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第21回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第21回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第21回自然科学研究機構シンポジウム
「地球にやさしいエネルギーの未来」
(2016年10月10日開催)
講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者からの回答です。


※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。

Q1:NPQの発動条件は光の波長とその先の光量にあると伺いました。非常に良く似た話として光電効果が挙げられると思いますが、そちらのほうでは反応の鍵は波長にのみ依存していると学びました。やはり2つの反応には大きな差があるのでしょうか。
A1: NPQの発動は、まず光の波長と光量に依存してLHCSR3遺伝子の転写が活性化され、LHCSR3タンパク質の合成がなされます。その上に光量に依存したチラコイド膜内部の酸性化が加わることによってNPQ状態が作り出されます。一方の光電効果は金属等の表面に光が当たることにより電子が放出される現象を言います。これは、言われるようにその光が一定以上のエネルギー(一定以下の波長)を持ちさえすれば起こります。2つの反応には大きな差があると言わざるを得ません。
(回答者:基礎生物学研究所・皆川純 教授)

Q2: 反応の流れの中でサイクルが生まれていることがあると伺いました。電池などであればネガティブな反応ですが、生物にとっては違うのでしょうか
A2: 電子の流れが環状に(サイクリック)なることがある、との話のことだと思います。ネガティブと言うか、非生産的な反応に見えたことと思います。電池の場合に+極とー極をただ電線でつなぐと電池がショートして仕事をせずに容量がなくなってしまうことが思い出されたようです。このサイクリック電子伝達は面白いもので、発見された当時は確かに非生産的な反応であると思われていました。しかし、実は電子の流れだけから言えば非生産的なのですが、電子がぐるぐる回ることで、チラコイド膜の内部が酸性化するのです。この酸性化が光合成のブレーキ反応であるNPQを引き起こすことがわかっていますから、このサイクリック電子伝達は生物にとってはとても重要な反応です。
(回答者:基礎生物学研究所・皆川純 教授)

Q3: 光阻害を防止するNPQ、トリガーが赤い光、青い光ということですが、近年のLEDライトは、波長の短いブルーライトが多いと言われています。LEDが増えたことで植物の育成に影響はあるのでしょうか。
A3: 面白い発想だと思います。屋外はともかく、室内で植物を育てる際に青いLEDを多用することになれば、何らかの影響は必ず出ます。ただ、植物の成長は光合成活性だけが決めているわけではありません。赤い色を吸収するフィトクロムという分子がありますが、これも光合成活動の開始には必要です。青と赤をLEDによってバランス良く当てれば太陽光などの白色光の代わりにすることができ、これはすでに植物工場などでは使われています。電気代を節約することができる、電灯のように熱を発することはない、などの理由で好まれているようです。
(回答者:基礎生物学研究所・皆川純 教授)

Q4: 光合成からは少しズレた質問になります。"共生からいづれ完全に取り込む"という話がありましたが、これは遺伝子レベルで完全にとっ融合、取り込むのでしょうか。動物におけるミトコンドリアなどもかつては共生だったのではとの話を聞いたことがあります。これらも現時点では遺伝子レベルで融合されているのでしょうか。
A4: 遺伝子レベルでの融合があると、もはや異生物が共生しているとは言わず、融合した新しい生物となります。遺伝子が親細胞の方に融合されてしまうと、子細胞はもはや単独では生きていけませんから。今の植物細胞の中にある葉緑体は、この状態になっているわけです。ただ、全ての子細胞の遺伝子が親細胞に移ってしまったわけではなく、もっとも重要な数十の遺伝子は葉緑体の染色体に残っており、それが逆に大昔は独立した生物であった名残りであると考えられています。ミトコンドリアも同じ状況です。多くの遺伝子は親細胞に融合されてしまいましたが、少し残っています。
(回答者:基礎生物学研究所・皆川純 教授)

Q5: 電力の有効な活用のためには発電と合わせて蓄電技術の発展が必要と考えますが、本日の講演中ではありませんでした。 以前から期待されている「キャパシタ」の技術開発は今どの程度まで進んでいるのでしょうか?
A5: 電気2重層やコンデンサを利用する蓄電技術は,無停電電源等に実用化されていますし,現在も開発が進められています。リチウムイオン電池などの二次電池に比べるとエネルギー密度が低い欠点がありますが,電力貯蔵用としての期待は依然として高いと考えられます。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q6: 廃棄物とリチウムの処理について国から分かりやすく説明することやってください。核分裂と全く違うことを明確にしていく努力を早くから行ってください。
A6: 核融合科学研究所では、国民に広く核融合を理解していただくための広報活動を精力的に行っています。これからも継続していく予定です。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q7: 設備の償却を考えると入力:出力比がどこまで向上したら元がとれる(実用化)ようになりますか?
A7: 核融合発電は,発電容量当たりの建設費が高いと予想されますが,燃料コストは安いので,減価償却期間を30年程度と長くすることにより競争力のある発電単価を達成できると考えています。出力比よりも実質発電量が重要と思われます。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q8: 核融合発電が実用化される頃には核融合以外の方法でエネルギー問題が解決されていませんか?
A8: 少なくとも現時点で大電力を安定に供給できる発電方法は核融合以外にはないと考えられます。核融合炉の早期実現に向けて精力的に技術開発を進めていきたいと考えています。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q9: 先日、「もんじゅ」に関するTV報道でコメンテーターの一人が「ITERに消極的になってきている国がある」と言っていました。各国の関係協力は大丈夫でしょうか。
A9: ITER計画はEU、米、日本、ロシア、中国、韓国、インドの7極の国際協力のもとに進められ、ITER機構が全体のとりまとめを行っています。原子力政策は国によって異なりますが、ITER計画について消極的になっている国はないと認識しています。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q10: 核融合研究はもっと多くの予算をかければもっと早く進むのでしょうか?科学的、技術的な問題でこれ以上は早く進まない性質の事なのでしょうか。
A10: もちろん予算をかければ原型炉における発電実証がもっと早く行えますし、早期に商用炉の見通しをつけることができます。原型炉開発に向けては、段階を踏んで解決しなければならない課題があり、課題を完全に解決するには時間をかける必要があります。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q11: 燃料に関して。無尽蔵との事ですが、Li6の量には課題ありと聞いたことがありますが、いずれはローロ反応を目指すのでしょうか。
A11: 三重水素の生成はLi6とLi7の両方を用いますが、Li6とLi7では中性子のエネルギーによって三重水素の生成効率が異なります。Li7は天然中に93%存在しますが、Li6は7%程度しかありませんので、三重水素を効率よく生成するために濃縮する研究が進められています。
(回答者:核融合科学研究所・榊原悟 教授)

Q12: 熱水海水燃料電池発電で水しかできないとのことでしたが、H2S等はどこに行くのですか?
A12:講演では、H2(水素)とO2(酸素)の例を用いて燃料電池について説明しましたが、熱水環境ではH2だけではなくH2S(硫化水素)も利用されます。H2Sは、酸化されてS(硫黄)になります。この自然硫黄ができる反応は、自然環境中でも起きている反応で、実際に海底熱水噴出孔付近ではよく自然硫黄の黄色い結晶が見られます。燃料電池として利用する場合には、自然に起きている反応の中から電気エネルギーだけを引き抜けるということになります。
(回答者:海洋研究開発機構・眞壁明子 特任技術副主任)

Q13: 今回の講演内容(ご研究内容)は酸化反応側のものでしたが、還元反応側について、今後の見通しや、見解、知見等があればよろしくお願いいたします。(最終的に炭素循環を達成するには還元反応側が重要化と思いますので)
A13: 二酸化炭素を還元して一酸化炭素やギ酸を作る反応はこれまでにも多く報告されています。これらの生成物は二酸化炭素の2電子還元体に対応しますが、我々は現在、二酸化炭素の6電子還元体であるメタノールや4電子還元体であるホルムアルデヒドなどを直接合成することができる触媒が開発できないかと、日々研究に励んでいます。
(回答者:分子科学研究所・正岡重行 准教授)

Q14: 複数の触媒を複合的に利用することで同様な反応を引き起こすことは可能でしょうか。皆川先生の発表で出ていた光化学系1、2の様な反応機構を電気化学的なアプローチで発現してみたらおもしろいと感じました
A14: いくつかの触媒系を複合的に利用してより高度な反応を引き起こすことは可能です。しかし、今回紹介させていただいた鉄錯体の系では、まだそのような高機能触媒システムは作り出せていません。現在、光増感作用および還元反応触媒との複合化を目指し、研究を進めているところです。
(回答者:分子科学研究所・正岡重行 准教授)