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イベント情報

自然科学研究機構シンポジウム

第32回自然科学研究機構シンポジウム 講演者 井本 敬二

講演1:「プラズマバイオ概要説明」

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井本 敬二 

自然科学研究機構 理事/新分野創成センター長​

プラズマバイオコンソーシアム世話人

 

□ 講演概要

 プラズマとは、物質が陽イオンと電子に電離した状態であり、固体・液体・気体に続く第4の物質の状態です。プラズマには、電子・陽イオンの両方が高温である高温プラズマと、電子のみが高温である低温プラズマがあります。高温プラズマは、溶接・切断などに利用されているほか、核融合発電を目指した高温プラズマの研究が、日本をはじめ世界中で進められています。一方、低温プラズマは、気体に外部電場や磁場を与えることにより生成されます。気体粒子や陽イオンはほぼ常温ですが、電子は大きなエネルギーを持ち高い反応性を有しています。低温プラズマはVLSI(超大規模集積回路)のナノ加工等で広く用いられています。

 この低温プラズマを動植物に照射してその効果を確かめる「プラズマ+バイオ」研究が、かねてよりさまざまな分野において取り組まれてきました。低温プラズマによってオゾンなどの活性分子種が発生し、殺菌・滅菌などの効果が認められたことに加えて、植物の種子に照射すると発芽・成長を促すらしいことなど、不思議な現象がいろいろとわかってきました。

 しかし、プラズマの発生は周囲の環境(温度、湿度など)に大きく左右されるだけでなく、生物の反応自体にバラツキがあることなどの理由から、再現性の高い実験系を構築することはなかなか容易にはいかない状況でした。文部科学省による新学術領域研究「プラズマ医療科学の創成」(代表 堀 勝 名古屋大学教授,2012~2016年度)以降、プラズマバイオ研究への期待と関心は徐々に高まって参りましたが、上述の理由から、プラズマ基礎科学と生命科学の分野を越えた連携研究によるプラズマバイオの確立は、未だ道半ばにあると言わざるを得ません。

 これらの状況を受け、自然科学研究機構は、分野間連携によるプラズマ照射効果の分子メカニズムの解明を目指し、2018年度に新分野創成センターにプラズマバイオ研究部門を設置するとともに、名古屋大学と九州大学との間でプラズマバイオコンソーシアムを結成しました。さらに2020年度から新たに東北大学が本コンソーシアムに加わり、より大きな規模で日本全国のさまざまな分野に属する研究者らと共に、分野間融合型研究を推進しています。

 コンソーシアムの立ち上げから4年目となる現在、プラズマ効果の基礎的な部分の解明が進み、プラズマバイオ研究分野にはさまざまな可能性の芽が育ちつつあります。例えば、プラズマを細胞へ直接照射、あるいは細胞を培養する溶液へ照射することによる"間接照射"によって、生体にさまざまな効果が生じることが判明しています。さらに部分的ではありますが、その分子メカニズムの解明へ向けた糸口も徐々に見えてきているところです。

 本シンポジウムでは、プラズマバイオ研究の辿ってきた進歩の過程を簡潔に皆様へ紹介させていただきます。プラズマバイオ研究が近い将来、医療・農業などの分野に何らかのインパクトを供するであろうと期待すると共に、分野のさらなる発展へ少なからぬ貢献を果たしていくと確信しています。