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イベント情報

自然科学研究機構シンポジウム

第19回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第19回自然科学研究機構シンポジウム
宇宙から脳まで自然科学研究の"ビッグバン"
-コンピューターが切り開く自然科学の未来-
(2015年9月20日開催)
講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者からの回答です。


※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。


Q1:原始太陽系円盤から、惑星が出来る過程のシミュレーションで再現されすばらしい成果と思います。質問は、シミュレーション初期条件である、ダストの大きさや数、分布は何を手掛かりに設定しているのでしょうか。
A1:現在の太陽系から推測したものを使います。また、原始惑星系円盤の観測結果も使います。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q2:

  • なぜ、最終的な軌道が同心円状になるのですか。
  • 太陽系の回転軸と垂直に円盤が形成されるのですか。
  • なぜ太陽の周りには、ガスやダストがないのですか。

A2:同心円になると惑星どうしが近づかなくなり、軌道が安定するからです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q3:太陽が徐々に老いて、やがて約35-50億年後に死滅するシナリオの中で、太陽系の惑星たちは地球を含めどのように変化(その軌道を含め)してゆくのでしょうか。シミュレーションの中では模擬できますか。
A3:太陽が膨張すると金星までは飲み込まれてしまうようです。地球以遠の惑星は軌道を広げます。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q4:原始惑星同士が、衝突をくりかえすことによって水星や金星などの地球型惑星が形成されていったことは、理解できましたが、衝突を引き起こす要因となった太陽の周りのガスの消失は何が原因だと考えられているのでしょうか。
A4:太陽に近いところではガスは太陽に落ちたと考えられます。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q5:シミュレーションの計算方法ですが、時間の進行方向にダストの状態を計算する事は平易かもしれませんが、VTRの逆再生の様な並進行方向計算させることは、コンピュータで可能でしょうか。
A5:進化によって情報が失われるので、時間を遡る計算は難しいです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q6:重力(引力)に引き寄せられた物質で星ができた、逆に木製や土星の間にあった物質はこれらにより吹き飛ばされた(角運動量があって、外にあるものは)理由を分かり易く説明してほしい。(何でもくっついてしまう訳ではない理由)
A6:大きな惑星ができると、その強い重力で微惑星を加速して太陽系の外側に送ることができるようになります。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q7:地球の表面の主成分は、なぜ岩石(重元素)か、軽元素(炭素等)ではないか。
A7:天文学では炭素も重元素です。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q8:吉田先生の講演で物質、ダークマター、ダークエネルギーの存在比率の説明がありました。シミュレーション計算の基本計算として、m av/at...の説明がありました。この式には、ダークエネルギーの概念が含まれているのでしょうか。
A8:太陽系ではダークマターの影響は無視できるほど小さいです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q9:美しくない惑星の形成モデルはありますか。その原因・メカニズムは何ですか。
A9:非常に限定的な惑星の移動を仮定するモデルもあります。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q10:GRAPE、京のいずれにも、少しだけ開発に近いところにいたので、この様なすばらしい研究に役に立っていたことを知り光栄に思いました。
A10:ありがとうございます。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q11:天文学だけではなく、生物学とかも勉強されているのですか。
A11:少しだけ大学で勉強しました。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q12:地球はプレーテクトニクスで、まだ活動的ですが、あとどれくらいで地球の核の運動は止まるのでしょうか。その時は本当に死を意味するのでしょうか。
A12:10億年くらいは大丈夫だと聞いたことがあります。死を意味するかは死の定義によります。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q13:シミュレーションで一番苦労するところは、どんなところですか。また、本日見せていただいた動画まで作成するのに、どのくらい時間がかりますか。
A13:シミュレーション結果が正しいことを確かめることです。計算から動画作成まで数ヶ月かかっています。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q14:地球を作るシミュレーションにおいて、ダークマターの影響は入れなくてよいのでしょうか。(太陽周辺にはダークマターはないと考えてよいのでしょうか)
A14:太陽系ではダークマターの影響は無視できるほど小さいです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q15:シミュレーションのモデルは、どれくらい信用できるのですか。気象予報モデルでの天気予報だと、1週間後の天気予報でも精度は落ちると思いますが・・・。初期値の条件などは、宇宙モデルでは地球モデルよりも厳しいのではないでしょうか。
A15:モデルの範囲では正しい結果が得られますが、モデルが適切かは実際の天体と比較しないとわかりません。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q16:地球の自転は、どのような力が働いて発生しますか。地球の自転は、誕生してから何回変わっていますか。(磁力線の向きが北極から南極への方向が逆になっているエビデンスが観測されている為)
A16:自転の起源は地球形成時の巨大衝突です。自転軸は磁極のようには変化していません。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q17:地球が生まれたことは、宇宙規模から考えて、非常にまれなことなのか?
A17:地球型惑星の形成は稀なことではないと思います。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q18:原始惑星系円盤から惑星が出来るのならば、惑星の軌道は、ほぼ同一平面状にあるのではと思うのですが、軌道平面がかなりずれているような惑星系があるのはなぜですか。
A18:惑星どうしの重力による散乱や伴星の重力の影響で軌道が変化したと考えられています。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q19:初期型の惑星には環があり、1000万年程で無くなるということでしたが、土星にある環は、最近できたものなのでしょうか。
A19:よくわかっていません。あまり新しいものでないことは確かなようです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q20:惑星誕生・形成仮定が詳しく分かると、地球のような生命が誕生する可能性のある惑星の形成条件等も見えてくるのではないかと思いますが、地球外生命の発見の可能性は、どのくらいのところまできているのでしょうか。
A20:太陽系外の生命については、生命の兆候である物質を調べることが次世代望遠鏡からできるようになります。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q21:外側に行くほどガスやダストがあるような図がありましたが、なぜ、水星から海王星まで大きさ順にならべても、水星から海王星の順に大きくならなかったのですか。
A21:海王星型惑星が小さいのはガスをまとうことができなかったためです。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q22:

  • 円盤は必ず一定方向に回転するのか。
  • その方向はどうやって決まるのか。

A22:一定方向に回ります。元になった雲の回転方向になります。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q23:太陽系以外の惑星は、なぜ美しくない軌道を描くのか。まだ若い?
A23:惑星どうしで軌道を乱しあったのだと考えられます。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q24:地球の公転周期が、1年の中で夏が長く冬が短いような正円ではない周回をしているのはなぜですか。また、その周期は地球の歴史上、どのように変化してきたと考えられているのですか。
A24:地球ができたときの衝突によって最終的な軌道が決まりました。この軌道はこれまで大きくは変化していないと考えられています。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q25:同心円状にない惑星の系はどのようにできたのでしょうか。他の恒星系から飛んできたのでしょうか。
A25:惑星どうしの重力による散乱や伴星の重力の影響で軌道が変化したと考えられています。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q26:4次元デジタルプロジェクトのシミュレーションデータの名古屋市科学館プラネタリウムなどのデータ提供について、または協力について。
A26:提供しています。
(回答者:自然科学研究機構国立天文台・小久保英一郎 教授)

Q27:ダークエネルギー68.3%はどういう計算から出てきましたか。
A27:宇宙マイクロ波背景放射や遠方超新星など、様々な観測結果を組み合わせて統計解析を行うことで正確な値が得られます。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q28:

  • ダークマターやダークエネルギーは、いったいどうやったら認識できるのですか。
  • ダークマターは目で見えないのは、光がダークマターでは反射しないからなんですか。もし反射しないなら、なぜしあにのですか。そして、ダークマターには質量はあるのですか。
  • ダークマターは今の私たちの身の回りにも認識できていないだけであるのですか。

A28:ダークマターは重力の源となっているので、銀河の回転速度や重力レンズ現象など、重力が関わる効果を通して存在を確かめることができます。一方、光などの電磁波とは相互作用しないので、ダークマターを「視る」ことはできません。また天の川銀河の中、太陽系の周辺にもダークマターは飛び交っていると考えられます。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q29:ブラックホールは9億年ぐらいで形成されたとのシミュレーション結果でしたが、今後も増え続け銀河系星団もその中にどんどん飲み込まれ、最終的には"宇宙のはじめ"の状態に戻るのでしょうか。宇宙の寿命はどの程度でしょうか。
A29:宇宙は今後も膨張を続けると考えられていますが、その最後はどうなるか分からず、また寿命もわかりません。そもそも限られた寿命があるのかも分からないのです。銀河中心のブラックホールは周りのガスや星を吸い込みますが、銀河内の多くの物質を吸い込むには長い時間がかかりますし、またブラックホール同士が合体するのにも長い時間がかかります。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q30:超巨大ブラックホールは惑星が重力崩壊した副産物のようなものなのでしょうか?ブラックホールの正体についてもう少し詳しくお話し頂きたかったです。
A30:太陽よりもとても重い星はその進化の最後に重力的に崩壊し、中心に小さなブラックホールを残します。副産物というよりは残骸です。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q31:初期宇宙の惑星発生時のゆらぎを見て、なぜ帯状なのかと思いました。分散して派生しない理由はありますか。濃度の差の現れた方は何か力が働いているように思いました。
A31:形状をうまくあらわすことはできないのですが、まさにゆらゆらと、さざ波のように少しだけ密度の高い部分と少しだけ密度の低い部分が存在していました。この密度揺らぎに重力がはたらき、密度の高い部分にゆっくりとものがあつまります。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q32:今言われているビッグバンは、何回目のそれでしょうか。
化学反応は宇宙(真空)でも起こるのか。
A32:宇宙が創生やなんらかの最後をむかえるのか、そしてそれらが繰り返されるのかはわかりません。化学反応は、宇宙空間(完全な真空ではありませんが)でもゆっくりと起こります。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q33:100年後の月面での望遠鏡(観測機)設置計画において、まずは何を克服すれば実現できそうですか。
A33:望遠鏡の材料をどこで調達するのか、また人が月に行って作業をするのは大変ですので、ロボットが自律して建設作業ができるのかなど、技術的な問題が多いでしょう。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q34:ビッグバン後38万年たって宇宙が3000Kまで冷えて、晴れ上がり光が進むことができる様になったと理解しています。それ以後、ファーストスターが出来るまで、冷え切っていて、暗黒時代(もやもやで暗く観測できない)といわれていますが、いったいどれくらいの温度と考えられているのでしょうか。また、晴れ上りで光が進むのと物質は宇宙の中で混在したのでしょうか。
A34:温度が3000Kになった後も宇宙は冷え続け、ファーストスターが生まれるころには宇宙の平均的な温度は数十ケルビンだったと考えられます。晴れ上がりの後は、電子は水素原子核やヘリウム原子核にとりこまれているため、電磁波と反応(散乱)せず、光は進むことができます。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q35:ファーストスターのできる時、上と下にジェット(高温部分)ができるのはなぜか。その後どういう過程で星になるのか。
宇宙の暗黒時代の時でも、ビッグバンのなごりのbackground radiationの残りがあり、明るかったのでは。
A35:ファーストスターの周辺にも原始惑星系円盤があり、星からの光は円盤の上下方向に進むことができるからです。円盤を通してガスは星に取り込まれ、やがて大きな星が誕生します。また、暗黒時代の後には電磁波(現在の宇宙マイクロ波背景放射)が残っていましたが、主に赤外線の波長にあり、人間の目には明るく見えません。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q36:どれだけの水素が集まるとファーストスターになるのか。
A36:はじめに太陽の質量の数百倍ほどの水素-ヘリウムガスが集積し、ファーストスターのゆりかごとなる分子ガス雲を生み出しました。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q37:生まれた星の回転は、一方向に見えたのですが、なぜですか。
A37:星のもととなるガスははじめに、ほんのわずかだけ回転していたからです。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q38:3Dシミュレーションのソフトとかは、自作しているのですか。
A38:自分でプログラムを書きます。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q39:ファーストスターの形成の過程において、粒子が回転を始めましたが、なぜ回転をはじめたのでしょうか。(角運動量保存則に反しませんか?)(宇宙ができた時点で、ある角運動量を持っていたということでしょうか?)
A39:星のもととなるガスははじめに、ほんのわずかだけ回転していたからです。まさに角運動量が保存されるために、広がったガスのときにはゆっくりとした回転が、小さな星となると早く回転するのです。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q40:「ムラ」がなぜ重要なのか。
A40:銀河や大規模構造など、宇宙の構造の種となったからです。
(回答者:東京大学・吉田直紀 教授)

Q41:台風の目が、上陸すると消えるのはなぜですか(伊勢湾台風)。それは以前から「観測」によって分かっていたのですか。コンピュータシミュレーションにはどのように反映させるのですか。
A41:台風の眼は活発な上昇流でできている眼の壁雲で囲まれています。この壁雲は海面付近の水蒸気の流れ込みで維持されています。台風が海洋上にあるときはこの水蒸気が海面から供給されるのですが、上陸すると水蒸気が急速に減少します。また、陸上は海上に比べて地形や多様な地表面状態があり、地表面の摩擦が不均一になります。これらのため上陸すると、台風の眼は消失します。これは観測で以前から知られていて、シミュレーションにも海陸分布や陸上の地形、さらに地表面状態が考慮されていて、シミュレーションでも眼の消失は再現されます。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q42:明日のゲリラ豪雨やたつ巻は、予報できるようになるのでしょうか。テレビやネットでされるのは、いつ頃からでしょうか。
A42:ゲリラ豪雨や竜巻を前の日から予測するためには、現在の観測網やコンピュータでは不可能です。これらについてまだ分かっていないことも多く、さらに研究が必要です。ゲリラ豪雨や竜巻を前日から予報できるようになるためには、もっと大きなコンピュータが利用できるようになり、気象学がもっと進歩する必要があります。おそらく10年以上はかかると思います。ただし、数時間前からゲリラ豪雨を予測する研究はかなり進んでおり、そのぐらいの時間で予報するのは数年のうちに実現すると思います。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q43:なぜ0度層を通過した水蒸気は氷になるのに、すぐに落ちないで雲氷ができるのですか。
A43:水蒸気が氷になると、直ちに落下をはじめます。しかしながら、その氷晶粒子の大きさは数マイクロメートルから数10マイクロメートルと小さく、そのため落下速度は10cm毎秒も無い程度です。この小さな落下速度のため雲氷として浮かんでいるように見えます。場合によっては氷になるときに大気を加熱して弱い上昇流ができることもあります。その上昇流が雲氷を支えて、あたかも浮かんでいるように見えることがあります。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q44:伊勢湾台風のシミュレーションでは初期値の条件はどう設定しているのか。
A44:伊勢湾台風は1959年に発生しました。そのような歴史的台風をシミュレーションできるように、気象研究所は1958年以降の全球の解析データを作成しています。このシミュレーションでは、このデータを初期値・境界値として使用しています。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q45:地球温暖化の先(今後数百年後)に、想定される最強の台風は何mbかと思われますか。台風の強さは、台風と周囲の相対差ではないでしょうか。温暖化して周囲の温度が上昇すれば、相対差はそれほど大きくならない?
A45:希望的には地球温暖化は、今世紀末ごろの温度で止まってほしいと思います。さらに増加しても1度程度でと思います。今世紀末ごろの台風の最大強度は中心気圧がおよそ860hPa、地上の最大風速は海上で80~90m/sに達すると考えられます。それ以降の時代もその程度かそれより少し強いぐらいになると思います。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q46:

  • 海面温度は固定(time independent)境界条件ですか。
  • 海流なども考慮されていますか。
  • 大都市部における熱の流入も固定境界条件ですか。

A46:海面水温は時間とともに計算されます。台風の場合、海面水温を固定しますと、非現実的に強い台風になってしまいます。海流も考慮しています。ただ、5日程度の期間のシミュレーションでは、海流の位置が大きく変わることはありません。大都市部の人口排熱はシミュレーションに考慮していません。都市の街区スケールでは重要ですが、日本全体のスケールでは、ほとんど都市の排熱は影響しません。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q47:TIP級の台風が来ると、風速70m/s、東京では6mもの高潮という大災害が起きる可能性があるそうですが、この災害に対応していくには、ハード面ならびにソフト面においては、どのような対策・心がまえをしていけばよろしいでしょうか。
A47:ハード面については、防潮堤や河川の堤防、斜面の整備などインフラの整備が不可欠です。ソフト面についてはタイムライン(事前防災行動計画)をさまざまな事態を想定して綿密に設計しておき、さらにそれに基づいて避難訓練をすることが重要です。TIP級の台風の襲来では、人命を守る手段としては避難しかありません。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q48:伊勢湾台風の気象データ点数は、シミュレーションを行うには充分な数がなかったと思いますが、どのように仮定したのでしょうか。
A48:伊勢湾台風は1959年の台風ですので、観測データは限られています。それでも世界中には多数のデータがありますのでそのデータを用いて、気象研究所は1958年以降の全球の解析データを作成しています。このシミュレーションでは、このデータを初期値・境界値として使用しています。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q49:天気予報が外れる原因は何か。
A49:原因は大きく分けて、3つになります。一つ目は予報モデルが不完全であることです。複雑な自然をすべて計算に取り入れることはできません。また、解像度を上げるためには大規模なコンピュータが必要です。このため予報モデルは自然をある近似で表現します。二つ目は予報計算の初期値に誤差があることです。これは観測にも誤差があることと、観測網が粗いために検出できないデータがあるからです。三つ目はまだ気象学には未解明なことがたくさんあることです。気象学は学問的にさらに発展が必要です。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q50:モデルが高度化し、解像度も細かくなったことで、より現実に近似することが可能になってきたのだと思いますが、モデルは完ぺきでは無いですし、解像度も計算能力の制限から、ある程度のあらさにせざるを得ないと思います。ある初期データからモデルでシミュレーションした場合、ずれが発生すると思いますが、そのずれは中間観測データから補正をかける様なフィードバック構造はありますか。
A50:近年、予報の途中で観測データによる予報の修正をすることで、予報を改善する方法が発展してきています。そのような方法は現在の研究の大きなテーマでもあります。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q51:格子は今、最大何mくらいまで可能でしょうか。
台風の予想円が小さくなるのは、何年後くらいですか。
A51:計算の目的にもよりますが、実際の天気予報には水平格子解像度2kmぐらいが最も高い解像度です。実験的には10mぐらいの解像度で竜巻のシミュレーションをするということも行われています。台風の予報円は年々小さくなってきています。しかしながらそれが点になることはありません。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q52:バックビルディング(広島)と線条降水帯(茨城)はどう違うのですか。背後にすぐ高地があるのと平野の違いなのですか。
A52:バックビルディングは線状降水帯を形成するメカニズムの一つです。線状降水帯はさまざまなメカニズムで形成されますが、降水帯の上流側に次々と積乱雲が発生して線状になるというメカニズムがバックビルディングです。広島豪雨(2014年)も2015年の関東・東北豪雨も線状降水帯ですが、スケールもその形成メカニズムも異なっています。山地や平野の地形はある程度関係するかもしれませんが、これらの場合は本質的な原因ではありません。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q53:局所的な気象シミュレーションを行うとき、(例えば日本周辺)、端の条件(境界条件)はどうしているのでしょうか。(日本周辺のシミュレーションを行う場合でも、世界全体の条件が必要ではないですか)
A53:局地的、あるいは地球の一部の領域のシミュレーションを行うときは、地球全体のシミュレーションやデータ解析から与えられるデータを、側面の境界条件を与えます。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q54:なぜ、海面温度上昇が台風の強度の増大につながるのですか。
A54:難しいご質問ですが、基本的な点についてお答えします。台風のエネルギー源は、海から蒸発する水蒸気です。気象学では水蒸気を熱エネルギーと等価に考えます。海面水温が高いほどよりたくさんの水蒸気が発生します。その結果、台風はより多くのエネルギーを得ることができ、より強い台風になることができます。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q55:今から100年前(例えば)の気象を計算で再現するための初期値と、今、一般的に気象予想に使う初期値に大きな違いはあるのか。計算精度を向上するには、人間の生産活動の影響がより大きくなってくるのでは。
A55:過去にさかのぼるほど観測データが急速に減少します。このため初期値の精度は時代をさかのぼるほど精度が悪くなります。現実的には60年ほどさかのぼるのが限界と思います。より局地的な予報には人間活動による排熱などを考慮する必要があります。また、人間の排出する二酸化炭素は気候に大きく影響しています。地球温暖化というもので、将来の気候予測にはこの効果を考慮することは不可欠です。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q56:1959年の伊勢湾台風のシミュレーションがきめ細かく再現されていたのに驚きました。もとになるデータはどのように得られたのでしょうか。
A56:当時のデータは日本だけでは数が少ないですが、地球全体では多数あります。それらを全球の数値モデルに取り込むことで当時の地球全体の気象を再現することができます。その再現データを伊勢湾台風のシミュレーションのデータに与えます。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q57:

  • ひまわり8号が運用がはじまりましたが、次期運用の予定の開発計画など教えてください。また、ひまわり10号・11号の計画はあるのか、どのようなものか。
  • これからの天気予報はどこまでわかるのか。

A57:ひまわり8号のような衛星は気象予測に不可欠です。その観測技術は年々高度になってきています。今後、8号の後継機にはさらに高度な観測装置が付けられると思います。そのような観測の高度化、気象シミュレーションの高度化が絶えざる努力によって行われています。天気予報はそのようにして段々とよくなっていきます。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)

Q58:戦争の研究は可能ですか?開戦やその予防法について。
A58:戦争に関する研究の専門家は多数いらっしゃいますが、私はその辺りの知識はありません。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q59:ビッグデータより数理モデルを作り、経済の追究を行うとのこと、素晴らしいと思う。ただ、多くの人がそのモデルを用いることにより市場の動向は、また変わってくるのではないか?
A59:市場のモデルに従う人が増えると市場の状態が変化しますので、おっしゃるように市場の動向は変わっていくと思います。市場のモデルは、常に、現時点での市場参加者の状態を反映するような形になっていくと思います。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q60:今後の為替(円⇔ドル)の予測はいかがなものでしょうか。
A60:為替は非常にデリケートにニュースや市場の内的な状態の変化に反応しますので、長期的な上がり下がりを予測するのは非常に困難です。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q61:ビッグデータとは、どれくらいの量からそのような名前が付いたのですか。
ビッグデータはいつごろからいうようになりましたか。
A61:ビッグデータという言葉が使われるようになったのは、この数年ですが、明確な定義はなく、どれくらいの量をビッグとよぶかも人によって様々です。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q62:ご講演で用いられた資料の中で、出てきた数式や参考文献のリストはどこかで参照可能でしょうか。
A62:東工大の高安研究室のホームページには関連する文献のリストが掲載されています。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q63:経済物理学のモデルは、人間の行動モデルということですが、このようなモデルになる人間が持っている原因は何になるのでしょうか。
A63:金融市場に関して言えば、安く買って高く売って利益を得ること、市場価格が連続的に上昇したような場合に、そのトレンドを追随するような行動は、普遍的で基本的であると考えます。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q64:人間の行動と経済活動の関連があるのなら、人間の行動と脳(生物としての生き方)のつながりから、生物の行動と行動を説明するモデルの可能性はあるのか。
A64:将来的には、そのようなアプローチが可能になるのではないかと思いますが、現時点では、そこまでには至っていません。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q65:"トレンド"は、どのように見極めるのでしょうか。
A65:ディーラーモデルでは、現時点から数秒から数分程度遡った時間の平均的な価格の上昇や下降の傾きをトレンドと定義します。現実には、ディーラーひとりひとり、トレンドの定義は異なる可能性があります。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q66:だれもがビッグデータを利用して、理想の予想を行ったら、将来的に投資などで、始まった瞬間に結果(倒産or発展)が決まってしまうような事にはならないのですか。
A66:未来の予想は一つではなく、確率的に複数の予想が出てきます。未来が決定論的に一つに決まるということはありません。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q67:データは集められるようになったとして、肝心のモデル、アルゴリズムはやはりヒラメキなのでしょうか。物理・化学モデルは身近に実験してそれなりにモデルをイメージするが、それより難しい気がするので。
A67:数理モデルを作るには人間の直観が必要で、それを代替できるような人工知能は、まだ存在しません。人間は全く違うように見える現象の中に共通する特性を見つけたりできますが、それがモデル構築でも重要です。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q68:本日は経済学がメインでしたが、災害などの避難などの応用と、また、博物館などの「アーカイブス」の応用など、また、私が動物園でボランティアをしていますが、何か動物園や植物園でクラウドコンピューティングを用いての何らかのアイデアはありますか。
A68:沢山のセンサーを設置して農業をデータサイエンスでアプローチするような研究がありますが、そのような研究は、関連があると思います。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)

Q69:プラズマを閉じ込めるのに「ひねった」コイルが日本で考案されたというお話に興味を持ちました。このアイデアはどのようにして生まれたのですか。
A69:イオンや電子といった荷電粒子が磁力線に巻きつく性質を利用して、ドーナツ状の磁力線でプラズマを閉じ込めますが、実はそれだけですと電気的符号が反対のイオンと電子が上下に分かれてしまいます。そこで、コイルをひねってやることで、分かれたイオンと電子が再び混ぜ合わさるようなねじれた磁力線の籠を実現しています。京都大学で考案されたこのアイデアが目論み通りに上手くいき、現在の核融合研で実験が進められている大型ヘリカル装置へと繋がっています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q70:プラズマの速度は一定でないのですか。一定なのだとしたら、どのようにしてプラズマをぶつけるのですか。
A70:プラズマを構成するイオンや電子といった荷電粒子の速度はバラつきを持っています。そのバラつきはマクスウェル分布と呼ばれる分布に従っています。その速度のバラつきにより、イオン(原子核)同士の衝突が起こります。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q71:外装の説明を聞きながら、どうしてかたい物質で囲わなくてはいけないかと思いました。水で囲うことはできないのですか。無邪気な質問ですみません。
A71:プラズマは磁力線で閉じ込めるため、その為の硬い金属は確かに必要ありません。しかし、プラズマ状態を作るにはとても密度の薄い真空領域が必要になります。その真空領域を作るための容器を堅い金属で作ります。その他にも、磁力線を生み出す超伝導コイルや様々な機器を支える構造材料などとの組み合わせを考えると、金属壁が現在の科学レベルでは妥当な所です。しかし、液体というアイデアも試されつつあります。実際に、プラズマが終端する熱を受ける部分の材料として、タングステンの様な高融点の金属の他に、液体金属の可能性も研究されています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q72:以前、核融合を行うのに、レーザー光線用いる方法があったと思うが、その有効姓はどのようなのか。
A72:高強度レーザーを利用した慣性核融合方式も研究が続けられています。今回紹介しました磁場閉じ込め方式と比べて方式は大きく異なりますが、どちらも相応の課題が残っており現在も競争が続いているところです。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q73:核融合による発電はいつ頃可能になるのか。(現在の原子力発電に替わって)
A73:順調に行ったとして、約30年後に発電の為の実証炉(DEMO炉)の運転が行われると言われています。既にその為の設計活動などが始まっていますが、設計に10~20年、建設に10年以上かかると言われています。既存の技術にまだまだ多くの課題が残っています。プラズマ物理だけでなく、材料物理、化学、工学、場合によっては建築技術まで総合的に技術向上させなければなりません。おそらくこれまでに人類が作ったことの無い高度な技術レベルを集積した装置になります。そのため、一人一人の研究者で行えることには限界があることから、我々研究者が相互に協力して挑戦しています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q74:太陽の核融合は、中心核のみで行われていますか。
A74:その通りです。核融合を起こすために高温と高密度が必要なため、恒星の中心付近でしか核融合反応は起こらないと考えられています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q75:中性子に強い(耐性)物質について教えてください。原子力発電や、宇宙ロケットに使う素材では、まったく歯がたちませんか。
A75:原子力分野とは古くから技術交流が行われており、材料の中性子耐性に関しても原子力工学の知見が生かされています。一方で、原子力発電(核分裂)で発生する中性子に比べて、核融合反応で発生する中性子はエネルギーが高いです。そのため、将来の発電炉として数十年といった長期間の運転をすることを考慮して、より中性子耐性の高い材料の開発を進めており、見通しが立ってきました。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q76:核融合の課題がよくわかりました。パネル展示では、核融合は安全と書かれていましたが、プラズマによる金属の劣化など、とても安全には思えません。どうして安全なのか教えてください。
A76:私個人の意見としては、安易に「安全」と謳うことはしたくありません。一方で、核分裂である原子力発電に比べてかなり「安全」という言い方はすることがあります。その「安全」の意味は、「高レベル放射性物質を利用・排出しない」ということです。
噛み砕いて言いますと、高レベル放射性物質とは原子炉の燃料棒にあたります。原子炉の燃料棒では、核分裂反応を起こすウラン等を濃縮することで、核分裂反応の連鎖反応を起こしてエネルギーを取り出します。そして発電時には、連鎖反応を起こすほどに濃縮された燃料棒の間に制御棒を挿入するなどして、連鎖反応を抑制することでコントロールします。何かのトラブルで連鎖反応の抑制ができなくなれば、暴走し重大な事故に繋がる可能性があります。
一方で、このようなウラン等を使わない磁場閉じ込め型核融合では、そもそもプラズマの密度が空気中の気体と比べても5~6桁も低く、連鎖反応を起こしません。プラズマの温度は高いのですが、このように希薄なため、真空容器の壁に触っても溶かすことはなく、逆にプラズマは消えてしまいます。大きな装置はプラズマ状態(電離した状態)の維持に必要なものであり、トラブルの際にもプラズマが消えてしまう(気体に戻ってしまう)だけです。仮に真空容器に穴が開いても、容器内の真空に外から空気が流れ込み、やはりプラズマが消えるだけです。この意味で、原子力発電に比べてはるかに「安全」です。
核融合では、燃料となる水素同位体や核融合反応による中性子の発生、周りの物質の放射化など、低レベル放射性物質が利用・生成されます。しかし、これらは人類の技術レベルで管理できるため、より高い安全を目指して世界中で研究を続けています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q77:重水素と三重水素が融合し、中性子を放出する核融合の例がありましたが、重水素2つでヘリウムができるような融合はできないのですか。これなら、中性子が放出されず安全な核融合になると思うのですが。水素+三重水素についてもできないのですか。
A77:ご指摘の通り、重水素二つでも核融合反応は起こります。ただし、その場合に発生するのは、ヘリウム3と中性子となる場合と、三重水素と軽水素(ふつうの水素)となる場合の二通りがあります。中性子を生み出さないのが目的なら、重水素とヘリウム3からヘリウム4になる核融合反応というものもあります。他にもさまざまな候補が考えられます。
これらの中でなぜ重水素と三重水素の反応をITERやDEMO炉等で採用するかと言いますと、単純に核融合反応率が高い為です。その他の反応を起こすには、もっともっと高温・高密度のプラズマを作らねばならず、現在の技術レベルからはまだ難しい状況です。
私の好きなガンダムのエンジンは設定上この反応ですが、現実的にはヘリウム3をどこから調達するかという課題もあります。プラズマ制御技術だけでなく人類全体の技術レベルが進めば、理想的な組み合わせの核融合反応で発電できる日が来るかもしれません。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)

Q78:学習を取得したあと。コンピュータはその行動を確定しつづけるものですか。何回か繰り返して、それが劣化したり、変容する可能性はありますか。
A78:デジタルなコンピューターが学習した結果は、しだいに劣化するということはありません。ただし、ロボットの機械特性は温度や摩耗などでしだいに変わるので、学習した結果を固定したままではうまく動かなくなることが普通で、学習を続けていく必要があります。
(回答者:沖縄科学技術大学院大学・銅谷賢治 教授)

Q79:脳のはたらきにはセロトニンが重要な役割をしているが、これに焦点をあてて、回路を考えてみることはどうであろうか。
A79:セロトニンニューロンは脳のさまざまな部位に出力を送っていますが、そのどの部分があきらめる/あきらめないの制御にかかわっているのか、また背側縫線核へのさまざまな入力のうちどれがセロトニンニューロンの発火を高めているのか、その神経回路のしくみについて現在さらに研究を進めているところです。
(回答者:沖縄科学技術大学院大学・銅谷賢治 教授)

Q80:クオリアなどは、シミュレートできるのですか。また、ロボットが報酬を報酬と感じているのは、感情ということですか。
A80:センサ入力をもとに、外界で起こっていることを「シミュレーション」で再現することで理解することは、計算機にも可能です。これは「意識」が行っていることと同じだとも考えられますが、それを「クオリア」と呼ぶかどうかは人によります。
ロボットの強化学習プログラムでは、報酬信号は、その直前の状態や行動を再現する確率を高めるという働きをするだけです。それを見ていると、報酬が「好き」、「欲しがってる」と思えることもありますが、それを「感情」と呼ぶかどうかはあなたしだいです。
(回答者:沖縄科学技術大学院大学・銅谷賢治 教授)

Q81:報酬、罰はどう与えるかわからない(ロボットに)
A81:ロボットに行わせたい目標を達成したら、あるいは近づいたらプラスになり、やってほしくない、あるいはムダな行動をしたらマイナスになる信号を、センサ情報などから計算するプログラムを書けば良いのですが、そのさじ加減は、講演のなかでも述べたかと思いますが、一筋縄ではいかないことも多いです。これは子育てや学生の指導が簡単ではないのと一緒で、学ばせながら自分も学ぶことが必要です。
(回答者:沖縄科学技術大学院大学・銅谷賢治 教授)

Q82:人工知能AIについて、最新の知見を知りたい。
A82:最近いろいろな解説書が出ています。例えば、
松尾豊:人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングの先にあるもの.角川EPUB選書,2015.
などがあります。
(回答者:沖縄科学技術大学院大学・銅谷賢治 教授)

Q83:天文学・気象学などのシミュレーションをするために大切なスーパーコンピュータの「京」に次ぐものの次世代スーパーコンピューターの開発のことを教えてください。政府に対して、どのようにアプローチしているのか。
A83:自然は複雑で、無限の自由度を有しています。シミュレーションはその近似と行われています。このため「京」を超えてさらに高速で大規模なコンピュータが天文学や気象学の発展には不可欠です。現在、ポスト京コンピュータとして、京の100倍の計算能力を持つ計算機が計画されています。おそらくその後もさらに計算機の高速化・大規模化が必要となるでしょう。
(回答者:名古屋大学・坪木和久 教授)
私はあまり詳しくは存じませんが、スパコンを使って研究をしている人たちが、さらに高性能のコンピュータがあると、このようなことが可能となる、というようなことを示し、必要性を議論しているようです。
(回答者:東京工業大学・高安美佐子 准教授)
既に京の次となる次世代スーパーコンピューターの開発がスタートしています。
(回答者:自然科学研究機構核融合科学研究所・伊藤篤史 准教授)