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第12回 自然科学研究機構 若手研究者賞記念講演Q & A

第12回 自然科学研究機構 若手研究者賞記念講演Q & A

第12回若手研究者賞記念講演のオンラインライブ配信をご視聴いただきありがとうございました!皆様からアンケートならびにチャットよりいただきました質問に、講演者たちが答えました。

全ての講演者への質問

Q. AIばかり使うと人間の脳は退化しないのでしょうか?

国立天文台 原田先生:

AIを責任を持って研究用途などに使うためにはAIがどういった風に出来ているかを知るためのある程度の統計の知識は必要ですし、AIが出した答えを確認することも必要です。日常生活でもAIをどううまく使うか考えることも必要でしょう。AIによって人間の脳が退化する危険性はありますが、AIで楽になった分どこに力を注ぐかを常に考えていかなければならないと思います。また、AIに頼るべきでないような、自分や人間にとって何が本当に価値があるのか、などの問いに対しては芯を持った答えを持つ必要があると思います。

核融合研 小川先生:

依然として、データを解釈すること・アイデアを生むことなどは、人間が担うところだと思います。人間は、創造的なことに集中できますので、脳は、更に活性化するのではないかと考えます。

基生研 南野先生:

例えば飛行機で空を飛べるようになったように、我々はこれまでにも科学技術によって生身の人間の能力を超えた様々なことを可能にしてきました。AIの利活用によって、退化ではなくて新しいことができるようになる、人間の可能性をさらに広げることになるといいなと思います。

生理研 二宮先生:

個人的にはならないと思います。AIのことだけとっても、どんなAIをどのように使うべきか、使って得られた結果は何を意味するか、その結果をどう使うか、AIをどのように改良していくか等々、人間が考えることは沢山あります。一方で、AIが得意なために、人間がやる必要性が減っていく部分というのも確かにあるのかな、と思います。

分子研 シルヴァン先生:

In our recent humankind history, the world has been drastically changed with the appearance of new tools. "Books" amplified the dissemination of knowledge (and later, internet did a similar amplification). Recently, "computers" helped human for calculation and automation of many tasks. One can imagine that "AI" could combinethe power of "books" and "computers" together: "computers" could read "books" and use the knowledge of all humankind to help us solve challenges.  I hope that human can use "AI" in a positive way.

国立天文台 原田先生への質問と回答

Q. 宇宙塵が分子形成の触媒になるというのはどのように確かめたのでしょうか?

A. まず、どういった反応において宇宙塵が触媒になるかというと、生成物が反応物より遥かに安定していて、大きな反応熱が気体中では生成物を破壊してしまう、つまりは結果的に反応が進まないような反応です。そういった反応でも宇宙塵があることによって反応熱を宇宙塵が吸収してくれるため、生成物がそのまま生き残ることができます。そういった気体の中では進まないような反応でも宇宙塵のような物質の表面では反応が進むことが実験で確認されています。

Q. 計測目標の座標から放出した光と、計測目標と中間の座標から放出した光とを、どのようにして分離するのでしょうか。高感度センサを用いることで遠い天体の強度の弱い光を見られるということは分かりますが、ノイズの取り除き方を知りたいです。

A. 今回紹介した天体と地球の間にあるのは希薄なガスであるため分子ガスはほとんどなく、混入はほとんど起きません。しかし、混入があった場合も光のドップラー効果で近い距離と遠い距離の天体を切り分けることが可能です。宇宙では一般的には遠い天体ほど速く地球から遠ざかっている為、そこからのシグナルは周波数が少し低くなります。対象天体の速度が分かっていれば天体のシグナルを取り出すことができます。

核融合研 小川先生への質問と回答

Q. 2019年からの今までの4年間で何が進んだのか教えてほしい

A. 高エネルギー粒子閉じ込め研究においては、高エネルギー粒子閉じ込めの詳細を調べるため、高エネルギー粒子の空間分布や、プラズマ中の波動と高エネルギー粒子との相互作用に関する研究等を行いました。後者は特に、核燃焼プラズマにおける高エネルギー粒子の閉じ込めを劣化する可能性がある課題として盛んに研究が行われております。

Q. 小川先生の研究の中で、副次的に得られた技術や知識はありますでしょうか。

A. 10億分の20秒の光を記録するためのシステムを開発しましたが、本システムは、加速器及びホウ素中性子捕捉療法等の研究に用いられています。

基生研 南野先生への質問と回答

Q. 人間のは回転して泳いでるらしいけどそれより複雑なんかな

A. ヒトなど動物の精子も3次元的みると回転など複雑な運動パターンを示すことが明らかになってきています。植物の精子は鞭毛(または繊毛)を複数もち、コケ植物の場合は2本の鞭毛が異なる運動パターンを示すという点で、動物とは異なった複雑さがあると思っています。

Q. 植物の精子と動物の精子の違いは、どのような点でしょうか。また、共通する点は何でしょうか。

A. 動物と植物の精子どちらも鞭毛という毛のような構造を用いて泳ぐ点では共通ですが、動物の精子は鞭毛が生えている側を後ろにして泳ぐ一方で、植物の精子は鞭毛が生えている側を前にして泳ぐ点が大きな違いです。

生理研 二宮先生への質問と回答

Q. ニホンザル以外に、ヒトに近い脳の大きさ、機能を持つ動物は何でしょうか。

A. ヒトを含めた霊長類は概ね、似た構造、機能の脳を持っています。大きさについても、体の大きさに対する割合であれば、霊長類は概ね同じ大きさの脳を持っていると言えます。勿論ヒトの脳は特に大きいですが、構造や機能が他の霊長類と決定的に違う訳ではありません。脳の大きさの比較は単純な体積や重さだけでは不十分で、神経細胞の数、脳の場所による違い等いろいろと考える必要があります。英語の文献のみになりますが、例えばブラジルの神経科学者のHerculano-Houzel博士が非常に興味深い研究を行っていますので、興味があれば是非調べてみてください。

Q. M593が、トレーニングをすると成績が悪くなる理由は何なんでしょうか。変わらないなら何となく理解できるんですが。

A. 実験の手順として、2頭でやる役割交替課題の前に、1頭でやる課題をトレーニングしています。実は講演中に示した成績は、1頭でやる課題の時と全く同じルール・方法でやると、良い値になります。M593は、2頭でやる状況になったにもかかわらず、その変化にすぐには対応できず、1頭の時と同じ方法で課題に取り組んだために、最初の成績が良かったのではないかと考えています。

分子研 シルヴァン先生への質問と回答

Q. Is it possible predicting the result of quantum computing by using a simulation code on an electronic computer? If it possible, how do you calculate probability?

A. You can calculate the result of quantum computer with a normal computer only for very small, simple, problems. For some large complicated problems, only a quantum computer can find the result and it is not possible to simulate the result with a normal computer. 

Q. How fast can you move atoms in the future?

A. We can move atoms at a speed of a few 0.1 micrometer/microsecond. It could probably be improved by a factor 10 by carefully chosing the tweezers trajectory.  

Q. Is there any idea to improve the time and spatial resolution? of an otical pinset?

A. The spatial resolution of an optical tweezers is limited by the wavelength of light to roughly 0.5 - 1 micrometer. But we can very precisely position the tweezers, and the atom in the tweezers. 

Q. 1 micrometer is so big from an atom's perspective, isn't it?(原子からしたら1マイクロメートルはめちゃめちゃでかくね?)

A. Yes, this is true ! An atom have a size of only 0.0001 micrometer. This is very small compare to the distance of 1 micrometer between two atoms. This is why we are making "giant atoms" by sending the valence electron to a gigantic electronic orbital. With this technique, the atom have now a size of 0.1 micrometer, and two nearby atoms can feel each other through electronic interaction. 

Q. Has it not been put into practical use yet?(実用段階になってないのね)

A. Quantum computers are still being tested. They are not yet in practical use. However, quantum sensors are already in practical use. 

Q. Is the day yet to come when it will surpass semiconductor computers?(半導体コンピュータを超える日はまだか)

A. Today, quantum computers are already beating semiconductor computers on very specific, and useless, tasks. The next challenge is to surpass normal computers on important tasks for scientific, technological or societal applications. A lot of researchers in the world are trying this, it is an intense competition. We expect such a demonstration before 2030.