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自然科学研究機構シンポジウム

第15回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第15回自然科学研究機構シンポジウム
アストロバイオロジー(宇宙における生命)
―天文・地球・生物・物理・化学の最前線研究者が熱く語る―
(2013年10月14日開催)

講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者の先生方からの回答です。


※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。


Q1:23億年前とか7億年前とか、(私には想像する力が足りなくて、いつも混乱してしまいます。)どんなイメージを持てば実感を持てるでしょうか?宇宙の話を聴くたびに出てくるスケールの大きさ(長さ)に圧倒されてしまいます。
宇宙がはじまってから現在までを24時間として・・・って例え話はぴんとこなくて・・・。
A1:私たちの日常生活とは桁違いの時間や空間のスケールというのは,通常の感覚を大きく超えるものですから,日常的なイメージで理解することは難しいものです.やはりある程度の専門的な訓練(勉強)を積まないと実感が持てるようにはならないものだと思います.ただ,地球の歴史を1年として,といった例えは,ピンとはこないかも知れませんが,地球史で見るとごく最近のことなのか,それとも真ん中あたりの出来事なのかといった理解には役立つのではないかと思います..
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q2:海表面が凍ったらその下は嫌気的になってメタン菌がメタンを出すはず。なぜメタンを無視するのか?根拠を説明していただけたら幸いです。
全球凍結があったとすると全てがうまく説明できてもそれが全球凍結が起こったことの証明にはならないはず。今後、何を明らかにすれば全球凍結が直接証明されたことになるのか?
A2:全球凍結下でもメタン菌は活動していたはずですし,それに関連する証拠を私たちの研究グループも発見しています.ただし,それは全体のシナリオの本質ではなく,一般向けの話題としても難しすぎるので,あえて説明しませんでした.後半の指摘もその通りで,全球凍結の「証明」は難しいだろうと考えます.ただしそれは全球凍結に限った話ではなく,地球史に関する議論は,ほとんどの場合,作業仮説だとお考え下さい.地質学的証拠と矛盾しないシナリオが最も可能性が高いということです.そのシナリオと矛盾する証拠が見つかれば,作業仮説の修正または棄却が必要になります.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q3:全球凍結でなぜ、O2が増加するのか、もう少し詳しく教えて下さい。(講演ありがとうございました。)
A3:全球凍結からの脱出には大量(0.1気圧オーダー)のCO2が大気中に蓄積し,その温室効果によって氷を融かす必要がありますが,その結果,全球凍結脱出直後の全球平均気温は60~70℃にも達することになります.そのような高温環境においては,地表は激しく風化浸食され,生物必須元素であるリンが海洋へ大量に供給される結果,異常な富栄養化が生じ,光合成生物の爆発的な繁殖によって大量の酸素が生成される結果,酸素濃度の上昇が生じたのではないかと考えられます.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q4:全球凍結と氷河期はどれぐらい違うのでしょうか。
A4:通常の氷河時代では,氷床の広がりは中緯度に達する程度です.いまから2万年前の氷河期の最盛期において,北米では氷床がニューヨーク付近まで拡大しましたが,全球平均気温は現在と数度程度しか違いませんでした.ところが,全球凍結においては,氷床は赤道にまで達し,全球平均気温はマイナス40℃にもなると考えられています.全球凍結は通常の氷河時代をもたらす寒冷化とはまったく異なる現象だと考えた方がよいでしょう.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q5:生命の進化に酸素は、必要なのでしょうか
酸素を必要としない生命も存在するのではないでしょうか?
A5:生命に酸素は必要ありません.実際,地球上にも酸素を必要としない多くの生物(嫌気性の生物)が存在しています.ただし,それらはほとんどすべてバクテリアかアーケア(古細菌)です.動物や植物のような,より複雑で大型の生物は,すべて酸素を必要とします.酸素を用いることで格段に大きなエネルギーを利用できることと関係しているのではないかと考えられます.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q6:現状から今後、全球凍結が起きるのか?起きるならばその条件変化は何か
A6:全球凍結が将来起こらないとは断言できませんが,太陽が時間と共に明るくなるために全球凍結はだんだん起こりにくくなるものと考えられます.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q7:・全球凍結終了直後、風化によるリンの供給が、光合成を促進したと説明がありましたが、凍結中の氷の下で(還元的環境で)リンが大量にたまったことも光合成の促進につながったと考えられますか?

  • BIFが原生代中ごろの約10億年の分は産出されていませんが、ただ単に見つかっていない、という可能性はありませんか?
  • 全球凍結中は光合成生物や他の生命は生き延びることができますか?

A7:ご指摘のように,リンは全球凍結中の海洋深層水にも蓄積し,それが光合成の促進につながった可能性も指摘されています.一方,まだ未発見のBIFが存在する可能性は否定できませんが,金属鉱床はこれまで世界中で精力的に調査されてきましたから,大規模な鉱床がまだ見つかっていないということは考えにくいように思われます.また,全球凍結を生き延びた生物がいたからこそ私たちが存在しているわけですし,光合成藻類も生き延びたことが知られています.しかし,どのような生物種がどこでどうやって生き延びたのか,その詳細はまったく分かっていません.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q8:"光合成だけでは、酸素は大気中に蓄積しません。酵素は惑星表層では、すぐに消費されてしまうから"ということですが、酵素が惑星表層ですぐに消費されてしまう原因が、イメージがわきませんでした。何かの酸化が進んでしまうということですか。他の生物により、呼吸によって消費されてしまう、ということですか?
A8:たとえば,光合成生物の死後,その遺骸が完全に酸化分解されると,光合成で生産した分と同じ量の酸素が消費されるため,正味の酸素生産量はプラスマイナスゼロ,ということになります.またそのバランスがわずかに崩れて正味で放出された酸素は,火山ガスや堆積岩中の有機物,鉱物中の鉄や硫黄などの酸化によって消費されます.酸素が大気に蓄積するためには,こうしたバランスが大きく崩れるイベントが生じる必要がある,ということです.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q9:全球凍結期が終わった後の高温期で、温室効果が暴走せずにいるのはなぜですか?
A9:全球凍結はCO2の温室効果によって終了したと考えられていますが,CO2の温室効果は暴走することはありません.むしろ,炭素循環によってCO2が消費され,通常のCO2レベルにまで自律的に低下して気候を安定化させる性質があることが知られています.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q10:

  1. 陸のない海だけの惑星でも全球凍結は起きますか。また大型で複雑な生物は発生しますか?
  2. 人間活動が全球凍結を招く可能性はありますか(過剰なCO2規制などで)

A10:

  1. 陸がない海惑星の気候安定性はまだ理解が進んでいませんが,おそらくCO2が消費されにくいため,軌道が遠方過ぎない限り,全球凍結は生じないでしょう.また,酸素が増えるメカニズムが働きにくいため,生物の大型化も難しいのではないかと考えられます.
  2. 全球凍結には一般的には数十万年ほどかかりますので,人間活動の時間スケールでは,全球凍結は生じないものと考えれます.
    (回答者:東京大学・田近英一先生)

Q11:スノーボールアースが存在した実験的証拠は?
嫌気性、古細菌などが今も存在しているのはなぜ?
ご自身の研究内容と一般の話がきちんと解離させながら話してほしい。
A11:スノーボールアースの根拠は,基本的には低緯度氷床が存在した証拠(古地磁気学データ)と気候モデルに基づく理論的知見によるものです.また,嫌気性生物がいまも存在しているのは,嫌気的な環境が現在に至るまで常に地球のどこかに存在し続けてきたからでしょう.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q12:暴走的な寒冷化のメカニズムとして、気温低下→氷床増加→アルベドの増加、そして、また気温低下になる。と言っていましたが一体、どれが最初に起こったのですか。
A12:寒冷化です.暴走的な寒冷化現象(アイスアルベドフィードバック)がはたらくのは,寒冷化がかなり進んで,地球表面の半分以上が氷で覆われた後だからです.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q13:全球凍結の開始のメカニズムをもう少しくわしく知りたい。
A13:なぜ全球凍結が生じたのか,本当の原因は現在でも不明です.ただ,何らかの理由で温室効果ガスの極端な減少により寒冷化が非常に進んだことによって,ついには暴走的な寒冷化現象(アイスアルベドフィードバック:寒冷化→氷床の拡大→反射率の増加→日射量の低下→寒冷化・・・)が生じたために,全球凍結したものと考えられます.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q14:全球凍結時代そして、全球凍結から脱出した後の高温時代に生きていた生物はいるのでしょうか?
A14:現在生きている全ての生物の祖先が全球凍結とその直後の高温環境の時代を生き延びたことになります.ただし,海洋深部や地下で生き延びたものは,必ずしも極端な寒冷・高温環境にさらされたわけではないかも知れません.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q15:恐竜時代の高温になるまで、あと何年かかりますか。
または、恐竜時代の高温期と全球凍結の低温期はこれからも起こることがあるのですか。
A15:恐竜が繁栄していた約1億年前はきわめて温暖だったことが知られています.温暖期と寒冷期は繰り返していますので,再び恐竜時代のような温暖期が訪れることは十分考えられます.ただし,具体的にいつになるのかはよく分かりません.一方,全球凍結が再び生じるかどうかについては,まったく不明です.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q16:全球凍結後に急激に気温が上昇する理由が分かりません
なぜ、急激に上昇するのでしょうか?
A16:全球凍結からの脱出はかなり短い時間スケール(数千年程度)で生じると推定されています.そのような短い時間スケールでは,全球凍結中に大気中に蓄積した大量(0.1気圧オーダー)のCO2は除去されずにそのまま大気中に残ったままになります.したがって,氷が融けて地表面の反射率が急激に低下することによって,その強い温室効果のため全球平均温度が60~70℃にも達するような高温環境が急激に生じることになります.
(回答者:東京大学・田近英一先生)

Q17:がらくた生命というネーミングがおもしろいと感じました。
機能に着目してみる、といわれたところについて質問です。
機能とはどのような観点で分けて、どのような順番に観測してゆこうと考えられていますでしょうか?計画について教えて下さい。
A17:比較的確かめやすいのは,「代謝」に関連した触媒機能です。エステルの加水分解などをする機能はすでに見つかっています。逆に難しいのは,「自己複製」機能です。まずは,自己触媒機能,つまり触媒作用により,自分と同じ分子を作り出すようなものを見つけたいと思います。自分と同じ分子が増えていくわけですから,自己複製の前段階になるのではないかと思っています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q18:タイタンで見つかる可能性がある生命誕生の途中経過とは?
A18:タイタンの湖の環境で,有機物の凝集体ができる可能性がみえてきました。これが,何らかの触媒機能を有するかどうかを調べていきたいと思います。この凝集体が,さらに袋を形成し,その中に閉じ込められた溶液中で,自己触媒反応などが起きて,というような過程を考えています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q19:宇宙でできて何故地球ではできないのか?具体的に何の分子が宇宙でできて地球ではできないのか?
PとFeとSの検出が必要だと思うのですが。
A19:化学進化は,適当な材料とエネルギーが揃えば,宇宙でも地球でも進みますので,アミノ酸や核酸塩基などはどちらでもできたと思います。ただし,原始大気の中にこれらを作りやすい一酸化炭素やメタンがそれほど高濃度で含まれていなかった可能性があり,この場合,地球でのアミノ酸などの生成量は限定的となります。Fe, S, P,いずれも重要ですね。FeとSは宇宙でも地球でもそれなりにありますが,Pは宇宙でも地球の海水中にもそれほど多く含まれておらず,これが核酸の起源を考える時の問題になっています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q20:

  • 右様だけにすると機能するアミノ酸が作られるのでしょうか?
  • 昔のSF(アンドロメダストレイン)にあるような、宇宙のちりに含む生物による汚染対策は検討されているのでしょうか?(ありえない話?)

A20:右手型の(D型の)アミノ酸のみを使っても,ちょうど地球のタンパク質を鏡に映したような形のものを作ることは可能であり,機能を持ち得ます。宇宙から物質を持ち帰る場合,特に火星やエウロパのように生命がいる可能性が高いと考えられる天体から持ち帰る場合のルールが国際的に決められており,「宇宙検疫」とか「惑星防護」と呼ばれています。宇宙の塵は,つねに勝手に降ってくるため,特にルールは決められていません。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q21:生命の起源について
宇宙には生命を構成する物質がありふれているのに、地球上においては、なぜ、40億年前のある時点においてしか発生しなかったのか。常識的に考えれば材料と環境がそろえば、いつでも生命が連続的に発生してもおかしくないと思われる。過去に起きた一回だけのイベントと考えるには無理があるのではないか。
A21:生命の誕生は,おそらく原始の海の中のいろいろな場所で平行して起きたと考えています。しかし,現在の地球生命を L=1,非生命をL=0とすると,最初に誕生した生命は,ある場所ではL=0.0001, 別のところではL=0.0002だったとした場合,両者が出会うと,より高機能な0.0002のものだけが生きのびます。これがさらに進化して0.01みたいなものができてしまうと,後から新たに0.0001のものが誕生しても0.01のものに駆逐されてしまうでしょう。このため,地球では1種類の生命しか生き残れなかったと考えています。ただし,地底深くに逃げ込んだ別種の生命がいる可能性は考えられます。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q22:宇宙から飛来する有機物が生命の起源とのこと、現在も飛来する有機物で新たな生命が生まれる可能性があるのでしょうか
原始大気等が存在しないと無理なのでしょうか
A22:地球表層は酸素が多い「酸化的」な環境ですので,有機物は分解しやすく,さらなる化学進化により生命が誕生するのは困難だと思います。もし,海底熱水噴出孔などの「還元的」な環境に宇宙の有機物が直接届けられた場合は化学進化が起きえますが,そこで原始的な生命(たとえば生命度0.0001)が誕生しても,まわりに生命度1の生命がうじゃうじゃいるため,これが生きのびていくのは難しいでしょう。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q23:ミラー:ユーリーの実験は有名ですが、否定されていますね(環境条件が違うことが明らかとなったため)
現在では、どのように説明されているのでしょうか?
A23:ミラーの実験では出発材料にメタンやアンモニアを主とするガスが使われました。これでアミノ酸ができたのですが,とにかく条件がそろえばアミノ酸程度の分子は簡単にできることがわかり,これは現在でも評価されています。原始地球大気の本当の組成はタイムマシンでもなければわかりませんが,現在の説では,それほど多くのアミン酸ができるようなものではないと考えられています。これに代わって,暗黒星雲の中などの宇宙環境では,一酸化炭素やアンモニアなどのアミノ酸を作りやすい材料が比較的多く存在し,ここでだったら多くの生命の材料ができることが期待できます。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q24:パストウールは、微生物が勝手に生えてこないことをどのような実験で証明したのですか。
たんぽぽ計画で、ものすごいスピードで飛んでいる微生物をどのようにつかまえるのですか。
A24:スープを放置すると,腐り,中に多くの微生物が見つかります。パストゥールは,スープをまず煮沸してもともといた微生物を殺したあと,空気中のほこりがはいらないようにしておけば,いつまでたってもスープは腐らず,微生物も発見されませんでした。つまり,そとから微生物(ほこり)を持ち込まない限り,スープから微生物が生えないことを証明しました。
たんぽぽ計画では,エアロゲルという非常に低密度のシリカゲルを使います。高速の塵がエアロゲルに入ってくると徐々に減速されることにより,捕まえることが可能です。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q25:・アミノ酸が右手型のみの場合でもタンパク質合成はできますか?
・イン石に右手型が多い理由を教えてください
A25:・右手型の(D型の)アミノ酸のみを使っても,ちょうど地球のタンパク質を鏡に映したような形のものを作ることは可能であり,機能を持ったタンパク質ができます。
・隕石中のアミノ酸の一部に「左手型」のものが多いのが見つかっています。原始太陽系が,「円偏光」とよばれる特殊な光があたる場所に存在し,その光のため,宇宙塵に含まれたアミノ酸のもとになる物質が変化し,左手型のアミノ酸のもとになる分子が増えたため,と考えています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q26:なぜタイタンに一番注目しているのか?
ご自身の研究内容、データが少ない印象です。もっと生データーを出して欲しかった。
A26:生命の起源を考える上で,生命のもとになった有機物を調べたいのですが,太陽系でこれが一番多く存在しそうなのがタイタンです。しかも「湖」があるため,生命に近づいた分子や,ひょっとすると地球型生命と異なる生命が存在することが期待できます。
時間の制約のため,細かいデータをお話できませんでした。拙著「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」(講談社)に私の実験に関するより詳細な説明がありますので,ご覧になっていただければと思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q27:アミノ酸(右手型)と(左手型)の宇宙で差があった理由はどの様に説明できるのですか?
A27:宇宙空間で,まずアミノ酸のもとになる分子(前駆体)が合成されます。この時点では右手型・左手型に差はなかったはずです。これを含む物質から太陽系が作られる時に,太陽系全体が「円偏光」とよばれる特殊な光があたる場所の中に存在し,その光のため,アミノ酸のもとになる物質が変化し,左手型のアミノ酸のもとになる分子が増えたため,と考えています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q28:熱水鉱床環境などの化学進化によって、宇宙からの有機物の供給を経ずに生命が生まれる説もあるのか?現在学会で有力な説はいくつあるのか?
A28:地球の原始大気や,海底熱水噴出孔でもアミノ酸を含む有機物ができますので,これらからの生命の誕生を考える説もあります。しかし,宇宙には確実にアミノ酸のもとになる分子を含む様々な有機物があり,地球にも降ってきていますので,宇宙起源の有機物も地球起源の有機物に混ざったはずです。特に左手型のアミノ酸の起源を考える上では,宇宙起源のアミノ酸前駆体を考えた方がすっきり説明ができます。生命の起源に関する説は,研究者の数だけあるといっていいと思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q29:「第2の生命システム」とは、例えばどういうものが考えられるのでしょうか?
それは、「生命」として、認めるためにはどのような条件で、「生命」とするのでしょう。
A29:地球上の第一の生命システムは,20種類のアミノ酸と4種類のデオキシリボヌクレオチド,4種類のリボヌクレオチドを用いたものです。アミノ酸やヌクレオシドの種類や数だけが違うタイプの生命も第二の生命システムです。リボヌクレオシドを使わず,他の物質で自己複製を行うものがあるかもしれませんが,それも第二の生命システムです。外界との仕切りがあり,その中で代謝(制御された化学反応)を行いながら自己複製するものがあれば,それは「生命」として認められると思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q30:L/Rの偏りを濃集するプロセスは?そのプロセスを特定することは、アミノ酸など分子進化(の仮説)に制約を与えるでしょうか?
A30:宇宙で,左右の偏りが生成しますが,その差はわずかです。これを完全に右手型か左手型にもっていかないと,代謝や自己複製可能な分子はできないと考えられます。原始地球(おそらく海)で左右の偏りが増幅されたはずで,そのようなプロセスの特定は生命起源を考える上で極めて重要です。自己触媒反応により,原理的には溶液中でそのようなことが起きた可能性が考えられており,これを実験で確認したいと思っています。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q31:要点を明確にとりまとめて提供していただけました。
他の講演者との関係もわかり、期待ももてました。
A31:暖かいコメントをいただき,ありがとうございました。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q32:私は宇宙物理学(宇宙論)の研究者だったが、生命の本質は何んだろうかとの疑問を抱いていた。小林教授の貴書「生命起源、-」&「アストロバイオロジー」を読んでみたいと思います。公的図書館かAmazonに有るといいのだが・・・
A32:ありがとうございます。「アストロバイオロジー」は版元で品切れ中のようですが,「生命の起源...」はamazonその他で在庫があると思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)

Q33:・地球では様々な微生物を含めて相互に影響しあって生命活動か維持されているのですが、未来に月や火星に基地を作って人間や地球の動物が長期間生きていられるのでしょうか?
人間はすぐに滅びて、しぶとい生命のみが新たに進化していくような気がするのですが。
・低温メタンでも酵素の働きで生命活動が活発なることは考えられないでしょうか?
A33:人類の生存に必要な元素や成分を現地で調達して、そのために必要なエネルギーを確保する手段が最終的に帳尻があう場合にのみ火星での人類の長期生存が可能になります。そのための機械製作や社会組織の維持まで考えると大変ですが、それが地球外で人類が生存し続けるための必要条件になるかと思います。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q34:蛍光顕微鏡のお話おもしかったです。
生・死以外にも判定できる試薬というものはあるのでしょうか?
また、こんな試薬があったらいいのに、というものはありますか?
A34:酵素反応を検出する試薬があるのですが、鉱物が触媒する反応と区別するのが難しくて苦戦しています。酵素反応だけを検出する良い試薬があるとよいのですが。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q35:地球上の生命の中に、火星の環境で生存可能なものもある、とおっしゃっていたと思いますが、もし地球上の生物を火星で生息させると、それが火星で生き残ったり、進化したりして、その後の火星の環境に影響することはあるのでしょうか。また、そのような人間が火星の環境を変えることは、してはいけないことでしょうか。
A35:いま生物学者は一生懸命に、生命とはなにか、生命にとって何が重要かを研究していますが、地球生命だけを材料にしているとなかなか分かりません。地球以外の生命が発見されるとそれと地球生命を比較して、生命一般的な性質も分かる様になるのではないかと思っています。もし、火星に生命がいるのであればそれを地球生命によって侵略して絶滅させることのないようにしなければなりません。火星探査では地球から微生物を持ち込まないための国際的取り決めがあります。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q36:火星の隕石が地球で発見されることがあるそうですが、地球の起源の隕石が火星に届き、似た生物系を形成する可能性はどれほどありますか?
A36:可能性はあると思いますが、地球の方が火星に比べて太陽に近く、重力も大きいので、火星から地球に隕石がくる可能性に比べて地球から火星に隕石が到達する頻度は低いと考えられています。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q37:火星には何億年も前に生命が存在していたと聞いたことがあるが、それは、どのようなことをもとに言われているのですか。
A37:火星に生命が存在していたかどうかという証拠は現在ありません。ただし、初期の火星にはおそらく海も、陸も、大気も火山もあり、地球初期に非常に似ていたことが分かってきています。従って、地球に生命が誕生したのであれば火星に誕生していてもよいのではないかという推測がなりたちます。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q38:生命生存条件の中で自由エネルギー(-0G<0)の説明を熱か学の理論から、説明してもらえませんか?
A38:地球上の生命は、外部から物質を取り込んで、細胞を維持しています。物質の取り込み、生体分子の合成はいずれも化学反応です。従って、反応の進行は自由エネルギー(-0G<0)に従って進行します。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q39:エネルギー受容体としては、酸素化合物だけなのでしょうか
生命の定義は宇宙でも適用するのでしょうか、地球での定義でしょうか
細胞の生死の判断基準はなんなのでしょうか
A39:生命の定義は宇宙全体で成立する定義を目指しています。ただし、現在の我々の知識が地球生命に限定されることから、地球生命以外にどの程度適用されるかどうかは不明です。細胞の生死判定も、場合によっています。細胞内環境を維持できなくなった時が死というのが比較的分かりやすい判断基準です。ただし、顕微鏡の判定では膜の透過性が高くなった時を死と判定しています。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q40:計画内容がよくわかりました。探すべきもの、どう探すか?話がとてもわかりやすい。プランBまで説明していただいて、よかった。
A40:ありがとうございます。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q41:エウロパは氷がはっていて、その下に大量の水(海)があるときいたことがあります。僕はそんな詳しくないので、エウロパの大気組成やガンマ線、紫外線の量も分かりませんので、エウロパが生命がいる可能性が高いか教えて下さい。ちなみに、僕は高いと思います。
A41:エウロパには、水、海、おそらく海底熱水噴出口があることなど、生命が生存できる要素はそろっています。大気はないので、もし大気が生命の誕生あるいは生存に必須であるのであれば多少心配の種がでることになります。ガンマ線、紫外線は氷で遮蔽されるので、氷の下を考える限りは問題ないかと思います。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q42:金星はあまり注目されていないのか?その理由は?
A42:金星表面は硫酸の雲で覆われており、地表温度は700℃にもなります。有機物を材料とした生物を想定する場合には、有機物が分解されてしまうため存在は難しい環境といえます。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q43:DNAを持たない大腸菌とはどういうものですか?生きているのですか?(何をもって生きていると判断すれば良いのか教えてほしいです。)DNAがないとすれば、遺伝情報をもたないということでしょうか?RNAは持っているのでしょうか?
教えていただければ嬉しいです。
A43:大腸菌の変異型です。親の細胞はDNAをもっているのですが、分裂する時に小さい細胞を作ります。小さい細胞にはDNAはありません。親の細胞から受け継いだRNAとタンパク質その他をひとそろい持っていて、外部からエネルギー源を取り込むことが可能なのでしばらく生き続けます。ただし、DNAを持たないので、分裂して増えることはできません。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)

Q44:私は宇宙に地球外生命がいると思っているのですが、生物学者の方々は宇宙にある星の数を考えると確率からいって、いない方がおかしいと思われないのはなぜなのでしょうか?(まわりくどい書き方ですいません)
A44:生物学の歴史で、ありそうで無かった物はすごくたくさんあります。ですから、生物学者は実際に自分たちの目で見るまでは信じないと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q45:遺伝子ネットワークの中に収斂する点があるとのことでしたが、他の遺伝子と何が違うのでしょうか?
A45:遺伝子には現場で単独で働く遺伝子と他の遺伝子と共同して働くものがあります。収斂する点にあるのは多くの遺伝子と共同して働く遺伝子です。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q46:ジャガイモやニンジンなども無性生殖するので、普通の細胞が幹細胞になるわけですね?これも切ったりすることが、1つの遺伝子の発現につながるのでしょうか?何がこれを働かせるのでしょうか?
A46:今回はコケの話をしましたが、作物でも似たような遺伝子が働いている可能性があります。現在、研究が進んでいます。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q47:一つ遺伝子でi-PSの様なことがおこる植物系がある事におどろきました。もっと深く知りたいと思います。
A47:現在発表準備中ですのでご期待ください。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q48:ギャップなのでしょうか
連続として考えることはできないのでしょうか
A48:個人的には不連続に見えているだけで実は連続だったりしないかと思っています。今後の研究で実証していきたいと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q49:有機物から生命体へのジャンプをどう予測されているのか、神の造形以外にあり得るのか、教えて欲しい。
A49:だれもまだその答えを知りません。また、研究方法も確立されておらず、ブレークスルーが求められています。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q50:遺伝子のネットワークで、収束する点が幾つかある図が出ていましたが、収束したら、それっきりで次の段階に行かなくなってしまうのではないでしょうか(ドミノ倒しで言うと、ドミノが止まってしまう)
A50:結節点というのは流れが融合する点を考えてください。ドミノの交差点のイメージです。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q51:生物(生命)が進化を自らコントロールしている可能性はあると思われますか?
→だから色々な遺伝子を流用できるとか?
A51:人間は医療を発達させたり、遺伝子治療をしているので、進化をコントロールしています。人間以外の生物は進化をコントロールしている例はありません。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q52:生物化学において、可逆と不可逆はかなり違う現象としてとられるが、なぜ発生と進化は同じメカニズムだと考えているのか?
内容がかなり充実していました。すばらしいお話でした。
A52:iPS細胞の例のように発生過程を初期段階に移行させる(厳密には戻しているわけではありません)ことが可能です。進化でも遺伝子を操作することによって祖先生物を作ることが原理的に可能です。不可逆なプロセスは回避して、元の状態に戻すことができるのではないかと考えています。あくまで仮説ですが。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q53:*ギャップを埋める、生物の戦略の考え方が、大変興味深い内容です。バクテリアから高等生物までのいくつかの(多くの)ギャップがあると思います。地球環境変化もあると思いますが、どの様なハードルがあったと考えますか?
A53:実はハードルは無くって、我々がまだ知らない仕組みでいきなり変わったりできるのではないかと思っています。ただ、生物学では、人間が予想したことはたいがいはずれて、もっと面白い事が起こっていることが多いので、回答はこれからの研究次第かなと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q54:ガスでないと電波望遠鏡で、地球から検出できないのか?
silicateはガス?
A54:基本的にガスが対象となります。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q55:電波で有機物を受信する説明で同じ方向から来ている電波の発信源を特定出来るのか、本当にオリオン座からの電波なのか疑問
A55:天体毎にドップラー偏移量が異なるので、オリオン大星雲からの電波であることを見分けることができます。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q56:メチレンイミンはダスト上での合成ということですが、別物菌の分解として形成されることはないのでしょうか
A56:ありません。宇宙空間に菌が存在するとはまず考えられません。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q57:宇宙では、CH(炭化水素)化合物は、すぐできても、アミノ酸はできにくい化学的な理由は何ですか?
A57:できにくいとうより、ガス中での存在量がどれだけあるのかが問題となると考えられます。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q58:しばしばとりあげられるオリオン星雲や馬頭星雲はどれくらい前から存在し、いつ頃まで存在できそうですか?
A58:不明です。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q59:HCNにHを3つ足すと、なぜCH2NHになるのですか?1Hに3Hを足したのに、なぜ4Hではなく、3Hになるのですか。
A59:HCNに付加する水素原子数は2個です。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q60:メチレンイミンとメタノール、HCNのデータは線形回帰すべきではない。きちんと誤差のギロンをしたものを発表してください。1/3(6点のうちの2点)の寄与は大きいですよ。
A60:まずは簡単な関係式、すなわち直線関係、があるかどうかを検討するのが普通です。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q61:ダスト表面でのトンネル効果は、定量的に確認されていることでしょうか?「Hならトンネル効果を示す」という期待に基づく仮説でしょ
A61:極低温でのトンネル効果については実験的に確認されています。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)

Q62:スノーボールアースを探査する計画はあるのでしょうか?
観測できるとしたら地球からどのくらいの距離でどのくらいの等級になるのでしょうか?(太陽と地球サイズ)
A62:地球を約30光年から見ると約30等級と暗いのですが、スノーボールアースを反射で見れるとこれより数等級明るくなると期待されます。直接観測では、このようなスノーボールアースが先に検出される可能性もあります。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q63:ボイジャーのPale Blue Dot、感銘をうけました。
先生はこの画像をご覧になったとき、どのような感想や、インパクトがありましたか?
A63:太陽系の中でも目立たないこの小さな惑星に多くの生命が溢れていることに感慨を禁じ得ませんでした。系外惑星研究を始めてから見直すと、改めて地球型惑星探査の難しさを認識しました。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q64:サイズについてはよく聞きますが、発見された系外惑星の方向、分布はどのようになっていますか?
A64:宇宙空間の中での方向や分布についての質問だと思いますが、系外惑星の探査自体が、ケプラー衛星の観測した方向などに偏っている場合があり、まだ数千個のレベルなので、方向・分布について議論することはまだ難しいと思われます。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q65:

  1. TMTは2021年にファーストライトですが、現在想定している観測軌道の計画の変更はないのでしょうか?技術革新は常にあるので、変更するのは大変かと思いますが・・・
  2. 予算のはなしですが、概算の算出方法はどのようにされるのでしょうか。一般には「○○円かかります」の結果しか伝えられません。何をどのような金額で?その根拠は?

A65:

  1. 観測軌道というのが分からなかったのですが、設置場所だとすると、これは既にハワイマウナケア山頂に決まっています。
  2. 望遠鏡や観測装置などは、その構成物品の単価を積み上げてゆくことで必要な予算を推定します。既に確立した技術に基づく部分の推定は確度が高いのですが、開発を伴う部分は不確定な部分もあり、危険率などを考慮して推定します。
    (回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q66:1000個とか2000個トータルで4000個見つかっている系外惑星の数には、びっくりした。
A66:私もびっくりしています。発見後わずか20年足らずでこれだけの系外惑星候補が検出されるとは思ってもいませんでした。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q67:アミノ酸の左手型と右手型と、何か生命に影響を与えることは考えられるのでしょうか。
A67:生体のアミノ酸は左手型のため、右手型を利用することができないだけでなく、場合によってはサリドマイド害のような影響を起こします。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q68:宇宙にはL型生命、R型生命の両方が存在することになるのですか。
A68:はい。私が説明した説によると、惑星が誕生した場所に寄って、右型・左型が決まってしまうので、宇宙全体ではどちらのタイプの生物も有り得ると考えています。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q69:

  • ハビタブルゾーン 水が液体でないと生命体は存在しないのでしょうか
  • 第二の地球を発見し、そこに生命体が存在したとして、なんらかな方法で交信できるのでしょうか
  • 宇宙の巨大な円偏光 宇宙は巨大な反応容器のような気がしてきました。

A69:水以外の分子を利用した化学反応を考えることはできますが、宇宙における元素のアバンダンスから、宇宙に見時は大量にあり、かつ、特殊な分子なので、水の存在を利用した生物を探査するのが当面の課題となるでしょう。知的生命体でない場合は「交信」は難しく、地球からのリモートセンシングになります。円偏光領域がこれほど広がっている場所があることがまさに新しい発見でした。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q70:星雲の円偏光で、アミノ酸の立体化学的組成に偏りが生じるのは、なせですか?
ボイジャーが振り返って、地球を撮った写真で、画面を横切っている青い筋がありましたが、これは何でしょうか?
A70:若い星の周辺にある多量の塵に光が散乱されて円偏光が生じます。この円偏光が有機物に章指されると、有機物が選択的に壊れて、右あるいは左に偏ります。ボイジャーの画像の筋はカメラ光学系による偽の光の筋です。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q71:星のできる位地によっては、右手型のアミノ酸による生命も存在する可能性があるということでしょうか。
A71:はい、そのとおりです。我々の太陽系では左に偏っていますが、別の太陽系では右に偏っているものがあると考えています。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q72:ポストkepler計画の構想はあるのでしょうか。
A72:あります。ケプラー衛星はあまりにも遠くの惑星しか探せなかったので、もっと地球に近い系外惑星を探す試みが、すばる望遠鏡の新装置とNASAのTESS(テス)計画であります。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q73:ボイジャーが太陽系圏を出たのは、2013年8月25日と書いてありましたが、2012年ではないでしょうか。
A73:今年ですので、2013年です。新聞でも大きく紹介されました。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q74:地球上の生体を構成するタンパク質のアミノ酸がほぼすべて左手型なのか、という問いに対して、オリオン座M42の円偏光の話はとても興味を持ってお聞きしました。地球上だけでなく、生命が存在するとすれば、それは右手型のアミノ酸でできている生命体もいるかも知れないということにもなるということでしょうか。もし、そういう生命体がみつかれば、やはり、生命体のタンパク質の起源は、宇宙ということにもつながるということになりますか。
A74:はい、そのとおりです。我々の太陽系では左に偏っていますが、別の太陽系では右に偏っているものがあると考えています。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q75:M型星の惑星でスーパーアースに"水がある"というのは、どの様にして知ることができるのですか。
A75:惑星のスペクトルをとります。そのスペクトル中に水に特有のフィーチャーがあるかどうかを探します。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q76:衛星ではなく惑星にこだわる理由は何かありますか?サンプルリターンが可能である系内の衛星に対してのstrong pointがわかりませんでした。
A76:太陽系の衛星で生命が期待される衛星は数えるほどしかありません。宇宙には地球型惑星が溢れていることが分かった今こそ、太陽系の外にも目を向ける時代が来たのだと考えています。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q77:系外惑星の研究者は日本(世界)にどのくらいいるんですか?
A77:日本ではまだ数が少なくて、系外惑星観測を「専門」とする常勤スタッフは5人もいません。しかし、この分野を目指す若手の数は増えてきています。新分野の常勤ポストを増やすことはどの分野でも大きな課題です。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q78:キラリティーの偏りは、星形成領域など、宇宙では普遍的でしょうか?A78:わたしたちの観測から、円偏光領域は若い星の誕生領域では普遍的な現象だと考えています。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q79:地球型惑星を探すのに、赤色矮星を探のが良いというお話でしたが、理由が今一分かりませんでした。もう一度 詳しく教えていただけないでしょうか?
A79:赤色矮星は軽い恒星のため、その周囲を軽い惑星(地球型惑星)が周回していても、速度ふらつきが大きくなります。軽い選手が軽いハンマーを回すのは、重い選手が重いハンマーを回すのと同じくらいの効果だと考えて頂けると良いと思います。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q80:長沼先生の話にもあったように、今は「生命」の定義すらあいまいな状態です。しかし、地球外の生命はどんな姿をしているか、全く分からない。これでは、それっぽいものを見つけても生命発見!とはっきり言えないのではないでしょうか?
それとも、「地球外生命体」の発見によって「生命」の定義ができるのでしょうか?
A80:生命の定義は曖昧ではありません。見る側面によっていくつかの定義があるだけで、統一的な定義は必要ありません。「長沼さん」を定義することができないのと同じです。地球体生命体探索では、特定の定義を決めて、それに会うものがあるかどうかを調べることになるのだと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q81:将来を担う子供ではなく、働く世代(20~60代)へどうしても伝えたいメッセージはありますか?
A81:働く世代は忙しい日々を過ごされていると思いますが,時には夜空を見て宇宙の広さ,そこでの生命の様々な可能性を考えていただければ,地球上のほとんどの悩みごとは宇宙・生命の歴史の中での些細なことだと感じていただけると思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)
科学はどんどん発展して、知識はどんどん増えていきます。様々な新しい発見を受け入れる柔らかい考え方をもっていていただきたいと思います。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)
生物学を学ぶと人生が理解しやすくなるように思います。出産、高齢化など理解し、よりよい方向を議論できるようになると思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)
私達や地球の存在がとてもかけがえのないことを改めて認識し、より良い環境を次世代に渡して行きましょう。
(回答者:国立天文台・大石雅寿先生)
この分野は、若い世代に新世界の開拓者になって欲しいというメッセージだげでなく、人が生きる上での根源的な疑問へのアプローチになっていることを伝えることが出来れば幸いです。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q82:はやぶさの成果に関する発表がありませんでしが、結局どうなっているのでしょうか?重要は知見が得られている?いない?
A82:はやぶさが行ったイトカワは,有機物をほとんど含んでいない小惑星だったようです。有機物分析も行われましたが,アミノ酸などの有機物は検出されませんでした。ただし,鉱物や無機物分析では多くの成果が得られ,太陽系の生成の謎を解く鍵が多く得られたそうです。来年打ち上げ予定の「はやぶさ2」は,より有機物を多く含むと考えられている小惑星(1999JU3)から試料を持ち帰る予定で,アミノ酸などが見つかることが期待できます。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)
はやぶさの結果は多数の論文として発表されています。Science誌には特集も組まれました。中でも重要な結果は、小惑星の形成過程に関する証拠が得られたことです。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)
宇宙研などのホームページを見られると情報があるかもしれません。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q83:地球外生命が発見されたら我々の意識は変わるだろう。具体的に何がどのように変わると思いますか?その後の世界は?
A83:私たちは,地球生命しか知らず,その中で人種や文化・宗教の違いで争いを続けてきました。他の生命システムが見つかれば,人類がみな兄弟であることがさらに深く認識されることが期待できると思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)
地球外生命が発見されることそのものは大きな驚きということにとどまるかもしれません。しかし、その後にその生命のことがどんどん分かっていくと、そもそも生命がなぜ、どの様に誕生し進化するかということがわかってくると思います。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)
変わることは確かだと思いますが、論理的に考えると、地球外生命がどのようなものかがわからないので、どのように我々の意識が変わるかは予想しがたいかなと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)
たとえば、何年かかっても良いので、そこに向かって宇宙船を送る、そのための技術開発に明確な目標が出来る、などという意識改革は起こるでしょう。
(回答者:東京大学・田村元秀先生)

Q84:趣旨説明にあった宇宙人の定義は?
(社会性がある生命は宇宙人?アリ、ハチも宇宙人?)
(地球人とコミュニケーションがとれれば宇宙人?イヌ、ネコ、イルカも?)
A84:知性を有し、人類とコミュニケーションを取ることが可能な生物種が宇宙人だと思います。一般にはチンパンジーやイルカ程度の知性では「宇宙人」に含まないと思いますが,その境界を決めるのは難しいですね。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)
「定義」は原理原則かわらないものではありません。趣旨説明では、人類と宇宙空間を越えて通信できることを想定しているとおもいます。従って、電磁波による通信手段を獲得した生命と考えてはいかがでしょう?
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)
予想外のものを定義するのは無理かなと思います。ウイルスを知らなかったころの人類が、ウイルスの形を予想するようなものかなと思います。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)

Q85:アストロバイオロジーの知見から、地球温暖化に対して助言できることは何ですか?
A85:地球温暖化の議論は,一般にかなり源的的な知識,つまりここ数百年くらいの地球表層のみのデータに基づいて行われがちです。このため,何が正しいかを判断するのが難しい状況です。アストロバイオロジーでは,地球の46億年の歴史,特に地球と生命の関連を研究したり,他の天体,たとえば火星や金星との比較が可能ですので,より深い議論が可能になると思います。
(回答者:横浜国立大学・小林憲正先生)
アストロバイオロジーだけで対応する課題でないと思いますが、地球全体での熱平衡という観点からは、太陽光を利用するというのが最も良い方法と思います。
(回答者:東京薬科大学・山岸明彦先生)
まず、地球は過去の歴史で現在以上の気候変動を経験しています。まずは、客観的な科学研究が必要です。
(回答者:基礎生物学研究所・長谷部光泰先生)