イベント情報
第16回自然科学研究機構シンポジウム Q&A
第16回自然科学研究機構シンポジウム Q&A
第16回自然科学研究機構シンポジウム
天体衝突と生命進化
(2014年3月8日開催)
講演者への質問とその回答
当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者からの回答です。
※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。
Q1:チェリャビンスク隕石の分裂を引き起こした力は、何によるとお考えですか。NASAが2014年3月6日に発表した、P/2013R3が10個以上に分裂し、相対速度1mphくらいで離れているというが、この分裂をもたらした力は何とお考えでしょうか。
A1:隕石や流星は大気中を高速で飛行するため、大気が厚くなっていくに従って、猛烈な熱と圧力を受けます。まるで石をコンクリートにぶつけたような衝撃を受け、ばらばらに分裂します。一方、彗星はもともと氷の天体なので、宇宙空間で太陽熱を受け、蒸発していくと「お風呂に入れた発泡入浴剤」のようにとけていき、ばらばらになることがあります。P/2013R3の分裂は、太陽熱による蒸発によるガスの内部に圧力で分裂したと考えられます。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q2:地球を何周もした隕石の衝撃波は、どのように観測されたのでしょうか。
A2:地球上には、地震だけでなく、核実験などを監視するための振動を検出する観測網が敷かれていますが、衝撃波が地面を揺らした振動を、この観測網で捉えました。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q3:天体観測でどうやって3Dの変化として観測するのでしょうか。(軌道など)
A3:確かに一度の観測だけだと、天球上の座標しかわかりませんので、距離がわからず、軌道を出すことはできません。しかし、これを時間を変えて2度3度と繰り返していくと、座標の時間変化がわかります。それらのデータから、三次元的な軌道が描けるのです。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q4:天体の観測でアクティブセンサー(レーザーなど)とパッシブセンサー(可視光線カメラなど)のどちらが、小惑星の観測に使われているのでしょうか。
A4:レーザーやレーダーは射出したビームがある程度広がってしまうので、地球にかなり近づかないと観測できません。そのためにほとんどは可視光カメラなどのパッシブな方法での観測です。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q5:地元の人が隕石を拾われていたというが、地球外から飛来したものの所有権はどうなっているのか。落ちた土地の人のものか。
A5:国によって異なりますが、一般的には発見・拾得者と、その土地の持ち主との折半になるようです。土地の所有者が明確でない場合や共有地である場合も多いので、拾得者のものになることが多いようです。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q6:小惑星とNeoの分布図で木星起動付近の小惑星の多い部分が、三方向に濃くなっている部分があるのはどうしてですか。
A6:木星と太陽との正三角形点をラグランジュテンと呼び、その点の付近は軌道的には安定となります、。そのため、木星の軌道の前後60度を中心に小惑星が多数存在します。これをトロヤ群と呼びます。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q7:チェリャビンスク隕石の今後の研究発表は、どのような期待ができるのでしょうか。他のものと違って、何か新しい発見が期待できるのでしょうか。
A7:これだけ大型の隕石落下が最新の観測技術で捉えられたのは初めてなので、今後、大気飛行中の物理現象の解析等も進むと同時に、実際に拾得された隕石の分析も進むと考えられます。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q8:すばる望遠鏡、アルマ電波望遠鏡、30m新望遠鏡、それぞれの特徴を活かして、どんな宇宙の新しい事にせまれるのでしょうか。
A8:すばる望遠鏡は広い視野を一度に観測できる特長を生かして、今後はダークエネルギーやダークマターに迫るはずです。アルマ電波望遠鏡は、その高い解像度を生かして、惑星ができている現場や生命の材料物質などを解き明かしていくでしょう。30m望遠鏡では、その大口径を生かして地球のような惑星の上に宇宙生命の証拠を捉えるのに活躍するでしょう。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q9:ダイヤモンドでできた星があるそうだが、どうやってできる。
A9:太陽のような恒星の場合、その核融合の最終生成物は炭素です。それが恒星の中心部に残され、その外層が宇宙空間に飛び去ってしまうと、白色矮星として、中心核がむきだしになります。白色矮星の一部は炭素でもダイヤモンドになっているといわれています。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q10:隕石落下による衝撃波が地球を何周もしたということですが、落下地点だけでなく、どうして地球を何周もしたのでしょうか。
A10:落下によって生じた衝撃波は、核実験で生じるような衝撃波よりもおおきなものですので、落下地点付近の地面を振動させた影響として、地球を何周もしたのです。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q11:なぜ、カメラのレンズは割れなかったのですか。
A11:カメラのレンズは面積が小さいためです。今回、割れたガラスは窓のように大きな面積をもっているものでした。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
Q12:生物が絶滅クラスの衝突に対応するため、今の人類の知識と技術を次に地球を支配する生物に残す研究や対策は実施しないのですか。
A12:非常に興味深いアイディアですが、現時点ではそのようなことを検討している例はないのだと思います。少なくても、天体衝突に関する研究会や会議でそのような話題を聞いたことはありません。次にどのような生物が地球を支配するのか、想定するのが難しいのだと思います。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q13:Neoは消滅するのか(惑星軌道の中で)。
A13:Neoは、惑星に衝突すれば消滅します。また、軌道が非常に大きく変化する場合には、太陽に衝突する場合もあります。それ以外は、消滅することはありません。惑星に接近することで軌道が大きく変化して、Neoではない軌道になる場合はあります。Neo同士が衝突することも考えられますが、衝突してお互い壊し合ったとしても、破片はNeoとして残ることになります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q14:発見される確率は何%くらい。
A14:発見のされやすさは、小惑星の大きさによります。たとえば、大きさが10km以上のNeoはほぼ発見し尽くされていると考えられています。ところが、大きさが140mから1kmくらいのNeoではこれまでの発見個数は全体の3割くらい、さらに140m以下ですとまだ1%くらいしか発見されていないと考えられています。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q15:衝突確率は確定できるのか。どのくらいの確率で。
A15:小惑星が地球に衝突する確率は、地球に衝突する可能性のある小惑星の個数とそれらがどのような軌道にあるかを仮定すれば計算することができます。現在では、大きさが10km程度の小惑星の地球衝突の確率は約1億年に1度程度、直径が1km程度の大きさなら数十万年に1度、大きさが100m程度なら数百年に1度程度で衝突があると推定されています。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q16:衝突と地震は関連するが、地震はNeoと関連するか。
A16:大きなNeoが地球に衝突すれば巨大地震が生じますが、通常起こっている地震はNeoには関連しません。たとえば、Neoが地球に接近したとしても、地震を誘発することはありません。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q17:Neo衝突回避に核エネルギーを使うということだが、この核はfissionですか、fasionですか。アルバレが提案していますが、具体的にどのような飛翔体にどういう形で核エネルギーを使うのか知りたい。
A17:Neoの衝突回避に核エネルギーを使う場合、核爆発によるエネルギーで小惑星の軌道を変えることを考えています。つまり、ご質問の言葉で言えば核分裂(fission)になります。「アルバレの提案」というものは私の方では把握していません。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q18:ご講演でご紹介されたチェリャビンスク隕石が黒いというのは有機物の有無を示すのでしょうか。
A18:チェリャビンスク隕石は、普通コンドライトという種類の隕石に分類されます。普通コンドライトはあまり有機物は含んでいません。チェリャビンスク隕石が黒いのは、地球大気に衝突したときに表面が高温になり溶けた溶融皮膜によります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q19:新たに大きい小惑星(1枚岩の)が出来るということはありえないのでしょうか。
A19:現在は、同程度の大きさの小惑星同士が衝突した場合、衝突して合体するよりも、お互いが破壊し合ってしまうと思われます。その理由は、互いの相対速度が大きいからです。また、仮に衝突して合体したとしても、1枚岩になることはないと思われます。1枚岩になるためには、全体が溶けて固まる必要がありますが、小惑星同士の衝突の場合、全体が溶けるのではなくて、がれきの寄せ集め(ラブルパイル)になると思われます。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q20:アイソンすい星のように1月3日AU以内を通るが、双曲線の軌道を通る物はNeoとは言わないのでしょうか。またそういった軌道の天体が地球に落ちてくることを予測できるのでしょうか。(オールトの雲などからの天体)
A20:Neoの定義は、近日点距離(太陽に一番近づく点)が1月3日au以下になる天体ですが、彗星の場合には、短周期彗星のみを考慮することになっています。短周期彗星は公転周期が200年以下の彗星です。ですから、双曲線軌道の彗星については、太陽に1月3日au以内に接近したとしてもNeoとは呼ばないことになります。このような彗星が発見されてその軌道が正確に求めることができれば、地球への衝突を予測できます。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q21:天体に探査機をぶつけて衝突回避するシミュレーションで、20年ほどで変化が最大になり、その後減少するのはなぜでしょうか。
A21:探査機を天体にぶつけた場合、天体の軌道のずれはわずかです。つまり、探査機をぶつけた場合とぶつけなかった場合で見た目はほとんど同じ軌道を動いていることになります。軌道のずらし方によっては、何周回か公転しているうちに、ずれが小さくなることもあるのだと思います。なので、実際に天体の地球衝突を避ける場合には、探査機の衝突のタイミングが重要です。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q22:隕石のタイプは、どのようにして分かるのでしょうか。
A22:隕石のタイプは、隕石を採取して、その断面を見たり、成分を調べることで分かります。成分が石質か鉄かによって大きく分類すると、石質隕石、石鉄隕石、鉄隕石に分類できます。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q23:岡山県井原市の美星スペースガードセンターの施設を見学させていただきましたが、現在の活動状況と、今後どのように強化されるのか教えてください。
A23:美星スペースガードセンターでは、スペースデブリの観測と、小惑星の観測の両方を行っています。特にNeoの観測については、発見されたものをフォローアップする観測が中心になっています。これは、スペースガードの観測が進んだために、最近発見されるNeoはより暗い天体が多く、美星スペースガードセンターにある口径1mの望遠鏡では発見が難しくなっているためです。そのため、日本スペースガード協会では、新しい望遠鏡を作ってNeo観測を強化する提案をしています。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q24:Neoの軌道が多いのは、公転面に沿った物が多いのでしょうか。南北方向の物はありますか? あったとしたら、どんな由来でしょうか。
A24:小惑星の軌道は、基本的には地球の公転面(黄道面)に沿っているものが多いですが、中には黄道面からかなり傾いたものもあります。軌道が黄道面から傾く理由は、特に小惑星が惑星に接近したときに惑星の引力によって軌道が大きく曲げられることによります。また、中には彗星として太陽系外縁部からやってきた天体が、ガスや塵を放出しなくなって小惑星として観測される場合もあり、そのような天体では軌道がかなり傾いていることもあります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q25:Neoの軌道を事前に見つけて、どのような対策が立てられますか。
A25:Neoを発見し何回も観測をすると、軌道を正確に求めることができます。すると、そのNeoが近い未来に地球に衝突しうるものかどうかが分かります。もし、地球に衝突するということが分かれば、その衝突回避のために対策が検討されることになります。どのようにして衝突を回避するかについては、衝突してくる天体の質量と衝突までの時間によって異なります。大きな天体や衝突までの時間が短い場合には衝突回避が困難なので、現在、いろいろな検討が進められています。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q26:10kmは1億年1度の頻度で衝突すると有りましたが、時間の経過とともに頻度は減りますか。
A26:太陽系が誕生した頃は現在に比べて小天体の衝突の頻度が大きかったと考えられていますが、現在では小惑星の衝突の頻度はあまり変化しないと思われています。ただし、太陽系外縁部から来るような彗星については、ある周期で多数の彗星が太陽近くにやってくるという説もあり、そのときに天体衝突の頻度が上がるという説があります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q27:はやぶさ2のミッションが詳細に分かるものを教えてください。
A27:「はやぶさ2」は2014年度の打ち上げ予定ですので、これからいろいろな情報が出されると思います。Jaxaのホームページだけでなく、科学館や天文雑誌などでも情報が得られるようになるかと思います。また、「はやぶさ2」のプラネタリウム番組も制作されていますので、公開されれば参考になると思います。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q28:国際的な取り組みが、急に広がったように感じましたが、これはチェリャビンスク以前から予定されていたものでしょうか。それとも急に加速されたのでしょうか。
A28:天体の地球衝突については、10年以上にわたって国連でも議論が続けられてきて、ちょうどその最終的な方針がまとまろうとしていたときに、チェリャビンスク隕石がありました。チェリャビンスク隕石のために重要性がより現実味をおびたということはありますが、取り組みが特に加速されたわけではありません。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q29:Neoが地球に当たる研究が進んでいると思うが、第2の月(ムーン)になる可能性は、どの程度あるか。
A29:小惑星が一時的に地球の引力に捕まることはありますが、月のように安定な軌道に入る可能性は低いです。つまり、またいずれは地球の公転軌道から飛び出してしまいます。ですから、地球の第2の月になる可能性は低いと思います。ちなみに、一時的に地球にとらえられる小惑星は小さいので、肉眼では見えないのが普通です。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q30:チェリャビンスク隕石落下の後、すぐに現地に行きたかったと思うのですが、どうして、すぐ行けなかったのでしょうか。
A30:私の場合には、仕事(「はやぶさ2」などのミッション関係)があり、すぐには時間が取れませんでした。仕事の方を調整して、現地に行く時間をつくりました。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q31:今後も暗い(18等以下)のNeoは増え続けるのでしょうか。すると、ぶつかる危険性は高まるのでしょうか。
A31:Neoが新たに増える理由としては、小惑星帯にある小惑星の軌道が変わって地球に接近する軌道になるか、小惑星同士が衝突して破壊し合って数が増えるようなケースが考えられますが、いずれも長い時間がかかります。人類が生きているような時間の長さですと、Neoの数は増えないと思ってよいと思います。もちろん、観測によって発見される数はどんどん増えていくことになります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q32:はやぶさ2で穴を開けて、新鮮な砂を取ろうということですが、宇宙風化の影響を避けるためには、どれくらい深い穴が必要なのでしょうか。
A32:これは、小惑星の表面状態によります。もし砂が厚くたまっている場合、その砂が表面で移動して地下物質と混ざるようなことがあるとすると、かなり深いところまで穴を掘らないと新鮮な砂が取れないかもしれません。「はやぶさ2」では、50cm程度の深さにある物質を表面に出すことができると考えています。風化をしていない物質が取れることを期待していますが、仮に風化をしていたとすれば、これは小惑星の表面の特性を知る上で重要な手がかりとなります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q33:すい星と岩石質小惑星は何が違うのか。
A33:すい星には岩石成分も入っていますが、大部分は氷と有機物でできています。小惑星にも水分や有機物を含んだものもありますが、大部分は岩石質です。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q34:6600万年前の隕石衝突で出現した岩石蒸気の量は何メガトンくらいですか。
A34:非常に玄人(くろうと)の質問ですね。典型的な衝突条件では、衝突天体と同程度から数倍の岩石が蒸発します。ただ、衝突天体の重さ自体にも一桁くらいの不確定性があるので、岩石蒸気の量を推定するのは難しいです。ただ、あえて数字を出すならば、テラトン(メガトンの100万倍)くらいになります。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q35:明治41年のツングースカは上空で彗星が爆発したということでしたが、これが上空5~10kmで爆発するメカニズムは何か。
A35:大気中を飛ぶ時に受ける抵抗力で小天体が壊れて爆発したのだと考えられています。昨年のチェラビンスク隕石衝突事件でも飛翔中の隕石が急な増光を起こしましたが、基本的には同じメカニズムだろうと推定されています。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q36:衝突実験によって、その全エネルギーが温度上昇(大気、地層)・破損・地層or岩石の変形、岩石の破損、岩石内部構造の変形などに、それぞれどれくらいの割合になっているのか。そんな論文or論文集を知りたいのですが。
A36:大変に専門的なご質問ですね。この辺の情報を包括的に得るには、H. J. MeloshのImpact Cratering: Geologic Process (Cambridge University Press) 1989がお勧めです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q37:地球環境における大気が、現在の環境になったのはどのような時代からか。また、大気の構成比によって生物相の変動はあったのか、または将来はあり得るか。
A37:地球の大気組成は、時代によって何度も大きな変化を経て進化してきました。大変化は何度もありましたが、最大の変化は25~22億年ほど前の酸素の急増でしょう。それまでほとんど大気中になかった酸素が増えて今の1%以上のレベルになったのです。それによって、真核生物が生まれたと言われています。これがなかったら、多細胞生物も生まれないことになります。今後に酸素がない環境に逆戻りすることはまずないでしょうから、全く同じ酸素増大イベントはないでしょう。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q38:空気(大気)がない月では、隕石の衝撃は地球での衝撃波に対して何か変わるのでしょうか。
A38:大気のない月では、地表への衝突が起きるその瞬間まで何の衝撃波も生じません。衝突が起きた瞬間から地下に衝撃波が生じますが、そこからの過程は地球の場合とほぼ同じです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q39:天体の地球への入射角と燃えつきる高度は、関係があるのでしょうか。
A39:入射角が浅いとゆっくりとした加熱が起きるので、燃え尽きる効率が下がります。そのため、大気のより深い高度まで隕石は燃え尽きずに生き残ると推定されています。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q40:金星の観測技術は向上しているのでしょうか(隕石衝突に関して)。
A40:金星への隕石衝突の直接監視はされていません。望遠鏡観測では難しいです。ただ、金星大気では、何十年かに一度くらい硫黄の量が増える現象が見られます。金星探査機によって発見されました。もしかすると、これは隕石衝突によって引き起こされているかもしれません。ただ、火山噴火説の方が有力です。なお、月への隕石衝突は、かなり多くの科学者が観測しています。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q41:地球の年齢が45億ということが隕石によって分かったらしいが、その理由は。
A41:隕石や地球の元素組成の詳細分析や惑星形成理論から、地球の形成は隕石の形成から1千万年ほどの期間内にできたと推定されています。そのため、隕石が固化した年齢を放射同位体比から計測できれば、地球の年齢が億年単位では正しく見積もれるのです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q42:ツングースカの隕石による被害で、木の倒れる方向は、楕円でなく不定形なんですか。
A42:大気中を高速で飛ぶ隕石から生じる衝撃波の強さが一定なら、ほぼ円錐形になります。これが斜めに地表と交叉すれば楕円形になりますから、暴風域も楕円になるだろうと推測されます。これがご質問の意図ですよね。ですが実際には、衝撃波の強さは隕石が大気中で砕け散る勢いが変わるのにつれて、時々刻々と変化します。そのため、暴風域の形も楕円形から大きく崩れた方になるのです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q43:はやぶさ2の目標書惑星は、どのような特徴の持っているのでしょうか。調査するとどのような発見が期待できるのでしょうか。
A43:はやぶさ2の探査小惑星には、1999Ju3という名前がついています。この小惑星は、反射率が低く炭素や含水鉱物に富んだ組成を持っていると推定されています。地球で見つかる隕石の中では、炭素質コンドライトという隕石に近いものです。炭素質コンドライトには、アミノ酸や糖などの有機物が見つかったり、10重量%を超える水分をもっていることもあります。これらの物質は、地球上に生命をもたらした可能性があります。ですが、これらの隕石には、地表に落ちるや否や地球の有機物や水が染み込んでしまうので、どれが隕石由来の成分なのか地球に着いてから染み込んだ成分なのか判別できません。はやぶさ2探査では、このような地球物質による「汚染」のない新鮮な炭素質コンドライトを地球に持ち帰ることを目指しています。このような新鮮な試料が得られれば、宇宙における有機物や水の謎に迫れると考えています。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q44:イトカワの重力観測や大きさのデータから、イトカワは低密度のガレキの集合体であるというお話がありましたが、もしイトカワ全体がガレキの集合体であるとすると、イトカワのあのラッコの様ないびつな形を維持できるのでしょうか。直感的には、仮にガレキの集合体ならば、もっと球形に近い形になっているはずでは?と思うのですが。
A44:物理の直感の良い方のご質問ですね。イトカワよりずっと大きい星の場合には、球形になるはずです。ですが、イトカワは重力が小さい上に、イトカワの構成粒子は非常に角張っていて、摩擦が非常に効きやすい形をしています。このような場合には、ラッコのようないびつな形を保持できるという理論研究結果が得られています。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q45:1mくらいのすい星がありますか。
A45:すい星からは、このくらいの大きさの破片は常に剥がれ落ちていますから、太陽系内部にはこのような破片は多く生まれています。ですが、これらは太陽に近づくとすぐに蒸発して消滅してしまいます。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q46:超高速で物体が移動したとき、どのように壊れるかというのは明らかになっていないのですか。
A46:基本的な破壊機構は分かっていると思っているのですが、破壊強度について予測と実測に大きな数字の違いがあるので、何か分かっていない機構が残っているはずだと疑っているわけです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q47:K/Pg隕石と、はやぶさ2のターゲットが共通の母天体に由来する、しないは、何を根拠に決定できるのでしょうか。「化学組成は似ている」ということは、化学組成以外の根拠があるようですが。
A47:K/Pg隕石と はやぶさ2の探査天体は、似たタイプの母天体であることは、反射スペクトルから分かっています。ですが、そのような似た天体は、太陽系に多くあるので、その中の同じ1つから来たかどうかは、簡単には分からないという状況なのです。一時期は、K/Pg隕石を供給した母天体の有力候補が浮上したため、このような対応関係を立証できる可能性が生まれたのですが、この有力候補の詳細観測によって、この可能性が否定されたため、この可能性が消えてしまったのです。
(回答者:東京大学・杉田精司教授)
Q48:カンブリア紀前には、さらに大きな絶滅があった思いますが、それについての研究は進んでいるのでしょうか。
A48:はい,大変ホットな研究テーマで,舞台は南中国、私達も参戦しています。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q49:雲の生成原因を宇宙線としていますが、実際、宇宙線原因とそれ以外の要因と、どれくらいの割合でしょうか。もし前者が支配的なら、この説の信ぴょう性が上がるのですか。
A49:雲にも種類があるので,今それを実験で再現しようという試みがなされています。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q50:地磁気パターンの変化が、宇宙線被爆、雲形成に影響を与え、寒冷化を引き起こすとの説明は説得力があるように感じます。2035年超氷河期をむかえるとのお話がありましたが、「プルームの冬」仮説に関連して、現在どのようなデータが得られていて、今後、寒冷化に向かうと予想されているのか教えてください。
A50:超ではなく小です。衛星観測では地球大気圏外側の温度は最近10年間ほぼ横ばいです。どこの国も二酸化炭素を削減出来ていないので、人類が排出する二酸化炭素が原因でないことは疑いがないでしょう。一方,太陽黒点変動から予想すると2035年をピークとする寒冷期がくると予想されます。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q51:地球温暖化のCo2の問題より、寒冷地化の方が問題の意味。
A51:超ではなく小です。衛星観測では地球大気圏外側の温度は最近10年間ほぼ横ばいです。どこの国も二酸化炭素を削減出来ていないので、人類が排出する二酸化炭素が原因でないことは疑いがないでしょう。一方,太陽黒点変動から予想すると2035年をピークとする寒冷期がくると予想されます。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q52:ある本で、メタンハイドレードが大気に溶けて、酸素と合体して、酸素濃度を低下させたとかいてあったのですが、本当ですか。
A52:そもそもメタンハイドレートの総量がすくなすぎるので、そんなことは起きません。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q53:ヌーナ大陸が形成された時も、スーパープルームが発生したのですか。
A53:出来た時ではなく,分裂した時です。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q54:地球磁場の反転はなぜ起こったのですか。地球内部の金属コアの運動が逆になったのか。
A54:詳しいメカニズムは未解明ですが,何度も反転したことだけは確実です。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q55:現在では、1年で100種以上(急激?)絶滅していると聞きますが、それは大量絶滅ではないでしょうか。
A55:ちがいます。その程度では、化石記録には残りません。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q56:スーパープルームが定期的に起きるということは、またプルームの冬が起きる可能性はあるのでしょうか。
A56:そうです。たぶん今から2億年後くらいに。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q57:地球温暖化は考えなくてよいのでしょうか。Co2の増加は全く関係ないか、枝葉末節なのでしょうか。
A57:20世紀は地球磁場が強くて温暖な時期が続きました。1940年代の二酸化炭素の大量排出開始よりも前から温暖化してました。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q58:氷河期は周期的に来るのでしょうか。氷河期のメカニズムは。
A58:そうです。地軸が公転面に対して傾いている効果がきいているといわれてます。解説本が一杯出てるので自分で勉強してください。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q59:今後の予想はつくのでしょうか。この説はどれくらい信じられているのでしょうか。どんな証拠が出ると説がより確かになるのでしょうか。
A59:過去の地磁気強度の変化が正確に確認されると実証出来るでしょう。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q60:人は同じこと(磁場の変化)が起こったとき、何かできるのでしょうか。
A60:全く無力です。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q61:太陽の活動の変化とは関係ないのでしょうか(映画2012のように)。太陽よりも地球内部の方が影響が大きいのでしょうか。 2030年代の寒冷も磁場ですか。
A61:太陽の磁場と地球の磁場が協力して宇宙放射線を防いでくれています。2035年に太陽活動は最低になると正確に予測されています。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q62:小氷河期はいつごろくるのでしょうか。また、発生のメカニズムは大氷河期と違うものでしょうか。
A62:2035年です。 ちがいます。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q63:2035年と予想をたてられているのは、外的な要因でしょうか。内的な要因でしょうか。
A63:太陽の磁場と地球の磁場が協力して宇宙放射線を防いでくれています。2035年に太陽活動は最低になると正確に予測されています。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q64:最近よく「生命の起源は、熱帯水生物から」なのかと言われています。今日の先生のお話では、共通点があったと思います。2億5000万年に生物が大量絶滅した後の新しい生命の誕生は、やはり熱帯水生物が起源なのでしょうか。それとも全く関係ないのでしょうか。
A64:それは深海の熱水噴出口のことではありませんか? それなら、今回の話とは全く違います。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q65:地磁気が大幅に変化する現象は、予測不可能?近々起こる可能性はあるのか。
A65:あと2億年くらい経って,次の超大陸ができて、それが分裂する頃に、また起きると予想されます。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q66:宇宙線による雲の発生実験は、どのように行われるのでしょうか。
A66:スイスにある粒子加速機をつかって、実際に宇宙線と同じものを水蒸気を含む大気に高速でぶつけて雲のできかたを調べています。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q67:スノーボールアースになったのは、シアノバクテリアが出した酸素が原因だということは本当ですか。
A67:単なる思いつきの解釈で、なにも根拠はありません。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q68:各国の人工衛星で地球の水循環のメカニズムを探ろうというプロジェクトが始まっていますが、このデータは硫酸雲の発生をつかむ目的にも転用できますか。
A68:専門外なので,よくわかりません。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q69:地球磁場の反転をコア内の電流の動きで説明してください。
A69:世界の先端の学者が誰もきちんと説明出来ていません。
(回答者:東京大学・磯崎行雄教授)
Q70:オリオン座を構成するペテルギウスが爆発するというNHKの番組(BS)を視聴しましたが、どれくらいの未来・確率で発生するでしょうか。また、実際に起きたときの地球環境への影響。
A70:100%確実に爆発します。しかし、それが1万年後か100万年後かはよくわかりません。爆発時は月のように明るくなると考えられますが地球からは非常に遠いために直接の環境への影響はないと考えられています。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
ベテルギウスは構成進化の最終段階にあるので、今すぐ爆発してもおかしくはありませんが、天文学的な「今すぐ」なので、本当に今すぐかもしれませんが、10万年後とかそれ以上先かもしれません。爆発したときの影響ですが、距離が遠いので影響はないと思います。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q71:日本の宇宙への関わり方の展望。
A71:日本は天文学の先進国として、今後の巨大プロジェクトを推進する上で欠かせない国になりました。今後も世界の天文学をリードしていくでしょう。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
ここでは、惑星探査という視点で回答します。惑星探査においては、NASAの独壇場と言っても過言ではありません。ですが、日本の「はやぶさ」や「イカロス」のように、NASAもやっていないミッションを行うことができます。アイディア次第だと思います。日本流のやり方で太陽系を解明していくのがよいと思います。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q72:将来の月や太陽系惑星への探査計画。
A72:小惑星探査機「はやぶさ」のように、小粒でも(大型ロケットではないと言う意味)、きらりと光る月・惑星探査を推進していくでしょう。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
月については、「セレーネ2」というミッションをJaxaを中心として検討しています。これは、月に着陸をするミッションです。月については、科学的にもまだまだ興味深いですし、利用するという観点でも重要な天体です。太陽系天体については、「はやぶさ2」の次には、ヨーロッパと共同でベピ・コロンボというミッションが進められています。これは水星探査です。このほか、火星探査についても検討はなされています。小惑星については、ソーラー電力セイルによる木星トロヤ群探査が検討されています。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q73:宇宙開発は人類レベルの共同化が必要と思う。中国一国のみでの宇宙開発は、ナショナリズムを宇宙に持ち込む危惧があり、それを避ける知恵(計画)があるか。
A73:仰るとおり、中国は現在、かつての米ソのような国威発揚的な発想で進めている一面があります。しかし若い研究者と話してみると純粋に科学研究として国際協力を進めたいという人もたくさんいます。すでに天文学では、さまざまな協力がすすみつつあり、実際にすすんでいます。(例えば30m望遠鏡Tmt計画は中国、インド、日本、北米の連携で進めています) 時間が経てば、雰囲気も変化していくと個人的には思っています。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
科学の世界では、いろいろ共同してやっています。たとえば、「はやぶさ2」では米国、ヨーロッパ、オーストラリアと協力しています。技術の方は、各国の利害やセキュリティーの問題がありますから、技術を共有することは難しい場合が多いです。しかし、国際宇宙ステーションのように多くの国が協力している場合もあります。今後の宇宙開発は、ますます大がかりになるので、多くの国が協力して進めて行かざるを得ず、実際、太陽系天体探査を議論する国際的な枠組みもあります。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)
Q74:小惑星S型、C型というのは、どうやって分かるのですか。遠くから観察するだけで判別可能ですか。
A74:小惑星を天体望遠鏡で観測すればわかります。可視光から赤外線で観測することで、赤みがかっているか、白っぽいかがわかります。その「色」を詳しく調べると、タイプ(S型とかC型などの)タイプがわかります。
(回答者:国立天文台・渡部潤一教授)
小惑星は太陽の光を反射して輝いていますが、その反射光のスペクトルを調べることで、S型、C型を知ることができます。
(回答者:Jaxa/Isas・吉川真准教授)