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追悼 志村令郎先生(第7代 基礎生物学研究所長,岡田清孝先生弔文)

 謹んで志村令郎先生のご冥福をお祈りします。

 志村先生は1932年に山梨県で生まれ、1958年に京都大学理学研究科修士課程を修了の後米国ラトガース大学大学院で学ばれました。1963年からは米国ジョンズホプキンス大学医学部で新たに研究室を持ったダニエル・ネイサンズ教授の下で研究員としてRNAファージの増殖機構に関する分子遺伝学研究に従事され、日本に戻られた後は京都大学理学部生物物理学教室教授としてtRNAの生合成機構やショウジョウバエの性決定機構におけるRNA分子の役割などについて先端的な研究を続けられました。京都大学退官後は、生物分子工学研究所長、日本学術振興会ストックホルム研究連絡センター長を歴任され、2004年には新たに発足した自然科学研究機構の初代機構長として大学共同利用機関の活動を推進されました。また1986年から基礎生物学研究所の客員教授および併任教授を、1999年から日本RNA学会の初代会長を務められました。1994年にはRNAプロセシングの研究で日本学士院賞を受賞されました。

 このように、志村先生は我が国の分子生物学の発展に中心的な貢献をされましたが、私自身大学学部学生の頃から長きにわたってご指導をいただいてきました。私は1969年に当時新設されたばかりの京都大学理学部生物物理学教室において分子遺伝学研究を始めた時から、博士課程修了時まで志村先生にお世話になりました。1986年に志村先生が基礎生物学研究所の客員教授に就任された時には、私は助手として植物の遺伝情報を解析する新たな研究室の立ち上げに関わり、また当時の岡田節人基礎生物学研究所所長のご尽力のもとにシロイヌナズナの研究会やトレーニングコースを開催しました。この植物がモデル植物として普及し、数多くの基礎植物学研究者が用いる「共通基盤」に育つお手伝いができたことは、大きな喜びであり誇りでもあります。

 志村先生には「研究には感性が重要」とよく教わりました。研究分野や研究テーマの選択から指導者としてどの先生につくべきかなどの下世話な問題の決定においても、良い感性・感覚を持つことが研究者として大事だということです。その時点で解くべき大事な問題は何か、どのような手法・技術を用いれば迫ることができるか、流行に流されず、しかし無理に時代に逆行し孤立することなく正しい選択をするためにはどうすればよいのか。「優れた研究者は優れた感性を持っているから」とお聞きしても、そのような感性をどのようにして身につければよいのか困惑しますが、優秀な先輩研究者の歩んだ道をみればヒントが得られると教えられました。私自身は、それを実践したとはとても言えませんが、これから科学研究を志す若い方々で、この文章を目にした方が心の片隅に留めておいていただければ、志村先生も喜ばれることと思います。

令和5年10月2日

第7代 基礎生物学研究所長

岡田 清孝

 

2009.10.30 Princeton Old Queens.jpeg

米国プリンストン大学構内における志村先生。200910月、自然科学研究機構とプリンストン大学との国際連携協定締結のために訪問された際に撮影。