イベント情報
自然科学研究機構シンポジウム
第32回自然科学研究機構シンポジウム 講演者 佐々木 渉太
講演2:「大気圧空気プラズマを用いた五酸化二窒素の選択合成とその応用展望」
佐々木 渉太(ささき しょうた)
東北大学大学院 工学研究科 助教
□ 略歴
2017年 東北大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 博士後期課程修了
2017年 University odMinnesota, Department of mechanical Engineering, Researcher
日本学術振興会 特別研究員PD
2018年 東北大学 大学院工学研究科 助教 現在に至る
□ 講演概要
100Wに満たない電力消費で、無尽蔵な資源である空気から所望の活性種をその場で合成することが可能であると近年非常に注目されている大気圧プラズマ技術。この技術は、医療応用から材料合成に至るまで、幅広い分野にわたって持続可能な分散型アプリケーションを提供することが可能です。既に、オゾン()をはじめ、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(
)といった特定の活性種の選択合成は既に実現されており、特に
は殺菌・消臭・水処理などに活用されているだけでなく、疾患治療への応用も進められています。そして、次に研究者達が合成を試みた活性種が、五酸化二窒素(
)です。
は、強力な酸化・ニトロ化作用を持ち、特有の化学反応を誘起できる潜在能力を持つことから、幅広い分野での応用が期待されてきました。しかし、過激な化学合成法と安定保存の難しさから、一部の研究者にしか取り扱われず、応用探索も進まなかった物質でもあります。
我々は、新たに五酸化二窒素()を10倍以上の選択比で電気合成するプラズマ源の開発しました [1]。そして、プラズマ合成条件の最適化によって生成される活性種組成を制御し、さらに複数の合成反応器と数値計算に基づいて設計した反応器を組み合わせることによって、
のプラズマ合成を実現することに成功しました。この革新的な技術によって、空気から誰もが簡単に
を合成・供給可能となったことで、多方面における応用展開・産業開発が進むことが期待されています。
本講演では、プラズマ生成気相活性種の反応過程から、液中への輸送過程、液中活性種と有機物との反応ネットワークに関する実験結果など、最新のデータを交えてお話しします。また、実際に生物へプラズマ合成を暴露した後の応答についても触れ、将来的な応用に関する展望もお話しさせていただきます。
[1] S. Sasaki*, K. Takashima, and T. Kaneko, "Portable Plasma Device for Electric N2O5 Production from Air", Ind. Eng. Chem. Res. 60 (2021) 798.