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イベント情報

自然科学研究機構シンポジウム

第32回自然科学研究機構シンポジウム 講演者 中村 香江

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中村 香江 

名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター バイオシステム科学部門 特任講師

□ 講演概要

 非平衡(低温)プラズマ生成技術の開発に伴い、プラズマは今日を支える先端科学産業である太陽電池や半導体等の製造工程において必要不可欠な基盤技術として発展してきました。その応用範囲はものづくりにとどまらず、バイオ技術として滅菌や殺菌、さらには止血などの医療装置への応用へと広がってきています。

 近年、医療へのプラズマの応用が盛んに研究されており、様々ながん種に対するがん細胞死滅効果、さらには皮膚疾患や傷病組織の治癒や再生など、先端医療科学技術の分野でプラズマの有効性が示され、「プラズマ医療」の研究が飛躍的に進展してきました。特に、がん治療への臨床応用に向けた研究では、国内外の研究グループから、その有効性が報告されており、それらの多くが、プラズマを腫瘍組織あるいはがん細胞に直接照射することで誘導される抗腫瘍効果を見出しています。

 我々の研究グループは、プラズマを照射した溶液(プラズマ活性液)にも強力な抗腫瘍効果があることを世界に先駆けて実証しました。この抗腫瘍効果の本質は、まだ解明されていない部分が多く残されたままではありますが、反応性の高いプラズマを溶液に照射することにより、活性種を含むプラズマ活性液が生成され、その効果は比較的安定であることから汎用性の高い治療技術となると考えています。

 特に、我々の治療のターゲットである卵巣がんは、自覚症状に乏しく、有効ながんの検診方法も無いため、約半数は腹腔内への転移(腹膜播種)を伴った進行がんとして発見されます。この腹膜播種を制御することができれば、卵巣がんの生命予後の改善が期待できます。腹膜播種のような直接プラズマを照射することが困難な無数に散らばったがんや、目視では確認できない小さながんの播種に対して、このプラズマ活性液が有用な治療ツールとなる可能性を有している、と我々は考えています。

本講演では、プラズマ活性液のがん細胞への効果から、医療応用への一例として卵巣がん腹膜播種治療への可能性について、これまでの知見を元に紹介させていただきます。