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第40回自然科学研究機構シンポジウムQ&A集

第40回自然科学研究機構シンポジウムQ&A集

講演を視聴してくださった皆様からいただいた質問に、講演者の先生が答えてくれました。

先生のお名前 いただいた質問 先生からの回答
野村先生 今後太陽系に新たに惑星が誕生する可能性はありますか? 惑星が誕生するには、塵やガスなどの惑星の材料となる物質が十分集まる必要がありますが、現在の太陽系には、そのような場所は存在しません。したがって、このままの状態では、新たに惑星が誕生するのは難しいと考えられます。
 野村先生 星団と孤立系で重水素が異なるのはなぜなのですか?星が集まっていることで温度が上がることなどが原因なのでしょうか? はい。重水素を含む水は、温度が低い状態で生成されやすくなると考えられています。星団内では周囲の星からの放射の影響で、孤立系に比べ温度が高いと考えられており、そのため、重水素を含む水が比較的生成されにくいのではないかと考えられています。
堀先生 講義の中で話していた「系外惑星の日食」は、先週の月食のように、時刻を予想して観測できるものなのでしょうか。 一度発見された系外惑星に関しては、前回の食の時刻と公転周期、軌道の特徴から、いつ、どのタイミングで再び、食が起きるかを予想することが可能です。実際の観測でも食の時刻を予想して食の観測を行っています。
堀先生  火星の山の高さについてお話があったと思いますが、どこを基準にして高さを決めるのですか?大気の成分が変わると雲の厚さなども変わるのですか?

地球とは異なり、海を持たない火星では、ある基準点を決めて高さを求めています。火星の場合、大気の圧力が およそ0.0061気圧となる高さを基準 (高さ0 : Mars datumと呼ばれます)としています。

 

大気成分が異なると雲の組成や雲ができる場所が変わってきます。地球は海があるため水蒸気の雲ですが、金星では硫酸の雲、火星では二酸化炭素の氷雲、木星や土星ではアンモニア、硫化水素アンモニウム、水蒸気の雲、天王星や海王星はメタン、アンモニア、硫化水素アンモニウムの雲が形成されています。

 榎木先生

地球生命はこれまで何度か大量絶滅を繰り返しています。その原因は複雑でしょうが、隕石衝突は別にして、月や太陽の周期的運動との関連を示唆する仮説はあるのでしょうか。

体内時計に代表される如く、生物の環境への応答は繊細なものと思います。長い進化の過程で、環境の周期的変動との密接な関係は存在しても不思議ではないでしょう。

地球上の生命は、太陽や月の動きから大きな影響を受けて進化してきました。サンゴは満月の夜に一斉に卵を放つことで知られていますし、海辺にすむ甲殻類や魚も、潮の満ち引きのリズムに合わせて生活しています。これは月の引力によって起こる自然のリズムを感じ取っていると言えます。

 

人間も昔から月の満ち欠けと体のリズムとの関わりが指摘されてきました。女性の月経周期や出産のタイミングなどが、月の動きと関係しているという考えもあります。また、地球が太陽のまわりを回ることで生まれる四季のリズムにも、生きものは強く影響を受けています。


冬眠はまさにそうですし、鳥が季節ごとに移動(渡り)したりするのもその一つです。木々が秋になると紅葉して葉を落とすのも、季節の変化に応じた自然な反応です。このように、太陽や月がつくり出すリズムに合わせて、さまざまな生きものが暮らしているのです。

  榎木先生 冬眠のスイッチを入れる細胞にはどのような刺激を与えることで、冬眠状態にすることができたのですか?生物によって冬眠を始める基準があるのかと思いますが、脳にある細胞を刺激すれば食物が十分にあっても冬眠するということなのでしょうか?

ここ10〜15年ほどの間に、脳の中の特定の細胞だけをねらって刺激する技術が大きく進歩しました。 たとえば「光」や「特定の薬」に反応するスイッチのような仕組みを、マウスの脳のある細胞にだけ入れて、その細胞の働きを自由にオン・オフできるようになったのです。  この方法を使って、マウスの脳の深い部分に神経細胞を刺激したところ、冬眠のような状態になることが分かりました。 脳の中の"スイッチ"を入れるだけで冬眠状態にできたということです。  


一方で、自然界の動物が冬眠を始めるときには、いくつかの条件があります。 たとえば、食べ物が少ないこと、昼の時間が短くなること(光の変化)などがきっかけになります。 体の中には、1年の季節を感じ取る"カレンダーのような時計"があり、それにしたがって冬眠の準備が進みます。 実際、冬眠するジリスの仲間では、冬の間は目の前にエサがあってもまったく食べないことが知られています。

 

つまり冬眠中には食欲を抑える仕組みがあるようです。さらに水さえも飲まずに数ヶ月を過ごすことができるというのは、本当に驚くべき生きものの仕組みです。

橘先生 文学の引用がイマジネーションが膨らみました。先生は研究されたきっかけは文学がきっかけですか。詩や小説が研究解明へ繋がることはありましたか? 本を読むことは好きでしたが、惑星への興味のきっかけは探査機が撮影した惑星の写真です。詩や小説から取り組んでいる研究のなにかの解明につながった経験はありませんが、文学作品の中にある自然科学に通ずる(と感じる)文章や表現を見つけるとうれしくなります。
野村先生・堀先生・橘先生 太陽が寿命を迎えた時膨らんで萎んで炭素の塊になる、と言った話がありますが、そういったも元星というのは現在見つかっているのでしょうか?また、それらを観測したいとしたらばどのような装置が必要になるのでしょうか?

野村先生
太陽のような質量の星が寿命を迎え、膨らんだ状態を赤色巨星、その後、萎んで炭素と酸素の塊となった状態を白色矮星と呼んでおり、いずれも数多くの天体が見つかっています。赤色巨星は、比較的地球の近くに存在するものであれば、おうし座のアルデバランのように肉眼でも見ることができます。天体がどのような組成を持つか(炭素の大気を持つかどうかなど)を調べる場合には、スペクトルを観測できる分光装置が必要となります。

 

堀先生
太陽くらいの質量の星は寿命を迎えた最期に白色矮星と呼ばれる、主に炭素や酸素から構成される高密度な星になります。こうした白色矮星は数10万個以上発見されています。冷え切っていない白色矮星の表面温度は数万度にも達するため、X線で強く輝くことから、X線観測が実施されることも多いです。観測装置としては、たとえば波長毎の詳細な情報を知るには(高分散)分光器が必要になります。

 

橘先生
(質問の意図がはっきりしませんが)
太陽程度の質量の恒星はその進化の最終段階で、水素やヘリウムの外層を放出して、炭素や酸素を主成分とする中心部分が白色矮星となって、残ります。白色矮星は高温で暗い(小さい)星として観測されています。

講演者全員 系外衛星に適応した生物はどのようなエサを食べていると思いますか?

野村先生
私が提案した生物は、普段は水中で暮らしていると考えていますので、魚や水草(海草)のようなものを食べていると思います。

 

堀先生
大変難しい質問です。地球上の生命では、種によって、たとえば植物なのか、魚なのか、鳥なのか、昆虫なのかによって餌は多種多様です。こうした点は系外衛星でも同様で、どのような生命が誕生しているか次第で餌が決まっているのではないかと思っています。

 

榎木先生
光が当たらない星なので、光合成に依存せず硫化水素などをエネルギー源とする化学合成細菌が繁殖(地球の深海、熱水噴出孔の周辺にいるような生命)。それを食べて育つコケ植物・菌類(キノコ)、さらにまたそれを食べる昆虫・甲殻類がこの星のエネルギー源となると想像。

 

橘先生
環境やその生物の進化の歴史によって、生態系は大きく変わるのだと思います。想像することは難しいですが、私たちのまったく知らない生物が生きている世界がどこかにあると思いたいです。