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第9回若手研究者賞記念講演

 自然科学研究機構では、毎年、我々の5研究機関に所属する若手研究者の中から、優秀な研究成果を輩出した研究者を各々1名、計5名選出し、若手研究者賞を授与しています。

 本年度も前途有望な若手研究者5名が選ばれ、6月14日に若手研究者賞授与式および記念講演会が執り行われる予定でしたが、昨今の新型コロナ感染症の拡大防止の観点から、本年度は授賞式と講演会の中止が決定されました。

 例年、本授賞式および講演会の席には受賞者たちのご家族をはじめ、かつてお世話になった出身高校の指導教官や、理系科目を選択している在校生たちを招待しています。今回の式典・講演会開催中止に伴い、受賞者たちの輝かしい成果を高校生諸君へ直接届けることができなくなってしまったのは、とても式典と講演会の中止以上に残念なことです。

 そこで自然科学研究機構は、受賞者各々の講演動画をこのページ上へアップし、特別公開をさせていただきます!

 普段さまざまな事情から、授賞式および記念講演会へお越しになることができない皆様も、ぜひこの機会に受賞者たちの講演動画をご覧いただくことで、私たち自然科学研究機構の未来を担う若手研究者の素晴らしい成果に触れていただけましたら幸いです。

 

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講演動画の公開は終了しました。

 

受賞者紹介

『恒星はいかにして終焉の時を迎えるのか』 守屋 尭(国立天文台 助教)

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大質量星の活発な"死に様"を捉える!

 夜空に輝く恒星の数々は、ずっとその姿を変えることなく光り続けているように見えます。しかし実は、気の遠くなるような長い年月をかけ、徐々に変化を続けているのです。この恒星の変化とは、どのようなメカニズムで起きるのでしょうか?実は、恒星の内部では核融合反応が起きており、得られるエネルギーによって自重を支え続けています。そして核融合反応が進むにつれ、星内部の構造は少しずつ変化していくのです。

 中でも太陽の約10倍以上の質量を有する大質量星は、やがて核融合反応エネルギーを使い切って自重を支えきれなくなり、中心部が潰れ爆発を起こして死の瞬間を迎えます。この現象を私たちは超新星として観測しているのです。ではこの時、大質量星の表面ではどのような現象が起きているのでしょうか?これまでの研究では、大質量星の死の瞬間は表面では特に何も起こらず、穏やかな状態でその時を迎えると考えられてきました。ところが近年の研究から、死にゆく大質量星の表面でも非常に活発な変化が起きていることが分かってきました。

 本講演では、僕の研究テーマである"星の死に様"にみられるドラマチックな変化について、最先端の研究成果を交えて皆様へ紹介します。

 

未来エネルギー「超高温核融合プラズマ」を実現する鍵​​』本島 厳​(核融合科学研究所 准教授)

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"水素"の動きを制御する

 物質には、固体・液体・気体といった状態があります。固体にエネルギーを加えると液体に、さらにエネルギーを加えると気体に変化します。そしてさらに気体へエネルギーを加えるとプラズマという状態になります。

 私たちの目指している核融合発電は、1億度を超える高温プラズマに水素燃料を注入し、注入された水素が高温のイオンとなって核融合反応を起こすことで成立します。イオン化した水素(燃料粒子)は時間の経過とともにプラズマの外に排出され、一部は真空容器壁表面に吸蔵されたり、また一部は壁で跳ね返って再びプラズマに戻ったり、さらに一部は真空ポンプによって容器の外に排出されるなど、さまざまな経過を辿ります。つまり燃料粒子を私たちの思い通りに制御することは、予想以上に困難なのです。そこで私たちは、燃料粒子の制御を容易に、かつ安定的に行うための方法を確立しました。

 本講演では、まず最初に、赤・緑・青の3つの光の反射率から、真空容器の内側に付着した不純物の厚さを測る方法についてお話しします。そして次に、強力な低温真空ポンプを使い、プラズマに戻る水素を減らすことでプラズマの密度をうまくコントロールすることに成功した成果についてお話しします。

 

 

環境変化に細胞はどのように応答しているのか?​​』大坪 瑶子(基礎生物学研究所 特任助教)

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酵母で細胞の基本的システムを理解する​​

​​ 地球上のすべての生物は、細胞から構成されています。酵母のように一個の細胞から成り立っているものから、私達ヒトのように多数の細胞から成り立っているものまで、多種多様な生物が存在しています。細胞が生存するための最も基本的なシステムは、酵母からヒトまで保存されているものも多く、実験がしやすい酵母を使って研究をすることによって、ヒトを含むより高等な生物にも共通したシステムを見出すことができます。

 私はこれまで、細胞が備える基本的なシステムとしての「環境変化への応答機構」に興味を持ち、酵母の一種である分裂酵母S. pombeを使って研究を行ってきました。

 本講演では、私が長年取り組んでいる環境変化の一つである栄養飢餓に対する細胞応答に関する研究をはじめ、最近スタートした分野間融合型研究など、新しい研究の可能性についても触れながらお話したいと思います。

 

 

『脳で味を感じる仕組み』中島 健一朗(生理学研究所 准教授)

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味を伝える神経ネットワーク

 我々人類を含め、全ての動物は生きていくために食べなければならず、食欲は最も重要な本能の1つです。脳は単に生命維持のための栄養摂取という目的のためだけでなく、摂取する食物が美味か、それとも不味いのかといった、味を認知・判断する感覚を組み合わせることで食欲を生み出すことが知られています。

 近年の目醒ましい研究の進展に伴い、舌の上で味を感じる仕組みは判かりつつあります。しかし、舌で感じた味情報が、脳でどのように伝達されているのか、その詳細については未だ不明な点が多いのが現状です。私は、ヒトと同じく様々な味を識別できる動物として知られているマウスをモデルとして使い、脳内で味を感じるメカニズムを解明するべく、日々研究に従事しています。

 本講演では私の研究成果を紹介すると共に、誰にとっても身近な感覚である味覚について、最先端研究によって得られた知見を交えて紹介します。

『原子分子の量子ダイナミクスの理論研究』グエン・タン・フク(分子科学研究所 助教)

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物性物理学の不思議&面白い世界

 物理学は素粒子から宇宙までが含まれて、とても広い分野です。その中に、私の専門は物性物理学というものです。言葉の通り、物性物理学の目的は物の性質を調べることです。物質は、一般的にアボガドロ定数ほど多数の原子や分子で構成されています。また、これらの粒子は独立ではなく、互いに相互作用しているのです。実は、この相互作用は伝導率や磁性などの重要な物性を決めることが多く、そして、超流動や超伝導のような相互作用によって発生する奇妙な現象も少なくありません。それで、粒子間の相互作用によってどのような面白い現象が観測できるのか?の答えを探すのは私の研究の大きなモチベーションの一つです。

 一方、原子系や電子系と比べて分子系はより複雑な構造を持つため、システムのダイナミクスには分子の振動や回転などの様々な内部自由度が含まれているのです。その結果、分子の量子ダイナミクスの制御は困難となります。

 本講演では、相互作用によって発生する多体スピンホール効果という新しい現象の発見と、分子と光のハイブリッド状態である分子ポラリトンを使うことで、化学反応の制御や分子エネルギーの精密測定ができるという斬新な手法の開発を皆様に紹介します。

 

要旨集

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youshi2020 [PDFファイル/7.3MB]

 

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