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第9回自然科学研究機構シンポジウム Q&A
第9回自然科学研究機構シンポジウム Q&A
第9回自然科学研究機構シンポジウム
「ビックリ4Dで見るサイエンスの革新」(2010年3月21日開催)
講演者への質問とその回答
当日参加者の皆様から寄せられた質問に対する講演者の先生方からの回答です。(講演順)
質問と回答
Q1: 対象の部位毎の発色の違い"づけ"は蛍光色素と各部位の親和性と差別化(?)性を見出す必要あり、大変な探学が要なく想像しますが。どの様にしてますか。色素が目的を変存させないのですか。
A1:蛍光色素には外来性と内来性があり、外来性は有機物として外から取り込まれ結合相手(たとえば蛋白質)に影響します。従って通常は死んだ細胞、組織を相手にします。内来性のものの代表がノーベル賞の対象になった蛍光蛋白質でこれを目的蛋白質に遺伝的に融合させ発現します。この場合生体自身が発光し、顕微鏡的目印となります。生きた状態の生体観察に向いており、生物学を革新しました。この方法では発光していればその場所に必ず目的蛋白質があるというすぐれた特徴を持っています。(回答者:永山先生)
Q2:可視化するための分子に蛍光分子を結合乃至は組み込む蛍光分子により、本来の分子の働きに影響が無いか?その確認の方法は?
A2:蛍光色素には外来性と内来性があり、外来性は有機物として外から取り込まれ結合相手(たとえば蛋白質)に影響します。従って通常は死んだ細胞、組織を相手にします。内来性のものの代表がノーベル賞の対象になった蛍光蛋白質でこれを目的蛋白質に遺伝的に融合させ発現します。この場合生体自身が発光し、顕微鏡的目印となります。生きた状態の生体観察に向いており、生物学を革新しました。この方法では発光していればその場所に必ず目的蛋白質があるというすぐれた特徴を持っています。(回答者:永山先生)
Q3:4D2Uで視点の移動に光速度の影響をどう取り入れて(組み込んで)いるのか?
A3:視点に光速度の影響は取り入れていません。銀河の距離は地球までの光行距離になっています。(回答者:小久保先生)
Q4:4D2Uを見て天文学の研究者になったという方に実際に会われたことはありますでしょうか?
A4:まだありません。(回答者:小久保先生)
Q5:
4D2Uの立体データでうずまき銀河はよく見られますが、星雲のデータはあるのでしょうか。
例えば
・すばる周辺の青いガス
・オリオン大星雲
・干潟星雲(M8)
立体的に把握できると星の延長の様子などもわかりやすくなると思うのですが。
A5:まだありません。立体構造の観測はほとんどないのです。(回答者:小久保先生)
Q6:宇宙の全体像を137億光年までご紹介頂きありがとうございました。ひとつ質問なのですが、宇宙の周辺に注目すればするほど過去の宇宙をみているとのことですが、一般の人がその宇宙の全体像をみるときに、その映像そのものが"今現在の宇宙"であるように誤解してしまう恐れがあるのではないでしょうか?
A6:その通りです。解説するときに気をつけています。(回答者:小久保先生)
Q7:太陽の中心部の温度は1500万度。光球は6000度。まるで断熱材が入っているようだとアイザックアシモフが書いています。温度が4桁もちがう理由はなぜでしょうか。
A7:太陽では「核融合反応によって生成する熱エネルギー=表面からの放射エネルギー」となるように、表面の温度、中心から表面までの熱輸送、そして核融合反応がバランスされ、定常状態となっています。中心から表面までは非常に遠いので熱伝導では熱はほとんど伝わりません。中心から半径の70%までは輻射による熱輸送、その外が対流による熱輸送と考えられています。(回答者:石黒先生)
Q8:プラズマ中でできる高分子を回収して何かに使うことはありうるのでしょうか?宇宙でも起きているとのことでした。生命の起源と関係ある可能性はあるのでしょうか?
A8:炭素材料などをプラズマを利用して生成する研究が大学などで行われています。宇宙でできた高分子が原始生命の材料になっているという仮説もあります。(回答者:石黒先生)
Q9:プラズマ断熱層はなぜできるのでしょうか。(熱力学的理論で保証されるのか)また何によって変化しますか。断熱効果を最大にする方法は?
A9:空気を暖めると対流ができるのと同じように、プラズマを暖めるとどうしても中心から周辺への流れが生じてしまいます。プラズマ中にできるこの流れの為に、プラズマ中の熱は外へ逃げてしまいプラズマの温度が上がりにくくなります。この中心から周辺への流れをなんとかして消してしまえばそこに断熱層ができます。
プラズマ中で断熱層を作るやり方は、エアーカーテンの原理に似ています。エアーカーテンの場合は、屋外から室内に流れ込む水平方向の空気の流れを、縦方向の層流で遮断します。プラズマの場合は円柱の中心から周辺に流れる流れを同心円状に流れる層流で遮断して断熱層を作ります。断熱層の出来具合は、層流のスピードや厚さによって変化し、層流を速くする、層流を厚くする、何重にもすることで、断熱効果を最大にできます。(回答者:石黒先生)
Q10:光子励起レーザー顕微鏡で測定できるシナプス、ニューロンのネットワークのパターンを分析して大脳各領域の機能を把握する方向での研究可能性はどこまで実現できそうなのか?現在どのようなレベルか?記憶する・しないの篩(ふるい)の機能と仕組みはどこまで解明されているか?
A10:2光子顕微鏡は蛍光顕微鏡ですので、目的とする細胞や微細構造に蛍光物質を入れることによって、シナプスからネットワークまで観察することができます。今後は機器の性能・技術と種々の蛍光物質の開発によって大きく使用範囲がひろがることが期待出来ます。大脳皮質の機能を評価するためには、神経ネットワークの電気的な活動が直接観察する技術の開発が待たれます。記憶のメカニズムとして、さらに深部の海馬をインタクトなまま観察することが将来できればと考えています。(回答者:鍋倉先生)
Q11:ミクログリアはシナプスの障害をどのように検知しているのでしょうか?ミクログリアのネットワークもある?
A11:どのような分子メカニズムで正常や損傷シナプスを認識しているのか、さらに除去する、しないを決定しているのか、現在研究を勧めているところです。個々のミクログリアにはテリトリーがあるようです。これは、ミクログリア同士が何らかの連絡をしていると思われます。(回答者:鍋倉先生)
Q12:人間の脳を細胞レベルでシミュレーションする事はできるのでしょうか?
A12:人間の脳は非常に高度で複雑です。多くの研究者が細胞、神経回路、生体レベルでその特徴の抽出を行っています。現在はまだとても出来ませんが、興味ある目標です。まずは、個々のネットワークのシミュレーションからでしょう。(回答者:鍋倉先生)
Q13:他の細胞が再生可能に比べ、脳細胞は再生が不可能(難しい?)なのは何故でしょうか?
A13:脳は非常に高度に発達した臓器です。現在神経幹細胞の存在などがわかり、脳の再生・修復の可能性の研究がなされています。また、成熟脳において、急性損傷をうけた神経細胞や局所回路には未熟期の可塑性に富んだ時期の特徴が再出現して回復しようとしていることも最近報告されているようです。また、別の回路が失われた脳機能を補うように再編成することも最近報告されています。(回答者:鍋倉先生)
Q14:ウイスキーの水割りがもっとも美味である条件(濃度など)は説明できるのですか。ミクロの情報(ミクロの時空間又スケールの大きさ)はマクロの状況(現象)に反映するのでしょうか。
A14:エタノールの濃度が40-43%のウイスキーのときに、水のクラスター形成が最大となっているといわれています(茅幸二、西信之「クラスター:新物質・ナノ工学のキーテクノロジー」産業図書(1994))。ミクロの情報からマクロの状況という点では、水はある水分子の周りに水四分子を配置させる(四配位)状態がエネルギー的に安定していますが、そのような安定になろうとする傾向が氷の構造に繋がっています(圧力・温度によりさまざまな氷構造を作ることも可能です)。(回答者:斉藤先生)
Q15:水蒸気→水→氷のシミュレーションでは相転移(突然の物理状態の変化)はどのように観察されるか?エネルギーの放出などの影響は?
A15:水蒸気つまり気体状態では温度が高いために各分子がほぼ独立に非常に速く動き回っていますが、温度が下がってくると、分子間の相互作用を感じ、沢山の分子が集まった状態も安定になります。また、液体状態では分子の配置や配向が乱れていますが(エントロピーとして安定な状態になっている)、温度が下がると、配置や配向は限定されますがエネルギー的に安定な氷へと変化します。(回答者:斉藤先生)
Q16:H2Oが欠陥構造をもつクラスターをつくり、そのあと規則構造をもつ核が生まれる。核のサイズの駆動力三角形M/kT依存性は明らかになっていますか?
A16:水の結晶化は、その過程を追うこと自身が容易ではなく、その詳細はまだ明らかになっておりません。今後の課題です。(回答者:斉藤先生)
Q17:お話の中で銀河どうしが衝突しても「暗黒物質はすりぬける」というお話がありました。暗黒物質は暗黒物質どうしや物質間での相互作用がないということでしょうか。だとすると、暗黒物質は今考えられている4つの力以外の力で構成されているということですか?
A17:暗黒物質は重力には従いますが、それ以外に他の三つの力に従う証拠はありません。(回答者:村山先生)
Q18:今回のお話に直接関係ある質問でないのですが...光は重力で曲がるとおっしゃっていました。でも「光速で動くためには質量が0でないといけない」と聞いたことがあります。質量0だと重力も働かないと思うのですが、どうなのでしょうか?実は光は質量0ではないのでしょうか?
A18:アインシュタインの有名な式E=mc2のいうことは、質量もエネルギーの一種だと言うことです。普通の物体に重量が働くのはニュートンは「質量」のためだと説明しましたが、実はエネルギーには全て働くのです。ですから、光は質量はありませんがエネルギーはあるので重力で落ちるのです。(回答者:村山先生)
Q19:何故、暗黒物質はもっと小さく固まってしまわないのですか?距離が近くなると反発する力があるのですか?
A19:ものが固まるためには、エネルギーを失って落ち込む必要があります。暗黒物質は知られている力のどれにも反応しないようなので、エネルギーを失うことができず、固まれないのです。(回答者:村山先生)
Q20:最近の宇宙膨張とインフレーションは関係があると思いますか?
A20:関係ある可能性は結構あると思います。インフレーションも今の宇宙膨張も加速膨張なので、似ている点は多々あります。しかし、今のところ全くわかりません。(回答者:村山先生)
Q21:抽出アルゴリズムでの検証で予めヒトがだいたいの形を先に与えて計算させるというのがありましたが、もし考えられないような形を与えてアルゴリズムを走らせるとその与えた形に近い結果を得てしまうのでしょうか。そんなことはなく、結果として考えられない形を与えたとき、そういう形を結果にださないのであれば、予め考えられる形を与えるという方法は良いと思いますが、間違ってる可能性のある形を選択してしまうことがあるのなら、やはり人の意見を条件として先に与えて計算を短縮させる方法というのはまずいのではないでしょうか。
A21:紹介した抽出アルゴリズムは、いかに設定した情報に近づけるかを行う物です。不正解な情報を与えると、それに近い計算手法を選定してしまうことになります。絶対的に正しい正解はだれが決めるのでしょうか。画像処理の大きな問題です。私たちは、人が見て正しいと思われることを再現することと問題を設定しました。また、人の意見を基にする方法を提案されていますが、一般的な画像処理の手法は人が判断して居るであろうロジックをプログラム化する物です。ただ、その場合は、判断基準が明確にわかるものでないと判断が出来ません。工場の外観検査など、対象物の形が決まっているときにこの方法が用いられています。ではどうするのか。私たちは、別の観察法で観察した確定情報を用いた処理する事を行います。(回答者:横田先生)
Q22:CTやMRIで造影していない画像を、造影した様に画像処理する技術はないのでしょうか?(単純CT、MRIと造影のそれらを重ね合わせることを蓄積すれば技術的には難しくはないと考えます。)
A22:ご紹介しました人体のデータは、X線CT、MRI、MRIの血管像の情報を合わせて処理しています。(回答者:横田先生)
Q23:(感想:以前よりパネルディスカッションが聞き応えありました。)MRI像の測定時間をお伺いします。人体用では息とめが必要なのでねずみでも動かさない工夫が必要では?生きた状態で10μmの解像度が出るのでしょうか。
A23:マウスのデータは凍結包埋して観察しています。そのために、生きている情報ではありません。生きている状態でのデータ取得として、呼吸の同期をかけてX線CTやMRI撮影する方法があります。私たちも、生きた状態でのマウスやラットを対象にspring8を用いた4次元CTデータの取得を行っています。(回答者:横田先生)
Q24:坂口さんはVFXをつくるときに実物を見たり、実写をとりこんだり、実物のデータを使ったりすることはどの程度あるのですか?横田さんのお話でできるだけ実物(CT、MRIなど)のデータをとってからシミュレーションするというのが印象的でした。しかし、とれる実物のデータに限界があるとすると、その限界を広げる努力とそこはシミュレーションでやってしまおうとするところの間に科学そのものの限界があるように思えます。いかがでしょうか?
A24:全てのデータが撮れれば良いのですが、観察対象やその条件(空間や時間の分解能)によって撮影方法が限られてしまいます。また、シミュレーションはある限定した条件に基づいて、確率的にあり得る現象か否か、どうなっているかを予測する方法です。前提知識があれば、シミュレーションの条件を規定できますので、現象の再現の確率を上げることが出来ます。逆に言うと、限定する条件や数理モデルがなければ実際の現象とかけ離れた事を見せてしまいます。観察とシミュレーションはお互いを補完する関係と考えています。(回答者:横田先生)
VFXはあたかも実物を撮影したかの様に見せるのが目標のため、実写のデータは一番有用な情報であり、特に面白いところは、VFXにおいてはこの実物のデータをありとあらゆる形で用います。一番簡易的なところでは、実写の映像を参考資料にします。その他代表的なものとしては:
- 実際の撮影されたセットや、ビル、町の実データを計測し、3Dのデジタルデータに変換して用いる
- カメラでCGで作っている物の様子を撮影し、それを表面に貼付けてリアリティーを作り上げる
- 撮影現場の照明の情報(ライトの位置、ライトの強さ、等を撮影現場で記録する技術がVFXには沢山あります。)を記録、持ち帰り、デジタルで撮影現場と同じライティングの環境を作り上げる
- 俳優の演技、表情の動きを撮影、記録し、それをデジタルで再現、俳優のデジタルスタントマンを作る
- 俳優の体のスキャン、肌の色、質感のスキャンをし、それをデジタルで再現する
等々、本当にあげるときりがないほどです。
実写に近づけるのが仕事のため、実物のデータをできるだけ記録して、それを再現する技術がVFXの全ての分野で日々研究開発されています。
そして、ご質問の通り、実物のデータが取れない場合、もしくは、実際に実物が現実に存在しない場合は、これも様々な技法が用いられます。映画の求める実際にあり得ない映像に一番近いもののデータを取り、そこからなんとか架空のものを作り出す場合もありますし(例えば8つ足の怪獣を作る必要のある場合、一番その怪獣に近い動物の動きを記録、スキャンし、それをもとに8つ足の怪獣の動きを想像するなど)、シミュレーションに、現実にはあり得ないデータを入力し、もしもこんな現実ではあり得ない現象がシミュレーターによって作り出せるかの実験をする場合もあります(例えば、ニューヨークが津波に飲み込まれる映像は、開発した流体のシミュレーションソフトに、現実ではあり得ない水の高さや速度を入力すれば、映画でしかあり得ない水の映像が作れます)。(回答者:坂口先生)
Q25:すべてCGで製作したアニメでないアニメ的映画が将来主流になるのでは?ロケや俳優なしの極めて現実的映画の実現性は既に技術的に可能であると思われるが...?
A25:すべてCGで製作したアニメでないアニメ的映画が主流になるかに関しましては、制作者のビジョン、コスト、そして観客の求めるもの等が判断基準になるかと思われます。監督、プロデューサーが何をどう表現したいのか、その時代の観客が何を求めているのか、こういったクリエイティブやビジネス的な要素が大きいため、その判断は技術よりはその他の要素によるのではないかと想像されます。個人的にはどの映像表現にもそれぞれの魅力があるため、これからも実写もアニメもフルCG映画もずっと作られていくことが理想ですね。
技術的には、これはまさにVFXの業界で頻繁に論議されるテーマです。ロケの無い現実的映画はおっしゃられる通り実はすでに数多く存在し、これはコストの削減や、俳優の拘束時間、撮影の際の自由度(カメラの動きなど)、現実的に作り上げる事のできない仮想空間が必要な場合など、実際に撮影するよりもデジタルでロケーションを作り上げる方にメリットがあれば頻繁に行なわれております。
アバターなど仮想世界であればこの手法は必須ですし、仮に実写映画でも、今日の映画であれば実はかなりのパーセンテージでスクリーンに映っているロケーションではまったく撮影が行なわれていないのです。仮想ロケーションはVFXの技術の中でも一番リアルに描ける分野の一つのため、僕達VFXの分野の人間でも映画を見ただけではロケが行われたか、デジタルで仮想的に作られたかを見分けるのは最近では困難なことが多いです。
逆に俳優に関しては、これも特に俳優の組合などでよく論議されるのですが、どんなに技術が向上してもデジタルによって俳優が置き換えられることはないとアカデミー協会が言っているといった記事がつい最近発表されたところです。(The WARP Webサイト)
記事の趣旨としては、デジタルで作り上げられるのは「リアルな動き」だけで、「演技」ではないといったものです。たとえばとてもすさまじい怒りの感情表現が必要な映画のシーンを作る為には、演技力の高い俳優さんが演技をします。その演技を、デジタルの動きを作り出すプロとはいえ、アニメ-ターさんは演技のプロではないので作り出す事は困難です。アバターにしてもベンジャミンバトンにしても、映画上のキャラクターはデジタルで作られており本人に見えなくとも、その動きを作り出したのはアニメーターではなく、俳優さんの演技であるというのです。(回答者:坂口先生)
Q26:スパコンを使わないと出来ないようなシミュレーションは一体どれぐらいのメモリを使っているのでしょうか。
A26:理想的にはメモリは多いほど大規模な計算が可能になります。最新型のスパコンなら家庭用PCの数万台分くらいのメモリを搭載しています。(回答者:三浦先生)
Q27:
1)各映像をつくるのにどのくらいの時間がかかっていますか?
2)各シミュレーションに実時間スケールを明示してほしい
A27:
1)データにより難しさは違いますが、私の経験から目安にしているのは1分の映像で1~3ヶ月と考えています。
2)ご指摘ありがとうございます。実時間をテロップでいれたほうが確かにわかりやすいのですが、絵が説明的になりすぎたり、集中を乱すことにもつながります。使用目的によっても、あるほうがよいときとないほうがよいときがあり、作り分けています。(回答者:三浦先生)
Q28:事業仕分け、どうなんでしょうか。かなりひどい感じです。本音をお話ししていただければ。我々にできる事がありましたら。
A28:
科学者がもっと自分の行っている研究内容を国民に伝える努力をすることでまず国民の支持を取りつけることが大事。(回答者:永山先生)
国民の生活を守るということでは、国の事業を見直すことは大切なことと思います。一方で、長い視点で国の方針の下で、様々な事業を進めることも大事です。科学研究は、すぐに役にたつことが少ないかもしれませんが、技術の発展の為にも基礎研究は非常に重要であると共に、基礎研究を通して科学することを学生さんなどが学ぶことが将来の国の発展にも役に立つと考えています。面白いことを共有してもらうことと、積極的にこのような基礎研究を支援していただけるとありがたいです。(回答者:藤森先生)
日本は資源も少ないため、いろいろな分野のヒトを育てることが重要です。研究はすぐには経済効果はでないことがほとんどですが、学問レベルをあげること、ひいてはヒトを育てることにつながります。より多くのかたの理解が得られれば甚幸です。(回答者:鍋倉先生)
御心配、誠にありがとうございます。確かに、事業仕分け後の次世代スパコンプロジェクトのリーダーの先生方の御苦労は相当なものでした。今後とも御支援をよろしくお願いいたします。(回答者:斉藤先生)
文部科学省、内閣府などがときどきパブリック・コメントを求めています。ぜひ基礎科学の研究を安定して推進できるようにコメントを送って下さい。(回答者:村山先生)
科学研究は重要とは言っても、その予算には無駄が生じている部分もあります。その意味で仕分けは必要なのですが、どういう支出は重要で、どういう支出は不要か、その判断が難しいです。テレビや新聞に紹介されるような一過的な新発見ニュースとは異なる中長期的な研究活動や、表に出にくい舞台裏の研究支援活動の重要性を、どのように分かりやすく国民に対して説明するか、もっと工夫する必要がありそうです。(回答者:伊藤先生)
国の財政状況を考えると、科学技術だからと言って予算が湯水のように使うことが許されないことを理解しています。ただ、今回の事業仕分けは、本当にその中身を見て判断をされているのか理解に苦しむところです。実は予算の削減よりも、研究者技術者の意欲を削いでしまったことが一番大きな問題ではないかと思います。事業仕分けでつるし上げられている科学者技術者を見て若い人が苦労をしてまでがんばりたいと思うでしょうか。(回答者:横田先生)
Q29:研究費が削減されないよう政府にもっともっと働きかけて下さい!自然科学界だけでなく産業界のためにも、ひいては日本の雇用、景気、国民の生活のためにも...つねづね日本の将来に対して悲観的になってしまいます...。
A29:
日本の将来について見えない状況ですが、過去と比べやはり良くなっている日本の現状は評価すべきでいたずらに悲観に陥る必要はありません。私が大学院のころに比べ研究費は物価上昇以上に伸びています。(回答者:永山先生)
研究の必要性を、政府に働きかけるとともに、広く一般の人たちに説明していく必要があると感じています。(回答者:石黒先生)
同感です。我々も研究費を無駄にしないように気をつけながらも、できるだけ先端の本質的研究をすすめられるよう努力します。一般の方の支援も非常に大切ですので、今回のような機会におもしろさを共有していただき是非、支援お願いします。(回答者:藤森先生)
研究はなるべく多くの種をまくことが重要です。将来どの研究が大きな花を咲かせるのか、そのための苗床を基礎研究は作っていると思っています。また、将来、どの研究・技術が必要になるのかわからないことがほとんどです。そのために、多種多様な苗を育てる必要があります。(回答者:鍋倉先生)
文部科学省、内閣府などがときどきパブリック・コメントを求めています。ぜひ基礎科学の研究を安定して推進できるようにコメントを送って下さい。(回答者:村山先生)
政府は有権者の意見を代表して行動しているのですから、研究費が削減されないよう政府に働きかけるのは、科学者ではなく有権者である国民の皆さんの役割です。一方、科学者は政府でなく国民(有権者)に対して、自分たちの活動がどんなに大切か、今どんなことが解明されつつあるのかを、もっともっと分かりやすく説明して理解してもらう必要があると思います。自然科学研究機構シンポジウムのような継続的な活動を行っている研究機関もまだまだ少数ですし、数百人にしか声が届かないシンポジウムだけでなく、もっと多様な活動も必要です。アメリカでは、駅の売店でもいろいろな科学雑誌がふつうに棚に並んでいます。一方日本では、科学雑誌は読者減で軒並み廃刊しています。これは、単に出版不況と言うだけではなく、面白い良質なコンテンツを雑誌制作者に提供できていない日本の科学者にも、またそういう一般向けの説明活動をあまり重要だと評価しない日本の科学者業界の慣習にも、原因があると思っています。(回答者:伊藤先生)
私たちも、パブリックコメントや参加している学会などを通じて意見を表明しています。でも、私たちは当事者なのです。日本の国民の皆さんが声を上げていただくことが一番重要ではないかと考えています。この国の方向を決めるのは日本人一人一人の考えなのですから。(回答者:横田先生)
Q30:研究予算はどこからですか?
A30:いくつかのソースがあります。文部科学省、科学技術推進機構、学術振興会、NEDOなど。(回答者:永山先生)
国からです。(回答者:石黒先生)
国の税金からです。(回答者:藤森先生)
研究予算は科学技術振興機構や学術振興会などが行っている競争的資金へ応募して研究者コミュニティーの専門家の審査を経て得ています。(回答者:鍋倉先生)
私の場合は科学研究費補助金が主たる研究財源です。(回答者:斉藤先生)
文部科学省です。(回答者:村山先生)
政府(文科省など)と国際財団(ヒューマンフロンティアなど)です。(回答者:伊藤先生)
理化学研究所で研究している予算の殆どは国の予算、つまり税金です。予算の大部分は競争的資金(ある分野の研究課題に対して、研究者が計画を提出して、優れた研究申請に予算が付きます。いわば研究者の仕事の入札と同じでしょうか)。私の所属している研究所では、8割近くの研究者、技術者は1年契約で働いていて、その人件費も競争的資金からまかなっています(野球選手のフリーエージェントみたいですね。でも、当然退職金もありません)。研究予算の切れ目が縁の切れ目でなかなか厳しい仕事です。(回答者:横田先生)
Q31:イメージングは私達素人にはわかりやすくてとてもすばらしいと思います。しかし多くの加工をするうちに実験者の気持(都合のよい?)が加えられていくのでは?それをどのようにセーブ(自・他)していくのですか?
メガネめんどくさい!今後どのように改良がされるのですか。
A31:データを加工をすればそれは競争相手に分かり、まず研究仲間の批判にさらされます。これが学会コミュニティの自主規制の根源です。だから競争が必要。
10年以内に裸眼立体視が実現しますが、それはホログラフィーと同じ原理を使うことになるでしょう。(回答者:永山先生)
4D2Uではなるべく生に近いデータをなるべく科学的に正しく可視化することにこだわっています。将来的には裸眼立体視が可能になると思います。(回答者:小久保先生)
科学研究のイメージングは、シミュレーション、実験から得られたデータを一定のルールに則り行いますので、研究者の都合のよいように加工されるといったことはないと考えています。裸眼立体視のディスプレイ等もありますが、観測者の位置を選ぶようです。当面は眼鏡をかける方法が主流と考えています。(回答者:石黒先生)
3次元テレビに代表されるように、今後技術の発展にともなって、もう少し身近な技術になるでしょう。科学者の立場として何が都合よい加工であって、何がそれにあたらないかを意識するのが大切です。そういう所は教育によって、高い意識を身につけることが重要です。(回答者:藤森先生)
研究のために用いるイメージングは、今までの技術では解明することが困難であった研究を推進することが目的です。結果は国際的な専門家から厳しい評価をうけて学術的論文として公表されます。(回答者:鍋倉先生)
私の場合にはシミュレーションを行っているので、イメージング化そのものよりも、シミュレーションにおいて計算結果で出てきたものが、大間違いでないか、現実の実験を反映したものであるか等に気をつけながら研究を進めています。今年は3D元年といわれており、3D対応のテレビやパソコンもでていますが、近いうちにもっといろいろな改良がなされることと思います。(回答者:斉藤先生)
イメージ化するときに意図せずにデータを「分かり易く」するために特定の解釈が入ってしまう危険は確かにあります。気をつけていくしかありません。(回答者:村山先生)
イメージングに限らず、実験や観測で得られたデータから有効な情報を抽出する作業では、「どのような情報を抽出したいか」という研究者の主観が入ります。基本原則は、「自分以外の別の人が同じデータを処理しても、同じ結論を導くかどうか?」です。元のデータは要請があれば見せられるようにきちんと整理・保存し、他の人にも納得してもらえるような筋道でデータを処理することによって、自分に都合よくゆがめた実験をしないよう、お互いにセーブしています。(回答者:伊藤先生)
極力人の判断が加わらないように、コンピュータによる画像処理法を研究開発しています。人の判断を必要とする際には、多数の人の判断や大量のデータを判断して統計的な処理を行います。メガネめんどくさいですね。立体視の専門家に聞かないと判りませんが、メガネが無くても可視化する方法が研究されているようです。私も期待しています。(回答者:横田先生)
とても重要な視点だと思います。科学も人間の営みですから、完全に正しいものばかりではありません。現時点でここまではわかっている、この事実が今回の研究でわかったといった点を研究者とディスカッションしながら伝えるよう努力しているつもりです。映像により単純化することが目的ではなく、より多くの本質的疑問をもったり、思考が深まっていく、探求活動そのものにつながるような映像が作れたらいいなと私は考えています。(回答者:三浦先生)