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第17回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第17回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

記憶の脳科学 -私達はどのようにして覚え忘れていくのか-
(2014年9月23日開催)

講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者からの回答です。
※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。

Q1:先生が定義されるアルツハイマーの定義とはなんでしょうか?
A1:私が取り上げたのは、正確にはアルツハイマー型老年デメンチアです。臨床診断によるもので、健忘症と失見当識が明らかで、海馬の萎縮所見以外に構造画像上の異常がほとんどないものです。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q2:講演の中でdimentieという言葉を使われていらっしゃいました。認知がすすんだらよくなっている事になるので認知症という日本語がおかしいのは分かるのですが、何かご提案はございませんか?
A2:認知障害(Cognitive disturbance)が良いと思いますが、日本では認知という用語をrecognitionの意味で使用することが多いため、混乱を避ける理由で、この提案は却下されました。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q3:40分があっという間でとても楽しかったです。40分なのにすごくたくさんのことをお話されていて大変満足しました。
A3:ありがとうございます。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q4:先生がおっしゃった「感情」と「記憶」の部分にとても興味がそそられました。感情が強かったときの記憶が一番思い出しやすいという理論が成立するとすれば、これをうまく利用して語学学習や外の勉強に役立つ事が可能でしょうか。例えば、わざと大笑いながら語彙を覚えたりするなど。
A4:語彙の記憶は繰り返し練習の必要な意味記憶ですから、感情はneutralです。出来事そのものに感情の動きがないと意味がありません。ご提案の学習をなされば、ある語彙を覚えようとして笑ったというエピソードは記憶されるでしょうが、その時に学習しようとした語彙は学習されないかもしれません。体験学習という方法で意味記憶をエピソード記憶に変換して学習するということには意義があります。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q5:側頭葉に障害を持ち、エピソード記憶を失っているとされる患者さんの話において、俳句が思い出せない事を取り上げ、丸暗記の記憶が失われているとおっしゃっていましたが、それは丸暗記記憶の特殊な例にかたよっているのではないでしょうか。丸暗記の記憶には感情の重みづけはなされていません。円周率は3.1414・・・のように表題と丸暗記記憶を一対一で=で結んでいるという意味では意味記憶の要素も含んでいるので、色んな記憶の形成で保存される広い記憶の一ジャングルとして丸暗記の記憶があるのではないでしょうか。
A5:エピソード記憶のうち、感情の重み付けのないものの中に、丸暗記記憶が入ってくると思っています。円周率を暗記するのは、意味記憶を丸暗記記憶に変換しているのだと思います。「さんいしいこくに・・・」は意味記憶として覚える記憶ではありません。円周率とは何ぞやということが意味記憶です。このように、ヒトは、異なったモードの記憶を用いて物事を忘れないようにと懸命に努力しているのではないでしょうか。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q6:アルツハイマーのお話とかも参考になりました。
A6:今や、私自身が直面している問題です。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q7:エピソード記憶は、文章能力が形成される3~4才からとのことだが、この理論が実証され、公表される見込みは?
A7:実証され公表される事はないでしょう。経験的な事実として想定するのみです。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q8:"まるごと記憶"は系列の記憶(九九など)とは同じですか、違いますか?
A8:おなじものです。ジュゲムもそうです。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q9:エピソードとして覚えている存在記憶、内容の記憶(意味記憶?)とメタ記憶の関係を教えてください。
A9:メタ記憶という用語は、様々な意味で使われますが、私が申し上げたのは、主として、忘れた事を覚えているかどうか、という意味です。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q10:講演は聞いてないです(途中参加のため) 記憶と知能指数IQについての関連性が少し気になります。IQが高いほど記憶力は良いのでしょうか?単純な質問ですが回答をお願いします。
A10:IQの高い方は、記憶能力のテストでも高い得点(MQと言います)をあげますので、IQとMQの差が、病的な記憶障害があるかないかの手がかりになります
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)

Q11:疾患などで知覚出来ない、見えない、人がわずかに知覚出来る様になった、見えるようになった場合は、脳の中ではどの様な事がおこっていますか?新たにネットワークが作られるのか
A11:一般に、脳領野の損傷等によって失われた特定のカテゴリーに関する知覚能力が、別の領野の働きによって代償されるような事は、成人においてはあまり起こらないと考えられています。ただし、脳がまだ機能分化・発達の途上にある幼少期にそのような損傷が起きた場合には、別の領野・ネットワークによる部分的な機能代償が起こり得ることが知られています。
(回答者:東京大学・平林敏行 講師)

Q12:pair-coding ニューロンの形成が興味深かったです。車・バス・電車から乗り物というように概念(軸)の取り方というのは生物(ヒト)一般に同じようなマッピングがされるものなのでしょうか?地域性や言語あるいは他の生物(魚など)によって変わるものなのでしょうか?脳の中の場所からの距離-時間-の短さ・近さというのが生存のために近くにあるのか、無関係に並んでいるのか気になりました。
A12:例えば顔、建物、身体の部位等、あるカテゴリーを表象する領域は、個人間でかなり共通しています。生物種が異なればマップは大きく異なりますが、顔などの重要なカテゴリーについては、例えばサルにおいても個体間でほぼ共通の領域に表象されることが知られています。各概念は空間的にバラバラに表象されているわけではなく、原則として近い概念は近くのニューロンによって表象され、上記のようなカテゴリーごとの領域を形成しています。
(回答者:東京大学・平林敏行 講師)

Q13:連合記憶は昔の記憶にさらに学習する事により記憶が強調されるということですか?
また、運動しながらワーキングメモリする事が連合記憶になるのでしょうか?
A13:昔の記憶の有無に関わらず、時間的に近接して繰り返し知覚された物同士は、連合記憶として表象されるようになります。あるいは昔は別々に知覚していた物同士でも、時間的に近接して知覚あるいは想起することを繰り返すことによって、やはり連合記憶として互いに結びつくことになります。
(回答者:東京大学・平林敏行 講師)

Q14:顔反応する顔ニューロンに電気刺激をすると、外のニューロンへ影響もするわけですので、顔反応が敏感になるのは、外のニューロンも影響を受けたからなのではないかと思いますが、その可能性はどのようにお考えになりますか。
A14:確かに、電気刺激によって活動が上がるのは一つのニューロンではないので、顔ニューロンを狙って刺激をしても、(顔とは無関係の)別のニューロンも活性化される可能性があります。しかし、顔に応答するニューロンは、空間的に近接した集団を形成しているので、顔ニューロンの隣りのニューロンは、やはり顔ニューロンである可能性が高く、その為に電気刺激は顔ニューロン集団の活性化を引き起こすことになります。ただし、刺激される範囲を正確に特定することが難しい、という点は問題となります。
(回答者:東京大学・平林敏行 講師)

Q15:pair-coding neuron や pair-recall neuron はどの程度1つのペアに特異的に発火するのでしょうか。また、1つのペアに対して複数のそれらのneuronが発火する様なことはないのでしょうか。ペアと1対1でneuronが存在するとしたら、覚えられるペアの上限が存在したり、そういったニューロンの新生などはおこるのでしょうか。また、ペアのペアなどの入れ子構造はどの様に保持するのでしょうか。
A15:反応の特異性はニューロンによって千差万別ですが、最も反応特異性の高い側頭葉ニューロンは、一つのペアに対してのみ応答を示します。しかし、一つのペアに一つのニューロンが対応しているわけではなく、一つのペアあるいは一つの図形は、複数のニューロンの反応の組み合わせによって表象されており、その結果、ニューロンの総数をはるかに上回る、非常に多くの図形が表象され得ることになります。またニューロンの新生は、一般に成体の大脳皮質では起こらないと考えられていますが、その代わり、ニューロン同士を繋ぐシナプスは、非常に活発なturn overが起こり、これによってニューロン間の結合の強さが変化することで、学習に応じた個々のニューロン応答の変化が生じます。
(回答者:東京大学・平林敏行 講師)

Q16:新しい技法、差し手を考えられるようになるのでしょうか?
A16:コンピュータ将棋が新しい定跡や指し手を考え出すことは可能です。人間の棋譜から知識を得ている部分は大きいですが、コンピュータ特有の読みの深さ、先入観のなさによって今までにない画期的な新手を生む可能性は十分にあります。今後は、新手の発見や定跡の検討など、新たな知識を生み出す方面でも、コンピュータ将棋が活躍する可能性があります。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q17:コンピュータ将棋とコンピュータ将棋が対戦したらどうなるのでしょうか。
A17:基本的には強い方のコンピュータ将棋が勝ちます。毎年5月の連休に、世界コンピュータ将棋選手権が開催されていますので、興味がありましたら是非御覧になってください。コンピュータ将棋同士の対局ですが、プログラムの個性や相性のようなものが感じられて、楽しめると思います。
今のところ、コンピュータ将棋同士が対戦して、勝手に強くなっていくというような技術は実現されていません。このような方法が実現できると画期的だと思います。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q18:コンピュータが人間に勝ったと聞いてコンピューターが人間を超えたのだと思っていましたが、人間の真似を出来るようになったと説明を聞きハッとしました。もし、人間の先をいくようなコンピュータを作れるとしたら何が必要なのでしょうか?
A18:将棋の強さは「読み」と「局面の評価能力」の両方で決まるので、評価自体は人間の真似であっても、読みの深さ、正確さで人間を上回ることは可能です。
人間を上回る評価能力を手に入れるためには、コンピュータ将棋同士の対局の勝敗などを解析して、人間の棋譜に頼らない、新たな知識を作る必要があると思います。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q19:アルゴリズムとか医学、創薬分野に応用できないかなと。
A19:医学、創薬の分野でも、機械学習は注目されている技術です。蓄積された診断情報を用いて機械学習を行い、機械が自動的に診断を行うような研究も行われています。ただし、コンピュータ将棋が常に最善の指し手を指せるわけではないのと同じように、完璧な診断を行うことは難しく、(人間を超えることができたとしても)倫理上や責任上の問題は将棋と比較してはるかに大きいです。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q20:機械学習(評価関数)はかなり大きなプログラムのようだが近い将来にハイアマチュアに使えるパソコン用ソフトが生まれるか?
A20:一般用のパソコンでも機械学習や強い将棋プログラムを動かすことは可能です。現在のパソコンは個人向けのものでも、かなり高性能なものになっているので、一昔前であればスーパーコンピュータが必要であったようなことも手元でできるようになっています。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q21:ハードもかなり強力なものを使っているようだが上と同様に一般PCでやれるようになるか?
A21:一般用PCでも強い将棋プログラムを作る/動かすことは可能です。最近行われた電王戦では、コンピュータ側は一般用のPC1台でプロ棋士に勝利しています。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q22:機械学習の方法が人間の脳のよりよい使い方に結びつけられるか?
A22:「脳の使い方」という観点では、コンピュータの考え方を人間の考え方に直接結びつけるのは難しいと思います。思考方法が異なるので、人間とは違った視点で導き出されたコンピュータ将棋の指し手を人間が参考にして、将棋に対する視点、考え方が広がるという方向性はあると思います。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q23:評価関数を決定する具体的な方法は?
A23:評価関数の作り方としては、まず、開発者が将棋のどのような特徴が有利/不利に影響しているかを書き出します(駒の損得、玉の危険度等)。このそれぞれの特徴がどのくらいの価値なのかを、たくさんの人間の棋譜から機械学習によって求める、というのが現在の評価関数の基本的な作成方法になります。有利/不利を評価する項目(特徴)を設計する部分は開発者が行っており、プログラムの強さや特徴を決める大きな要因になっています。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q24:最適化はどんな基準で行っているのか?
A24:基本的には、人間の指し手とプログラムの指し手の一致率が高くなるように最適化を行います。学習棋譜中で、「人間が指した手」の評価値が、「指さなかった手」の評価値を一定以上上回るように学習していきます。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q25:探索を深くしても人間に負ける場合があるということ、脳とコンピューターの本質的な違いは何でしょうか?たとえば「ひらめき」はコンピューターで実現できるでしょうか?「ひらめき」は脳科学的にはどの様な現象でしょうか。並列処理はいかがでしょうか。(遺伝的アルゴリズムGAやシュミレーテッドアニーリングSAは探索にゆらぎをいれてはいますが、「ひらめき」とはまったく違うと思います)
A25:探索を深くしても、局面の評価が正しく出来ていなければ良い手は指せず、人間に負けてしまう事になります。人間の場合、「読み」と「評価」が明確に切り分けられていないので、評価能力単体の厳密な比較は難しいですが、評価能力ではコンピュータは人間に達していないという見方が一般的です。
コンピュータには、基本的には「ひらめき」という概念はないといって良いと思います。コンピュータ将棋の場合、すべての指し手は、計算の上、出されるべくして出された答え、という事になります。ただ、時間をかけて深く探索して、思いもよらないような手が導き出された時、コンピュータが「ひらめいた」ように人間が見えることはあると思います。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q26:機械学習を取り入れたプログラムが弱い相手ばかり対戦すると、コンピューターも弱くなるという事でしょうか
A26:弱いプレイヤの棋譜だけを使って学習すると、弱いプログラムになってしまいます。人間と同じで、誰が将棋(の知識)を教えてくれるかは大事です。
対戦相手の棋譜を使って学習する、ということは現在のところ一般的には行われておらず、プロの棋譜などの品質がある程度保証されている棋譜を用いて学習するのが一般的です。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q27:この度はありがとうございました。囲碁のコンピューターが指すプログラムを作成する場合は主になるのはプロの学習記憶でしょうか?囲碁ばかりはコンピュータでは無理だと思われますが、先生はどう思われますか?同じコンピュータ同士で戦うとき
A27:ここ10年程度でのコンピュータ囲碁の進歩はめざましく、人間のトッププレイヤを目指すことは現実的な目標になっています(まだ10年程度はかかると思いますが)。
囲碁でも機械学習は使われていますが、コンピュータ囲碁の思考方法は、将棋とは全く異なり、シミュレーションベースの方法が取られています。具体的には、終局まで適当に手を進めてみて勝敗を求めるというシミュレーションを何万回も行い、どの程度勝ちやすいかによって有利/不利を評価しています。
この「適当に手を進めてみて」の部分では、有力な指し手を選択したほうが良い結果が得られることがわかっています。プロの棋譜を使って、プロがどのような手を指しているかを学習によって算出し、その知識に基づいたシミュレーションを行うといったことが行われています。
(回答者:パナソニック株式会社・佐藤佳州 研究員)

Q28:健忘者でもP300の波形は出るのでしょうか
A28:海馬等の記憶に重要な部位が傷害されての健忘では出現しませんが、一過性の健忘や心理的な健忘では記録可能です。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q29:脳にAtrophyが生じているような人で調べたことはあるのでしょうか?
A29:P300は出現します。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q30:犯罪捜査において無実の人でもP300が出てしまうことがあるという事でしたが、無実の人と犯人のものとは心理状態には大きな差があるように思います。それを脳波レベルで見分けることも可能でしょうか。
A30:可能だと思いますが、難しい場合もあります。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q31:森悦朗先生と柿木隆介先生のお話に関連した質問です。
認知症の脳や損傷した脳であっても脳指紋は検出されるのでしょうか?もし将来自分がボケたとしても我が子の写真を見て反応する脳であるならば安心してボケられる気がします。よろしくお願いします。
A31:P300は出現します。ただし、海馬等の記憶に重要な部位がひどく傷害された場合は出現しません。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)
脳が損傷していると「脳指紋」は変化しますから,そのような目的には使えないでしょう.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q32:日常生活では毎日同じ物・人を見る事が多いですが、そのたびにP300は出ているのでしょうか。
A32:出ていると思います。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q33:ありふれた凶器や取調べで提示されている証拠などでは脳指紋は使えないと考えられるため、その活用方法には気をつけないといけないと感じました。
A33:ご指摘のとおり、活用方法には気をつけなければなりませんね。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q34:有用ですが、たしかに一方でキケンなものもあるかなと。無罪の人を落としめてしまうとか
A34:はい、そのとおりです。倫理的な問題もあり、厳しい注意が必要です。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q35:犯罪を見分けるにはかなり有効だと思うが、資料(要旨集)では鉄琴の他にもタンバリンにも傾向が見られるように思うのだが?
A35:最終的な結果だけではなく、途中の脳波の変化にも気をつけながら最終判定をします。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q36:「既視感(デジャヴ)」という言葉がありますが、そのような時でもP300は確認されるのでしょうか?(実際に一度も体験した事がないのに、という意味では関連がなさそうな気もしますが・・・)
A36:以前に見たことがあるが忘れている場合には出現しますが、見たことが無いものには出現しません。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q37:脳指紋に相当する神経活動が起きている脳の領域はどこでしょうか。海馬ではないというスライドが少しありましたが数ヶ月以上の古い記憶の場合は海馬非依存性になり、大脳皮質へ移行するという研究もありますが、どうなのでしょうか。また、脳指紋はマウス・ラットやサルでも観察できるのでしょうか。
A37:ご指摘のとおりです。海馬が主体ですが、前頭葉や側頭葉も出現に関係しているといわれています。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q38:犯罪に使うという事ですが、ニュースや写真で見たものと現実に見たものは区別がつくのでしょうか。
A38:つきません。ただ、記憶が強烈かどうかで結果が異なります。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q39:脳指紋は視覚だけでなく聴覚などにも反応があると思いますが、全く知らない言語など意味もわからないものは記憶としてはほぼ残りませんがそういうものも脳指紋には反応ありますか
A39:通常では出現しません。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q40:P300は記憶にあるものを見た時の感情の動きに関係があるのでしょうか?それとも記憶があるという記憶に関係があるのか。どうしてP300は出るのでしょうか。
A40:見たものと記憶を照合して出現するとされています。感情は関係します。例えば、好きなものに対しては小さいですが出現します。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q41:刺激の提示時間が非常に短く思われますが何か意味があるのでしょうか?
A41:0,3秒くらいの反応ですから、短くても十分です。長く提示すると、脳活動が持続して、次の刺激に対する反応に影響します。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q42:脳指紋の正解率は?(実際に症例何百件中何例くらいの実験をした結果が存在するのか否か)DNA検査との比較の制度は?
A42:条件によって異なるとしかいえません。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q43:(近年トラブルが多い)遺産相続などで偽の書類をつくってのトラブルは脳指紋によって改善できますか?ぜひお願い申し上げます。
A43:具体的にどのような状況なのかによって答えが変わってきます。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q44:P300の信憑性については分かりましたが、どのニューロンがどのように働いているのか迄は分からないのですか?
A44:人間を対象としていますので、ニューロンレベルの研究は不可能です。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q45:脳指紋の性能について質問です。海馬からの反応を記録するとのことでしたが、認知症など記憶を引き出す能力がおとろえている人でも脳指紋を検出する事は可能ですか?
A45:P300は出現します。ただし、海馬等の記憶に重要な部位がひどく傷害された場合は出現しません。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)

Q46:ワーキングメモリが低下している方は、注意の制御を高めるとよいとのお話でしたが、具体的にはどのような方法で注意の制御を高める事が出来るのでしょうか?日常生活場面でも応用が可能な方法があるとよいのですが・・・
A46:日常生活は注意の制御を必要とすることばかりです。買い物に行くとか、会話するなど、すべて、ワーキングメモリの働きが必要です。特別に高めようとするのではなく、積極的に日常行動に対処されることがよいのではと思います。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)

Q47:ワーキングメモリにおけるmagical number 4 というのは、単語の記憶と課題自体の記憶という1つの試行において2つの事をおぼえる必要があるから、7±2の約半分の数になっているというだけなのではないでしょうか。また、半分より多めになっているのは、1対1ではなく例えば3つの文の内容と問われる単語は主語だという記憶をすれば、6つ覚えるのではなく4つ覚えるだけでいいというような工夫ができるからではないでしょうか。
A47:文の内容や憶える単語が文の理解に重要かどうかなどにより異なり、単純に半分ということではありませんが、憶える内容を工夫することで、より効果的な記憶は可能になると思います。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)

Q48:本購入します。おもしろいお話しでした。
A48:有難うございます
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)

Q49:ワーキングメモリの要領は人によりけりだと思うのですが個人の持つワーキングメモリの限界容量はどれくらいなのでしょうか?極端に欠けたワーキングメモリの場合、日常生活、社会生活を営む上での苦労はあるとは思いますがワーキングメモリを増やす方法はあるのでしょうか。
A49:ワーキングメモリの容量は、目標とする行動のために記憶できる量と考えられます。成人では2-3項目くらいです。高齢者になると、1-2項目くらいになります。イメージするなど少し工夫することが効果的かもしれません。ただ、どうしても忘れてはいけないことは、メモを取るなど、外部記憶に頼ることも必要です。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)

Q50:ワーキングメモリはシナプス可塑性(記憶痕跡)の事実と矛盾します。ニューロンシナプスレベルとの整合性がありません。脳には可塑性があり、一時的に記憶したものでも記憶痕跡が残ります。電話番号などはワーキングメモリに一時的に貯えられると云われますが同じ番号を何回もかけているうちに暗記してしまいます。つまり長期記憶となります。一体ワーキングメモリのシナプスレベルでの根拠はあるのですか?
A50:人間のシナプスレベルのワーキングメモリ痕跡を認めた研究はありませんが、動物では報告されています。記憶痕跡は残っていても、目標行動に合致した内容に注意が的確に向けられることにより、正しい検索が可能となります。この注意の焦点化が十分でないと、間違った内容を検索することもあります。ワーキングメモリには、このような注意の制御が重要です。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)

Q51:認知症の定義 DSM-5で変わりましたよ!
A51:DSM-5では「認知症」そのものがほぼ消滅し,「神経認知障害」という言葉が提唱され,認知症の定義は無くなっています.DSM-5に関わらず,認知症という概念は存在し,その一般的な意味で話をしています.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q52:お酒注意します。勉強になりました。おかしいと感じたとき、どの病院、どの診療科に行くかで何かアドバイスがありましたら。
A52:神経内科は脳の専門科ですし,精神科はこころの専門科です.脳が損傷されてこころに問題が生じるわけですから,そのどちらか,あういはどちらもというべきかもしれません.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q53:認知症の初期に脳トレをする事で改善する事ができますか?もしあるとしたらどんな脳トレが一番効果が出そうですか?
A53:脳トレが認知症の発症を防ぐという医学的根拠はありません.それよりも実際の社会生活を営むほうがよっぽど脳には刺激を与えると思います.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q54:機械の画像が多くありましたが私達市民は掲示ではなく予防や病気が治癒できる事です。診断だけでは意味がないと思いますがいかがでしょうか。
A54:記憶の障害は病気で生じます.したがって記憶に障害がでてきたらまず何の病気によるものかを診断することが大事です.咳がでるならその原因が何であるのかによって予防も治療も異なるのと同じです.そのことが分かっていただきたいというのがもっとも理解していただきたかったことです.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q55:これから脳科学的なアプローチで研究をするには数学的なスキルの他にどのような能力が必要ですか?
A55:脳科学で最も大切なのは、ヒトを含めての生き物の行動の観察だと思います。そこには、数学的スキルとは関係のない世界が広がっています。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)
人間の行動に対する理解が必要かと思います。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)
私には足りませんが,文学的なこと,情緒的なことなども必要だと感じています.科学的なスキル以外に,それらを動員しなければ脳は到底理解できないと思います.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q56:記憶量の限界について個人差はどれ位ある?定量的に測れる?マウスではどうか?
A56:語彙は一生を通して増え続けると言われています。康熙字典には確か数十万語が記載されていると聞きましたが、それだけの語彙を個人として記憶している人はいないのではないでしょうか。少なくとも語彙、すなわち意味記憶の一部分、に関しては、記憶量の限界に達するまで、ヒトは生きられないように思います
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)
ワーキングメモリの容量はリーディングスパンテストで測定すると、大学生でも2-5(スパン)位の個人差があります。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)
短期記憶に関しては限界があることが知られていますが,長期記憶は私たちが時間的,空間的に経験できるのかということが限界なのではないでしょうか.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q57:先日TVで脳の動きでみると意識して使っている脳は実際は少なくごはん1杯分が脳の働きとするとほんの1口~1口しか使われていなく実は無意識の状態の時が残りの殆どで使われていると言ってましたが実際はどうなのでしょうか?(そして脳の働きの割合(意識と無意識の世界の脳の働きとは何を指しているのですか)
A57:様々な賦活実験をやっておりますと、慣れていない精神活動の負荷を初めてさせた時には、大脳皮質は実に広い範囲が賦活されることがわかります。これが意識した作業だと思います。作業が慣れてくると、賦活部位はどんどん狭くなり、大脳皮質のほとんどの場所は休むようになります。つまり、必要最小限の部位だけ働かせていると考えられます。これは無意識なのではなく、必要のない場所を休ませて、必要部位の働きに集中的にエネルギーを使うためだと思います。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)
特別に課題をしていないときに活動する脳の領域があり、そのネットワーク(ディフォールトモードネットワーク)についての研究が進んでいます。それなどは参考になると思います。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)
大脳には異なった部位に様々な機能が点在していますが,同時にそれらを動員することはたいへん困難です.いわゆる並列処理はむずかしいのです.つまり一時には一部のことしかできません.2つ以上のことを同時に処理していたとしても,意識には一つしか上ってきません.
(回答者:東北大学・森悦朗 教授)

Q58:自然科学は哲学の実証主義から分岐したといわれています。実験と結果の結果主義です。結果のないものは物語です。皆様方のお話の中に市民に役立っているのでしょうか。
A58:実験と結果の結果主義の自然科学もありますが、宇宙生成、生命誕生、生物進化、そしてヒトのこころの科学といった分野では、実験の果たす役割は極めて小さく、仮説の提唱と、それに対する反証の発見の繰り返しが主たる営みです。これによって、宇宙、生命、進化、こころの理解に迫ることほど、市民に役立つことはないのではないでしょうか。
(回答者:東京女子医科大学・岩田誠 名誉教授)
どのような研究をするかによって異なります。
(回答者:自然科学研究機構生理学研究所・柿木隆介 教授)
ワーキングメモリを健全に維持することは、多くの人たちにとって、高齢者では特に重要です。日常生活の中にそのヒントがあることをできるだけ知ってもらえるように努力したいと思います。
(回答者:大阪大学・苧阪満里子 教授)
医師・医学者の立場でお話しました..「根拠に基づいた医療」を実践していますが,根拠のない(実証のない)いい加減な医療を行えば患者さんはたいへんなことになってしまいます.荒唐無稽な物語は私にはできなくなっています.市民を誤って誘導することはできないのです.
(回答者:東北大学・森悦朗教授)