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自然科学研究機構シンポジウム

第32回自然科学研究機構シンポジウム Q&A

第32回自然科学研究機構シンポジウムバナー

Q & A

8月21日(土)に開催した「第32回自然科学研究機構シンポジウム - 生命科学とプラズマ工学がつくる未来 -」(YouTube LIVE、ニコニコ生放送にてオンライン放映)。視聴者の皆様からたくさんの質問が寄せられました!皆さま本当にありがとうございます!

ニコニコ生放送のコメント欄含め、いただきました質問は可能な限りピックアップし、講演者の先生たちから回答をいただきました。皆さまぜひご覧ください。

 

全ての講演者の先生へ宛てた質問

1. 10年後にはご自身の研究成果を実用化(中村先生でしたら実際の治療へ)することが可能になると考えていらっしゃいますか?

佐々木先生:五酸化二窒素生成装置は,数年以内に実用化可能だと考えています。しかし、その場合、化学合成・創薬、有機物分解や殺菌・殺ウイルスを目的としたものになるかと思います。ヒトへの照射は敷居が高く、治療などに使用されるにはもう少し長い年月がかかると予想されます。​

大坪先生:私達の研究は、基礎研究であり、実用化を直接は目指しておりませんが、10年のスパンで考えると、実用につながるような成果もあがることが期待されます。私達が見出した結果が、実用化のための基礎データとして役立っていく可能性も多いにあると考えております。また、今後、応用系の研究者の方々と共同研究も展開して行けたらと思っております。

中村先生:10年後には少なくとも何らかの疾患に対するプラズマ活性溶液による治療を実用化するために研究開発に取り組んでおります。

石橋先生:農業分野へのプラズマ工学の応用は、10年後には実用化ベースにあると考えております。現在、そのメカニズム解明や新たなプラズマの応用展開も積極的に研究されておりますので、その詳細が明らかとなれば、実際の生産現場レベルでの利用も可能になると思っています。

 

Q & A 「プラズマバイオ概要説明」井本敬二先生

1. 医療機関や老人施設などで、プラズマによる寝具や衣類の消毒・滅菌の事例はありますか?事例があれば、課題や色落ちや商品に与えるダメージについてもご教示頂きたいです。

現在、「オゾンガス発生器(アクア株式会社)」など代表的な活性分子種であるオゾンを発生する装置が市販されています。殺菌・ウイルス不活化の目的で、オゾン発生装置よりも強力なプラズマ装置は、現在のところ市販されていないようですが、近い将来、そのような装置が使えるようになることを期待しています。

オゾンやその他の活性分子種は、殺菌・ウイルス不活化などの効果があることが確かめられてきていますが、強力であればあるほど、布地を傷めることになると予想されます。ちょうどよい使い方が開発されるとよいですね。​

 

Q & A 「大気圧空気プラズマを用いた五酸化二窒素の選択合成とその応用展望」​佐々木渉太先生

1. NOXとは何でしょうか?

窒素酸化物の総称です。NxOy等とも表記されます。今回の講演では、主に一酸化窒素(NO)[x = 1],二酸化窒素(NO2)[x = 2]を指します。

 

2. プラズマ発生装置について、発生はコイルなのかコンデンサなのか教えてください。

今回用いている高電圧電源はコイルベースで昇圧したものです.

 

3. オゾンプラズマとNOXプラズマを選択的に生成しておられましたが、具体的に放電条件やガス条件などをどのようにして制御、設計し、目的のプラズマを生成されていらっしゃるのか、回答可能な範囲でご教授ください。

古くから、空気プラズマ中の活性種は、低ガス温度でオゾンが、ガス温度が高くなるにつれて窒素酸化物が主生成物となることは知られていました。[K.H. Becker et al., Non-Equilibrium Air Plasmas at Atmospheric Pressure, CRC Press] そのため、印加電圧を制御(すなわち放電電力を制御)して、プラズマ中のガス温度を所望の温度に設定していきます。また、プラズマ生成法には様々な種類がありますが、今回はプラズマと電極が直接接触しない誘電体バリア放電に拘って設計しました。こうすることで、装置の耐久性を上げることが可能です。

 

4. 非平衡化する方法がよくわかりませんでした。ガスを冷却するような話があったと思いますが、それだけで平衡化できるのでしょうか?そもそも平衡ということは、電子と+イオンの量のことでしょうか。活性種はそれらの電子や+イオンとの作用でできるのでしょうか。

イオンと電子は重さが全く異なります。そのため、同じ力が働いた時、軽い電子はより短時間で加速されます。この時間差を利用すると電子だけ加熱することが可能です。こうして、電子温度は高く、イオン温度(ガス温度)が低い非平衡状態を作り出すことができます。ここでの非平衡化は、イオンと電子の数が違うということではなく、温度が異なることを指しています。

 

Q & A 「酵母で迫るプラズマの謎」大坪瑶子先生

​1. プラズマ照射の距離はどのように決めたのでしょうか?

プラズマプルームといって、紫色の光の先端辺りが当たる方が色々な影響が出やすいと予想されたので、その距離に固定しました。パラメーターが多すぎるのでとりあえず距離を固定しましたが、今後、距離を変えて、どのような影響があるか検討する必要があると考えております。

 

2. プラズマ照射について、強度とか距離ではなく、照射回数を選んだ理由を教えてください。

最後にお話しした、多数回照射を行う実験についてのご質問かと思いますが、この実験は、何世代にもわたってプラズマ照射を繰り返すことで、酵母にゲノムレベルの変化が起きないかを調べる実験です。地球上では、細胞は様々なストレスに世代を超えて何回も晒されて進化してきたと考えられます。

多数回照射はこの状況を仮想的に実験室内で再現できるのではないかと考えてはじめたものです。一回の照射では死滅しない、基本的には何も起こらないような比較的弱い条件にしてあります。それを何世代にもあてるとどうなるか、という実験で、何十回も照射を繰り返していくと、ゲノム内に変異が蓄積されてくるようだということがわかってきました。照射を長時間行うという実験もあると思いますが、長時間当てると、乾燥で死んでしまうので、短時間で何度も当てるということを行っています。

 

3. iPS細胞やES細胞などの幹細胞にこれを用いれば、将来的に発現を操作して望みの器官(組織)を作ることができるようになるのでしょうか?また真菌類だけではなく、ウイルスや細菌にも同様にメチル化によって変異を起こすことは可能でしょうか?照射する対象によって作用に違いはあるのでしょうか?

将来的にはプラズマの照射条件を変えることで、そのような操作が可能になれば面白いと思いますし、可能性としてはあり得ると思いますが、現時点では、まだそこまでプラズマ照射の影響をコントロールすることはできない状況です。私たちの解析がそのようなことにつながればと思います。

メチル化を含めて、照射する対象により影響は異なってくると思います。こちらについてもまだまだ不明なことが多く、基礎的な実験をもう少し行う必要があると考えております。

 

Q & A 「プラズマによるがん克服への挑戦」​​中村香江先生

1. 実際の治療に使う際は、プラズマは患部へ非侵襲的に当てられるのでしょうか?

治療対象の疾患に対する必要なプラズマの強度や治療部位により侵襲の程度は異なると思いますが、一般的にプラズマは低侵襲であると言われております。プラズマの直接照射においては照射強度や距離にもよりますが照射部位の表層からmmオーダーくらいまでの局所的な影響しか与えません。プラズマ活性溶液を用いた動物実験では、対象群と比較し、体重変化には影響を与えませんでしたが、腹腔内への投与直後には軽度の一時的な炎症反応が見られたものの、重篤な反応は確認されませんでした。今後、臨床応用に向けて、安全性試験等によってさらに詳細に明らかにされるものと考えております。

 

2. 正常細胞に影響はないのでしょうか?

プラズマ強度によっては正常細胞に全く影響がないわけではございません。私たちの目指すプラズマ治療は、がん細胞には抗腫瘍効果を示し、正常細胞への影響はできるだけ少ないプラズマ強度を設定することにより、正常細胞にできるだけ影響しない治療が可能であると考えています。

 

3. 卵巣がん以外のがんに対しては効果を見た研究成果はないのでしょうか?

様々ながんに対するプラズマの効果が世界中において研究されています。特に直接照射を用いた研究では種々のがん細胞に対する抗腫瘍効果が報告されております。間接照射によるプラズマ活性溶液を用いた私たちの研究においても、卵巣がんの他に、子宮体がん、子宮頸がんに加え、胃がん、膵がん、肺がん、悪性中皮腫、脳腫瘍における効果を明らかにしており、特に、子宮頸がん、胃がん、膵がん、悪性中皮腫では動物実験においてもその治療効果が証明されております。

 

4. なぜ正常細胞に比べてがん細胞へのPAMの感受性が高いのでしょうか?

一般的に、がん細胞は正常細胞に比べて自らが活性酸素を生産するため常に酸化ストレスにさらされています。このような背景から、プラズマの効果の主要因と考えられている活性酸素窒素種(RONS)に対する感受性が、がん細胞は正常細胞に比べて高く、RONSを多く含むPAMに対する感受性が高くなるのではないかと考えられています。また、近年その他の有効成分が新たに同定されており、それらの成分のうち、がん細胞への治療選択性を示すものも明らかにされつつあり、その詳細は今後解明されていくと思います。

Q & A 「農作物の種子に対するプラズマ照射効果の謎に迫る」​​石橋勇志先生

1. プラズマ照射によって、お米の栄養価に変化はあるのでしょうか?

プラズマ照射がお米の成分に及ぼす影響については、まだわかっておりません。あくまでも私見ですが、プラズマ照射したイネを収穫後、実際に食べてみると、照射していないお米よりも美味しく感じました。私以外でも同様の意見の方が結構いらっしゃいました。

 

2. 人間の遺伝子も高温でダメージを喰らうのでしょうか?

私自身が人への影響を研究したことがありませんので、正確なことは言えませんが、高温のストレス強度によると思われます。遺伝子自体にダメージを与えるか否かは分かりませんが、エピジェネティクスな変化が起こる可能性はあると思います。

 

3. プラズマ照射によるデメリットはないのでしょうか?

プラズマ照射の強度や照射時間によっては、植物の生育にマイナスの影響を与えることがあります。

 

4. 種子の低メチル化は子孫に引き継がれるのでしょうか?

哺乳類ではDNAメチル化パターンは配偶子形成や初期発生の家庭でリプログラミングされますが、植物の場合は世代を超えて継承されることが知られています。従って、子孫にも引き継がれます。非常に興味深いことにエピジェネティックな多様性が自然集団における多様性を引き起こしている例も報告されています。

 

5. ABA代謝及びa-アミラーゼ誘導にプラズマがどのように作用するのか機序が分かりませんでした。ヒストンに作用してDNAの読み取りができるということでよいのでしょうか?

DNAのメチル化は、遺伝子の発現調整に関わることが知られています。一般的に、高いDNAのメチル化は遺伝子発現を負に、低いDNAのメチル化は遺伝子発現を正に制御します。今回の研究では、プラズマ照射により、ABA代謝関連遺伝子やα-アミラーゼ遺伝子の低メチル化を誘導し、遺伝子発現を促進することで、発芽率を向上させたと考えられます。

 

6. CO2減らす農業の可能性についてですが、照射するプラズマの発生を準備するために要するCO2(例えばプラズマ発生時の発電とか)を考慮しても環境問題に効果的な農業に有効な可能性が高いのでしょうか。

今回のプラズマ処理は最長で3分間で、非常に短時間での処理になります。そのため、発芽促進剤や長時間の温度処理などが不必要となることから、同資材産生に関わるCO2発生よりも少なくできると考えています。

お問い合わせ

第32回 自然科学研究機構シンポジウム 事務局
自然科学研究機構 事務局 企画連携課企画連携係
電話:03-5325-1898または1308(平日 8:30-17:15)
E-mail: sympo32@nins.jp