イベント情報
自然科学研究機構シンポジウム
第34回 自然科学研究機構シンポジウム 講演者 諸橋 憲一郎
講演2:「オスの骨格筋はおにぎりが好きで、メスの骨格筋は霜降りの肉が好き」

諸橋 憲一郎(Kenichiro MOROHASHI)
九州大学大学院 医学研究院 主幹教授
□ 略 歴
1986年 九州大学大学院理学研究科(生物学専攻)博士課程修了 理学博士
1986年 九州大学理学部生物学科、助手
1996年 岡崎国立共同研究機構、基礎生物学研究所 形質統御実験施設、種分化機構第二研究部門、教授 総合研究大学院大学、生命科学研究科、教授(併任)
2007年 九州大学大学院 教授
□ 講演概要
わたくし達の骨格筋を男性(オス)と女性(メス)で比べると、男性の方が硬くて太く、収縮する力も強そうで、女性の方が柔らかくて細く、収縮する力も弱そうに見えます。このように骨格筋には明瞭な性差があります。ではわたくし達の身体を作っている他の臓器や器官に性差はあるのでしょうか?
例えば、男性の肝臓と女性の肝臓には骨格筋のような違いは見られませんし、男性の血管と女性の血管にも大きな違いは見えません。では同じかというと、同じではありません。やはり性差があります。では、どこに性差があって、どこを見れば性差が見えるのでしょうか?
実は、わたくし達の身体を作り上げている全ての細胞に性差があります。肝臓の細胞に性差があるから肝臓に性差が生まれますし、脳の神経細胞に性差があるから脳にも性差が生まれるのです。では細胞の何を見れば性差が見えてくるのか?例えば、遺伝子の働き方です。どのような遺伝子がどれほどの強さで働いているかを調べると、性差が見えてくるのです。
本講演では、オスの骨格筋細胞とメスの骨格筋細胞で遺伝子の働き方を比べた時に見えてきた性差をご紹介します。この遺伝子の働き方の性差から、オスの骨格筋とメスの骨格筋ではエネルギーを得るために消費する物質に性差があることが分かってきました。
オスの骨格筋はどちらかというと炭水化物(ご飯やパン、麺)を、メスの骨格筋は脂肪(霜降りの肉やトロにたっぷりと含まれる脂)を分解するのが得意のようです。このようなメスの特徴は、脂の分解に必要な遺伝子の機能が女性ホルモンの作用によって促進されることがその理由です。これらの実験結果をもとに、男性と女性の骨格筋の差が食の好みに性差を生み出している可能性について議論したいと思います。
□ 最近ハマっていること
テニスと釣り