情報公開
兼業・兼職 プライバシーポリシー 調達情報(事務局) 機関別の調達情報 企画競争を前提とする公募 意見招請 随意契約事前確認公募 事務局職員採用情報 よくある質問(FAQ) 労働施策総合推進法に基づく中途採用比率の公表

イベント情報

自然科学研究機構シンポジウム

第24回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

極限環境における生命 ~生命創成の探究に向けて~
(2017年9月18日開催)

講演者への質問とその回答

当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者からの回答です。


※頂戴した質問の中には、一部回答できないものがございました。ご容赦をお願いします。


クマムシはどのようにして生と死のはざまを生きるか(慶應義塾大学 荒川先生)

Q1:「生きている」というのはどういう状態なのですか?定義は?
 A.エネルギー、物質代謝をしていない事?
 B.生体反応を示さない事?
 C.タンパク質が動けない事?
A1:質問とA-C項目が矛盾しているように見えます。生きている状態とは、代謝などの化学反応が動き、「負のエントロピー」を食べている状態、ホメオスタシスが稼働している状態であると考えています。 乾眠は「生きている」でも「死んでいる」でもない第三の生命状態で、活動は全くありませんが、(給水によって)生命活動を再開できる、生物としてのポテンシャルを維持している静的状態です。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q2:クマムシは乾眠状態で何年ぐらいもつのですか?また、クマムシの寿命はどれくらいですか?
A2:活動状態のクマムシの寿命は数ヶ月です。乾眠状態では、風化を防げる状態(凍結・真空など)では半永久的に保つと考えられますが、通常の大気では酸素の影響で次第に酸化・風化します。 論文に記載があるデータとしては、常温で数年、凍結で数十年という記録があります。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q3:宇宙旅行のための飛行士保存や卵子・精子の常温保存に役立つのですか?
A3:乾眠を人間にただちに応用するには倫理的問題がありますし、関与している遺伝子も多いので直ちに役に立つものではありませんが、将来的には卵子や精子、iPS細胞などの保存には応用可能な知見が多々あると思われます。倫理的な問題がより軽微なワクチンや食品の保存や輸送という意味ではもう少し早い段階の応用も考えられるかと思います。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q4:クマムシはどのような時に卵を産むのでしょうか?
A4:雌雄異体のクマムシは、交尾後比較的速やかに産卵します。ヨコヅナクマムシなどのクマムシは雌しかおらず単為生殖ですが、これらのクマムシはおおよそ脱皮のタイミングで産卵するものが多いです。脱皮のタイミングは約1週間おきですが、乾燥すると脱皮しやすくなるようにも見えます。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q5:乾眠状態と死んだ状態との違いは何でしょうか?
A5:死んだ状態は、不可逆な生の終結です。死んでしまうと生き返ることはありません。乾眠は、生命活動を停止していますが、給水によって生命活動を再開できます。この可逆性が違いです。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q6:風化=マクロな破壊:と理解しています(肢レベルの欠損等)。その意味で、クマムシはどの程度の欠損まで耐えて生命活動を維持できるのでしょうか?
A6:風化は必ずしも特定部位に限定されるわけでなく、待機中ですと酸素が少しずつ全体を蝕みます。基本的には酸素に接している表面は万遍なくダメージをうけます。クマムシがどこまで生命活動を維持できるのか、についてはまさに今我々が定量しようとしているところです。もう数年我々の研究の進捗をお待ちください。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q7:クマムシにはどんな種類があり、それぞれどんな特徴があるのか(形態や生息場所など)を知りたいです。街中のコケの中にいるのはどんな種類が多いのでしょうか?
A7:現在記載されているクマムシは約1200種類あり、独自の「門」を形成します。大きく3つの綱に分類され、ヒゲのようなものが生えた異クマムシ(トゲクマムシの仲間)と、そういった突起がなくツルツルした真クマムシ(ヨコヅナクマムシなどはこのグループ)、さらに、それらの中間形質を持つとされながらも存在が謎に包まれている中クマムシ(オンセンクマムシ)に大別されます。一般的に、海のクマムシは異クマムシが多く、陸生のものは真クマムシが多いです。都市部のコケですと、チョウメイムシやオニクマムシが多く、稀にニホントゲクマムシなどのトゲクマムシが見つかります。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q8:クマムシが真空中で生存できるメカニズムとして、粘液で体を覆っているとの記事を読んだことがあります。このメカニズム詳細について教えてください。
A8:おそらくその記事は誤りです。乾眠状態のクマムシは水がなく生命活動を停止しているため、呼吸もしておらず、圧力により膨張もないため、そのまま真空に耐えます。「粘液」というからには水を含みますが、乾眠状態では水が失われているためそのようなものはありません。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q9:放射線の影響を受けにくいとの話でしたが、DNAの構造(単純だから?)にその理由を求めることができるのでしょうか?
A9:いえ、DNAはそれほど特殊な形状・配列ではありません。クマムシの放射線耐性は、優れた防御と修復の両方によって培われています。防御に関してはDsupなどのDNAを保護するタンパクが作用し、修復に関してはまだ全体像はわかっていませんが、高い修復能力を獲得していることは確かです。実際、ヨコヅナクマムシは乾眠状態よりも活動状態の方が放射線耐性が高く、これはDNA修復経路が動いていることによるものです(乾眠時は酵素反応が起き得ないため、防護のみが機能して修復作用は動かない)。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q10:クマムシの持っているタンパク質で、具体的に人体や他の生物への応用が可能となるのでしょうか?
A10:Dsupに関しては他の生物に放射線耐性を持たせることがすぐにでも可能です。人体への応用という意味ではそもそも他の生物の遺伝子を導入するという倫理的課題があります。他にも乾燥耐性を向上させることで、医薬品や細胞などを保存する上で将来的には応用が期待できることもあると思われます。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q11:クマムシの水の応答を決める要因はなんでしょうか?
A11:質問の内容が広く、どの点を意図されているか良くわかりませんが、クマムシがどのように乾燥を察知しているか、というご質問だと判断します。クマムシの乾燥センサーは現状未解明です。おそらく周辺の水が減り始めることによって濃縮される分子(イオンなど)の濃度変化を察知しているのだと思われます。ドゥジャルダンヤマクマムシでは乾燥を察知して必要な遺伝子を発現させますので、そのようなセンサーの存在は間違いないと思われます。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q12:研究用のクマムシの飼い方はどのようにするのですか?
A12:イオン組成を調整した寒天ゲル上で、クマムシと少量の水とエサ(我々が飼育している多くの種は主にクロレラ)を与え、最適な温度(これは種によって変わります)で恒暗条件で飼育します。培地は1週間ほどで劣化するため、毎週交換し、そのタイミングで餌もあらたに与えます。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q13:死なない、死ににくいとしたら、これが毒性や攻撃性を持ったら大変だと思いますが、その可能性および対策はありますか?
A13:クマムシは乾眠状態でどのような環境にも耐えられるだけであって、活動状態では非常に脆弱です。ちょっとした環境の変化でもすぐに弱ってしまい、よって飼育が非常に困難です。一方、乾眠状態ではおおよそ何をしても死にませんが、この状態では生命活動がないため、動けません。よって、攻撃などを行うことができません。つまり、大変無害な生物ですのでご安心ください。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q14:クマムシを乾眠(水分2~3%)の状態にするのに要する時間のグラフで、その時の環境(温度)は常温下ですか?それとも熱を使いますか?
A14:こちらは常温(25℃)のデータです。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)
Q15:クマムシはどうやって水分1%の状態にするのかですか?
A15:クマムシは非常に小さく、厚みもほとんどないため、自然乾燥でもそれなりに水分を失いますが、加えて
1. 樽(tun)状態を形成する過程で筋肉を使って体を縮ませ排水を促す
2. アクアポリンなどのタンパクを用いて能動的に水を細胞外へ排出する
機構の存在が示唆されています。
(回答者:慶應義塾大学 荒川先生)

極限環境微生物が支えるバイオテクノロジー(九州大学 石野先生)

Q16:DNAやRNA、DNA酵素は何℃まで耐えられるのですか?
A16:DNA、RNA、酵素(タンパク質)を構成している化学物質は、それぞれがひものような長い高分子です。溶液のpHが適切なら100˚Cでもひもが切れるような分解は受けません。しかし働くときにはDNAは二重らせん構造になり、これは温度を上げていくと一本ずつにほどけます。二本鎖の長さにもよりますが、50℃でも部分的に解けますし、100˚Cになればほとんどが解けて一本鎖になります。RNAは元々一本鎖ですが、tRNAは折り畳まれて特定の構造をとっているので、温度を上げていくとほぐれて本来の働きができなくなります。生物の細胞内ではDNAやRNAの構造を維持できるように助ける物質やタンパク質があるので、100℃以上でも生きていられる微生物がいます。その詳細なしくみはまだわかっていません。DNAに作用する酵素はタンパク質で、長い鎖が折り畳まれて特定の構造をとって働きます。これも温度を上げていくとほどけてしまい働かなくなります。超好熱菌が持っているタンパク質は100˚Cでも耐えられますが、ヒト由来のタンパク質はたいてい50℃以上で不可逆的に構造が壊れて変性してしまいます。耐熱性にこれほど大きな違いがある理由はまだ詳しくはわかっていません。
(回答者:九州大学 石野先生)
Q17:PCRでどうしてDNAや酵素のもとの量が分かるのですか?
A17:定量PCRで絶対定量する場合は、配列が同じで量がわかっている標準試料を使います。様々な量の標準試料を未知試料と同時に同じ条件で反応して、「増幅したDNA量が一定の数値に達したときの反応サイクル数」を計測し検量線を作り、濃度未知の試料から得られた数値をあてはめて元の量を推定します。元の量が多いほど少ないサイクル数で増幅DNA量が一定の数値に達します。酵素はタンパク質なのでPCRでは定量できません。
(回答者:九州大学 石野先生)
Q18:PCNAクランプの構造は結晶化しますか?結晶化しない場合、どのようにタンパク質の構造を同定するのですか?
A18:生物の3ドメインそれぞれにクランプの結晶構造が解析されています。真核生物(ヒト、酵母、シロイヌナズナなど)、アーキア、大腸菌(βクランプという名前)などの立体構造がデータベース(PDB)に登録されています。結晶化しないタンパク質では、電子顕微鏡(今年のノーベル化学賞)、NMR(2002年ノーベル化学賞)が、タンパク質の構造解析の手法として用いられており、これらは原子の位置までわかるような解析法として発展を続けています。
(回答者:九州大学 石野先生)
Q19:新しく発見された微生物から、DNAポリメラーゼとして製品化されるまで、おおよそどれくらいの期間がかかるのでしょうか?
A19:遺伝子クローニング技術や組換え蛋白質産生技術が発達しているので、うまくいけば1週間〜1ヶ月でDNAポリメラーゼの評価実験ができます。DNAポリメラーゼの応用範囲が広いので、万能なものはなく、それぞれの用途に特化した性能を調べていく必要があります。市場にはすでに様々な製品が出回っており、それらを大きく上回る性能を持つものを見出すのは難しいです。遺伝子の配列情報からタンパク質(DNAポリメラーゼ)の性質を詳細に推定するのはまだまだ難しく、実験をしてみないと性能はわかりません。
(回答者:九州大学 石野先生)
Q20:北極と南極の両方で生きる微生物はありますか?
A20:私は微生物生態学の専門ではないのですが、遺伝子解析の観点から、このご質問と同様の興味があります。単離や培養ができない微生物でも、土や水の中の微生物を集合体として遺伝子群を解析する手法(メタゲノム解析)が多く用いられるようになってきました。北極や南極には低温と組み合わさって多種多様な環境(栄養、水分、塩分、pH、紫外線等)があり、生息していると推定される微生物にも多様性があり、驚くほどの生命が極地の環境に適応して育っているようです。遺伝子の配列を基にグループ分けすると、同じグループに分類される微生物が北極にも南極にもいます。もっと細分類されたレベルでどれくらい同一の微生物が見つかっているのか私にはわかりませんが、よく似た環境なら同じような進化をして適応した微生物がいるのではないかと思います。
(回答者:九州大学 石野先生)

南極湖沼生態系の実態を探る(情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)

Q21:黒潮のTV番組を見ていたところ、黒潮の海底堆積物の内在藻から2,500年前、6,000年前~4,000年前に海水温が2度以上高かったとのことですが、南極の湖底堆積物から気温の変化やCO2濃度を推定することはできますか?
A21:湖底堆積物からも同様の気候変動シグナルを読み解くことは可能と考えます。ただし、南極の湖沼の成立年代が数千から1万年前程度ですから、それ以降の環境変化を記録したものであるはずです。
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)
Q22:異なる湖の中に存在する『コケボウズ』中の微生物相(シアノバクテリア、バクテリア両方)はおなじなのでしょうか?それとも違うのでしょうか?
A22:存在量や種類構成に関しては異なるのが普通と考えます。ただし、それらは正確にとらえられてはおりません。遺伝子情報などから、コケボウズという微生物集合体には細菌・菌・原生生物・多細胞動物・藻類・コケ類など、見た目以上にきわめて多様な生物が混在しております。
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)
Q23:南極の太陽エネルギー量が東京比マイナス20%とのことですが、可視光・UV・IRの割合もほぼ同一だったのでしょうか?
A23:比較すると、大気が清澄である分、UVの割合が大きいです。東京では太陽放射の5%程度、南極では6%以上とわずかではありますが、紫外線エネルギーのわずかな違いは地表の生き物にとってかなり深刻な問題になりえます。
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)
Q24:紹介された写真等はHP等で拝見可能でしょうか?
A24:はい。自身のHPで公開しております。http://www4.hp-ez.com/hp/sakaekudoh/
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)
Q25:水温上昇は、日照すなわち生命活動の活発化によるものとの理解でよいのでしょうか?
A25:質問の意図が正確につかめませんけれど、凍結した湖沼で水温が上昇する原因は「氷を透過して太陽光エネルギーが湖中に入る」ためです。寒冷な冬でもガラス温室やビニルハウス内が半袖で過ごせるほど温まる現象、と同様です。活発な生命活動による発熱現象(例えば有機物の発酵に伴う熱の発生)をイメージしての質問のようにも見受けられますが、そのような生命現象の関与を考えなくとも、透過して入射する太陽光エネルギー量だけで湖水が温まる現象が説明できます。
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)
Q26:『コケボウズ』を作っているコケについて、もう少し詳しく教えて欲しいです。コケ自体はとりたてて特殊なものではなかったのですか?
A26:コケボウズ中に見つかるコケは2種類あり、そのうちの「ナシゴケ」の仲間が主なものです。南極では昭和基地周辺の湖沼の中でしか、今のところ分布が確認されておりません。もちろん、南極の陸上でも見つかっておりません。遺伝子情報からこの種は南米由来である可能性が指摘され、何らかの方法で昭和基地周辺に湖ができた後に侵入し繁栄できたものだと考えています。
(回答者:情報・システム研究機構 国立極地研究所 工藤先生)

地球生命(圏)の限界探査とその先にある野望(海洋研究開発機構 高井先生)

Q27:AIロボットを発見したら、宇宙生物として認識しますか?
A27:宇宙生物とは思わないでしょうが、生命の定義に従う場合は、人工的な生命としての認識はできると思います。「ルンバ」が自分で材料をかき集めて「ルンバ」を作り出すなら、「ルンバ」こそぐう生命。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q28:電気を喰う生物が電気以外のエネルギーを摂取していない事は証明できましたか?例えば絶縁すると死ぬ、など。
A28:はい。電気無しでは増殖しないことは確認済みです。しかし、いまのところ、電気だけが利用できて、他の化学エネルギーや光エネルギーは利用できない、という微生物は見つかっていません。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q29:研究のアイディア、先生の研究に対する情熱はとてもすごいなと尊敬しています。その原動力はなんでしょうか?
A29:昔は「憤り」や「欲望」というロックンロール魂が情熱のエネルギー源だったのですが、最近は「悟り」を開いてしまってやや純粋な「好奇心」に動かされるようになりました。でもそれでは「つまらない大人」になっちゃうのでこれからもロックンロールで頑張ります。アイデアが無尽蔵に湧いてくるのは、これはもはや「才能」としかいいようがないです。「やはり、天才?」
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q30:エンケラドスに生命がいたとすると、どの様なタイプの微生物だと予想されますか?(好冷菌、好塩菌など)
A30:講演で説明したやろ!低温性から好熱性の水素資化メタン菌と水素資化酢酸菌。それから好冷性の水素酸化鉄還元菌が優占的生命で、おそらくそれによって支えられたかなり多様な従属栄養生命が存在すると予想されます。そして、その量は東京湾の海水の10倍。よー、覚えときや!
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q31:どのような技術でヒトの住む地上まで電気合成エネルギーを持ってくるのか知りたいです。
A31:質問の意図は、「深海発電でできた電気をどのように地上で利用するか?」と言うことだと思います。ふふふ、それは特許申請しているからね。ロイヤリティー料の話し合いが先だ!と言いたいですが、「高井さんとJAMSTECは最高です!」と周辺の10人に吹聴してくれるなら教えてやろう。海底ケーブルで地上に持ち帰って地上で使う案(ただしコストが高い)と海底下の電池に充電して海底での研究や作業(資源開発)に使う地産地消案です。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q32:各外惑星の衛星の微生物総量は電気エネルギー生物の分、若干増えるのでしょうか?数値的には出ない程度のパーセンテージでしょうか?
A32:良いところに気がついたね。現実の生態系では「供給されるエネルギー量」と「実際生命が使うエネルギー量」の間に99%ぐらいのロスがあります。電気合成微生物はこのロスを少しだけ減らすと考えられます。しかし、現時点では効率がクズなので、総量的にはあまり影響はないかもしれません。しかし、総量には影響はないものの、生命が蔓延る空間と時間の広がりは大きく変わりますので、より「生命圏」が広がるので、宇宙における生命の誕生や存続にはとても有利になるでしょう。ずばりそうでしょう。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q33:マッカラム・ショック予想がマッカラム・ショック・タカイ・ヤマモト予想になると、各星や年代の生物量の計算値はどれ位変化するのでしょうか?
A33:これ上の質問とほぼ同じ意味合いですね。上の答えを参照して下さい。マッカラム・ショック予想がマッカラム・ショック・タカイ・ヤマモト予想になると、自分の名前が歴史に残ります。かっこいいじゃないですか。日本人は個人名を出して褒めそやすことはあまりしなくて、またそれを出さないのが美徳だという風潮があるようです。理論や予想や発見には、どんどん研究者の名前を付けて「名誉」と「誇り」と「責任」を背負う・背負わせるべきだと思うんですよね。なので、「アイツは自画自賛マシーン」と罵られながらもいつも私は恥ずかしげもなく自分の研究を褒めますし、他人のイイ研究も絶賛します。同様に自分でも他人でもダメな研究は、ボロクソ言うべきだと。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)
Q34:生命の基となる光合成、化学合成以外に電気合成があることを初めて知りました。更に他の合成はあるのでしょうか?
A34:今のところは見つかっていませんが、いくつか候補はありますよ。私もアイデアはあります。かならずあるはずです。いろいろ考えてみてください。そういう予想論文を書いたら、また皆さんにお話ししたいと思います。
(回答者:海洋研究開発機構 高井先生)

放射線に耐える奇妙な球菌が極限環境で生きる仕組み(東洋大学 鳴海先生)

Q35:DNA鎖が2本とも切断してしまった場合、何をもとに修復するのでしょうか?誤った修復をする可能性はありますか?
A35:デイノコッカスは一つの細胞に複数個のゲノムコピーを持つので、無傷の部分を参考に修復することができます。鎖切断の修復は正確ですが、ヌクレオチドの1塩基レベルでの誤りはそれなりに生じます。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q36:放射線耐性と高温耐性・乾燥耐性の相関関係はあるのでしょうか?
A36:放射線耐性と乾燥耐性は大まかに相関関係がありますが、放射線耐性と高温耐性には相関関係がないようです。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q37:デイノコッカスのDNA修復のしくみを見つけられてから、試薬が製品化されるまで、どれくらいの期間がかかりましたか?
A37:7年位でした。メカニズム解明の基礎研究として始めたので、特許化や技術移転に関する勝手が分からず、時間がかかりました。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q38:デイノコッカスがいろんな所から見つかっていることがとても不思議ですごいなと思います。逆にどのような場所では見つからないのでしょうか?
A38:高度好熱性のサーマスと進化的に近縁なのに、50℃以上の高温環境下で生育できるデイノコッカスはまだ見つかっていません。もしかすると、まだ人が見つけられずにいるだけで、ひっそりと生きているかも知れませんが。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q39:(DNAの)突然変異は人為的に操作可能ですか?
A39:デイノコッカスは外来からDNAを取り込む能力にも優れているので、デイノコッカスのDNAを人為的に操作して変異を導入したり、改変したりすることは比較的簡単に出来ます。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q40:宇宙から帰ってきたデイノコッカスからどんなことが分かったか、その後のお話を伺いたいです。
A40:ありがとうございます。解析が済んだらお話ししたいと思いますので、ご期待ください。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q41:高い放射線環境以外で生きているデイノコッカスが、放射線耐性を持っている理由・メリットは何ですか?
A41:地球上の様々な極限環境で、乾燥や酸化などDNA鎖切断を引き起こすようなストレスに対抗することができるというメリットがあったのでしょう。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)
Q42:デイノコッカスの放射線耐性のメカニズムは、他の生物(クマムシなど)とは違うのでしょうか?
A42:進化的にかけ離れた生物が同じ位に放射線に耐性を持っていることは収斂進化の結果だと考えられるため、メカニズムはおそらく違うと思っています。
(回答者:東洋大学 鳴海先生)