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機構長プレス懇談会

第28回 自然科学研究機構 機構長プレス懇談会 大森賢治

講演3「量子スピード限界で動作する冷却原子型 ・超高速量子コンピュータの開発」



2022年8月9日にプレスリリースされた、「単一原子レベルで世界最速の2量子ビットゲートに成功 - 超高速量子コンピュータ実現へのブレークスルー の記者会見動画です。

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大森 賢治(おおもり けんじ)

自然科学研究機構 分子科学研究所 教授

 

<略 歴>
1987年 東京大学工学部卒業
1992年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・東京大学工学博士
1992年 東北大学 科学計測研究所 助手
2001年 東北大学 多元物質科学研究所 助教授
2003年 - 現在 自然科学研究機構 分子科学研究所 教授
2004年 - 現在 総合研究大学院大学 教授
2007年 - 2010年 分子科学研究所 分子制御レーザー開発研究センター長
2010年 - 現在 分子科学研究所 研究主幹
2015年 - 現在 文部科学省科学技術・学術審議会専門委員 量子科学技術委員会副主査
2019年 内閣官房イノベーション推進室 イノベーション政策強化推進のための有識者会議委員

 

​<講演要旨>

 電子や原子など、量子物理学の法則に従うミクロな粒子の集団的な性質を利用したテクノロジーは「第一次量子革命」として、1940〜1950年代にトランジスタ、コンピュータ、レーザーなどのイノベーションにつながりました。これに対して21世紀は「第二次量子革命」の時代であり、電子や原子など個々の粒子の波の性質を利用した新しい実用デバイスを作り出そうとしています。

 「量子コンピュータ」は、第二次量子革命が到達し得る究極のデバイスです。20世紀初頭の量子物理学の黎明期に主役を果たした中性原子は、この究極デバイスの実現においても最有力候補の一つとして急速に世界の産学官の注目を集めています。通常の室温下で、ほぼ絶対零度までレーザー冷却した中性原子1個1個を光ピンセットで2次元的に配列させた「冷却原子型量子コンピュータ」は、これまでに開発が先行している超伝導型と比べて容易に大規模化が可能な点、および量子の波としての純度が高い点において、従来の限界を打ち破る際立った特徴を有しています。中でも、私たちが独自に考案し開発を進める「超高速量子コンピュータ」は、超高速レーザー技術と量子コンピュータを融合させるという全く新しいコンセプトに基づいた世界初の新技術であり、熾烈な国際競争におけるわが国のコアコンピタンスとして、今後の大規模化・高機能化が大いに期待されています。

 この超高速量子コンピュータの開発において、私たちはつい最近、わずか6.5ナノ秒(ナノ = 10億分の1)で「制御ゲート」(量子コンピュータの根幹をなす基本演算要素)を実行することに成功し、量子力学的なスピードの限界に到達しました。これは、2020年にGoogle AI(米国Google社の人工知能部門)が超伝導型で達成した15ナノ秒を上回る世界最速の制御ゲートです。また、外部環境や操作レーザーに起因するノイズの時間スケールよりも2桁速いので、従来の冷却原子型量子コンピュータに深刻な影響を与えていたこれらのノイズを、ほぼ完全に無視することができます。

 この画期的な成果は、英科学誌Nature Photonics 2022年10月号の表紙を飾ると共に、日米欧中を始めとする世界中の200件以上のニュース報道でハイライトされ、冷却原子型量子コンピュータへの世界的な注目をさらに大きく加速させています。

 

大森ラボ写真

分子研・大森グループ・超高速量子コンピュータ開発サブチームの面々。

 

参加申込書はこちらからダウンロードできます [Wordファイル/90KB]