の開発でも、経済性は大きな課題となっています。(回答者:日本原子力研究開発機構・多田栄介先生)


Q34:放射性のトリチウムを使わずにD-D反応で核融合を実現することは可能でしょうか。かなり先の話だと思いますが、どのくらい未来の話でしょうか。
A34:放射性のトリチウムを使わずにD-D反応で核融合を実現することは、原理的に可能です。しかし、核融合エネルギーをまず実現するために、反応がより容易であるD-T反応によりその実証を行う必要があり、それを優先しています。D-T反応による核融合原型炉(デモ炉)は、今世紀中庸の完成を目指して、開発を進めています。このためD-D反応による核融合エネルギー利用は、それ以降の開発課題と考えています。(回答者:日本原子力研究開発機構・多田栄介先生)


Q35:全員の先生へ 現在の情緒的な反原発運動に危うさを感じています。大変困難な状況の中にありますが、再生エネルギーの限界、新世代の原発の安全性、今後の原子力の新技術開発、安全性、21世紀半ばの核融合等について明確に発信すべきではないでしょうか?
A35:科学的根拠に基づいて、今後のエネルギー問題を議論すべきと思います。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q36:原子力技術が開発に向かわなければ学生が集まらないのはその通りと思います。しかし、集まった学生が廃炉の研究に向かわないのではないでしょうか。少なくとも今まではそうでした。
A36:今後、安全性の研究はより重要になると考えられることから、その中で廃炉の研究も進めることができるのではないでしょうか。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q37:イントロダクションで電力は1/4と言われて、講演の中味はやはり電気エネルギーの話になっていたように思います。3/4どうするか、省エネしかないのかについて伺いたかったと思ってます。
A37:分かり難かったかも知れませんが、将来は、全てを核融合で賄うことになると言いたかったのです。核融合でエネルギーが生み出されるまでが問題です。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q38:"-270℃と1億2千万度との間の核燃料が非常に厚みを増すか性能を良くすると思われますがどの様なものを使われるのですか"
A38:「核燃料」は使いません。将来の核融合炉では、プラズマの周りを取り囲むブランケ ットと呼ばれる装置で、核融合で発生した中性子を受け止めて熱エネルギーに変換します。ブランケットの中にはリチウムの化合物が冷却材として流れており、熱を外部に取り出すとともに、中性子と反応して燃料である三重水 素を生産します。効率のよいブランケットの開発が進められています。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q39:材料の開発者として質問します。炉壁の低放射線化とはどういった技術ですか?また、有機材料が参入できる分野はありますか?
A39:基本的に、放射化し難い金属材料を使います。したがって、有機材料ではむずかしいと考えられます。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q40:各国がヘリカルとトカマク両方の方法を並行して進めているのか。ヘリカルの方が有利であれば、片方をすてるべき又は各国にてどちらかに分担すべきではないか。コスト的に有利なのは、どちらが有利か。
A40:ヘリカルを研究しているのは数か国で、トカマクの研究をしている国の数の方が圧倒的に多い状態です。現在、フランスに各国が共同で建設中のITERというトカマク装置は、重水素と三重水素の核燃焼とその制御を目指しており、ヘリカルとトカマクに共通の目標を掲げています。その後、定常核融合炉の原型炉を建設しますが、その時、どちらかを選ぶことになります。コスト的には、一長一短があり、今の時点では、何とも言えません。どちらが原型炉になりうるかという問題も議論があり、もう少し、並行して研究を進める必要があります。核融合科学研究所は、定常核融合炉には、もちろんヘリカルしか成りえないと主張しています。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q41:ITERは研究のためにトカマクを採用したのであり、商用炉は少なくとも日本ではヘリカルが第一候補なのでしょうか?
A41:今の時点では、どちらが原型炉になりうるかという問題は日本でも決着していません。もう少し、時間がかかります。しかし、定常核融合炉には、ヘリカルしか成りえないと思います。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q42:地上の太陽を実現するためのステップを着実に進んでいるような印象ですが、最終的にコストパフォーマンスはとれるのでしょうか?
A42:現在、定常核融合炉の設計を進めています。この設計に基づいて、試算すると、発電コストは。現在の石炭火力とほとんど変わりません。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q43:私は大学院修士でプラズマを専攻しましたが、ちょっとしたはずみで半導体の企業に勤めました。私の在籍中その技術は(実用化と共に歩んだ)X106進歩しました。修士修了時すでに核融合は理学をはなれ"工学"の領域にはいり核融合発電はすぐ目の前ということを耳にしていました。しかし、その進歩はあまりにおそく、先生のお話でも実用化にはさらに25~30年要するとおっしゃっています。この年月は相当長いものですが(多分生きていない)今までの進展をみるとさらに長くなることが容易に想像できます。本当に出来ますか?できないのならはやめに見切りをつけて他分野に(例えば原発の超安全設計など、核廃棄物処理、もんじゅなど)優秀なリソースをふりむける決断も必要なのではないですか?
A43:約40年前、当時の先生にお聞きすると、実用化まで約30年とおしゃっていました。しかし、この時代は、1000万度にも達していない状況でしたから、根拠のない予想といえます。したがって、とても「残りは工学」とは言えない時代だったと思います。今、トカマクでは5億度、ヘリカルでも0.8億度を実現しており、根拠のある、ロードマップに基づいた確度の高い年数として、25年から30年と申し上げています。LHDでも製作だけで8年を要しました。大きく複雑な装置を初めて製作するには時間が必要です。この25年から30年という年限には、概念設計、R&D、工学設計、製作の時間が入っていますので、大きく複雑な装置を初めて製作する年限としては、短いと言えます。確実に実現することができますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q44:全先生宛  すべて中身の濃い講演でした。ありがとうございました。PJは早くはじめてもダメ。しばらくslow downして資源枯渇が心配になったころから立ち上げると、技術も進歩しているだろうし、今より効率的に立ち上がるのではないか?・国民に原発は難しいことを知らせるのは、電力料金を一斉に値上げすること。そしてその分、理性を示すこと、先生方の意見は正論であるが、タイムコンスタントが長すぎる。
A44:エネルギーの問題は、人類の存亡がかかっている問題です。ご意見は理解できますが、性急に決めずに、人類が何万年も生存できるような方策を選択する必要があるのではないでしょうか。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q45:(1)計画の実現性は?(2)世界の情勢はどの様に予算が予定されているのでしょうか?実用化へのバリアは何でしょうか?エネルギーの取り出し方は?
A45:(1)核融合炉の実現には、今後、25年から30年はかかりますが、確実に実現できます。(2)現在、フランスに各国が国際共同研究として建設中のITERというトカマク装置は、重水素と三重水素の核燃焼とその制御を目指しています。この建設と運転のため、各国は経費を分担して供出しています。経費は各国で必要に応じて予算化されているといえます。実用化に向けて、今後、概念設計、R&D、工学設計、製作が行われます。その中でバリアが見つかる可能性はありますが、今の所、大きなバリアはないと考えられています。核融合エネルギーは、最終的には電気として供給されます。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q46:ヘリカル系は優れた方式のようですが、ITERではトカマクでが採用されています。その理由は何ですか?
A46:ITERの建設を決めた時、核融合研の大型ヘリカル装置は、稼動していなかったため、当時のヘリカル系のプラズマの性能は低く、トカマクが選ばれました。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q47:LHDでは不純物の吐き出しが確認されたとなっていますが、これはヘルカル型に限ったことですか?(トカマク型には確認されないのか)
A47:高温プラズマが生成された時、不純物がプラズマの中心から吐き出される現象は、ヘリカル系だけに見られるもので、トカマクでは起きていません。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)


Q48:放射性のトリチウムを使わずにD-D反応で核融合を実現することは可能でしょうか。かなり先の話だと思いますが、どのくらい未来の話でしょうか。
A48:D-D反応を利用した核融合発電は、非常に高温でしか可能ではないため、実現させるのが難しく、100年以上先の話になると思います。(回答者:自然科学研究機構・小森彰夫先生)