イベント情報
自然科学研究機構シンポジウム
第32回自然科学研究機構シンポジウム 講演者 大坪 瑶子
講演3:「酵母で迫るプラズマの謎」
大坪 瑶子
核融合科学研究所/基礎生物学研究所/新分野創成センター 助教
□ 講演概要
生物は、様々な環境の変化に絶えず晒されています。環境変化の多くは生物にとってストレスとなり得ますが、生物には環境変化によって生じるストレスに耐えるための仕組みが備わっています。ストレスに対応する仕組みは、臓器や組織といったレベルだけでなく、私たちの体を構成している一つ一つの細胞にも存在します。私は、ストレスに対する細胞の応答システムに興味を持って大学院生の頃から研究を行ってきました。
ストレス応答システムは、細胞が生存するために欠かせない基本的なシステムの一つです。細胞にとって重要な、このようなシステムは、単細胞生物である酵母から私たちヒトの細胞まで共通している場合が多く見られます。そこで、実験がしやすい酵母を使って研究をして、類似したストレス応答システムがヒトを含むより高等な生物にも存在していないかを調べていくという戦略で研究を進めています。
ストレス応答研究の一環として3年程前から、常温大気圧プラズマを新たなストレス源として用いて、プラズマに対する細胞の応答機構を解明するというプロジェクトに参加しています。近年、医療分野や農業分野で常温大気圧プラズマを使った応用研究が盛んになってきています。しかし、プラズマ照射によって生物にどのような変化が起きているのかといったことを細胞レベル、分子レベルで理解する基礎的な研究は充分には行われていない状況です。
この研究は、生物系の研究者と物理・工学系の研究者が共同して行う異分野融合型の研究プロジェクトで、まず最初は生物実験に適したプラズマ照射装置を開発するところから始まりました。最近になってようやく酵母を用いた分子細胞生物学的な実験も行えるようになってきたところです。
本シンポジウムでは、最新の研究結果をご紹介するとともに、異分野融合型研究ならではの醍醐味や苦労した点などもお話しできたらと思います。