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研究チームの多様性が免疫アレルギー領域の研究成果に与える影響を解明 ~ 新しい多様性指標 o-index を用いたアレルギー領域での世界初の研究結果

京都府立医科大学大学院医学研究科 医療フロンティア展開学 特任講師 足立剛也 、 ライデン大学 コンピューターサイエンス学部 修士課程 成松紀佳、 国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室 室長 森田英明、 自然科学研究機構 特任教授 小泉 周らの研究グループは、 アレルギーおよび免疫学分野における研究チームの多様性が科学的成果に及ぼす影響を明らかにし 、 本件に関する論文が 科学雑誌 『 World Allergy Organization Journal 』 に 2024 年 12月 13日 付けで 掲載されま した 。 本研究は、日本の科学研究費補助金( JSPS )、米国国立衛生研究所 ( NIH )、および英国医 療研究評議会( MRC )の資金を受けたチームを対象に、チーム構成の多様性と研究成果の関係を調査しました。各機関での研究成果とチームの多様性との関連を、今回新たに開発した多様性指標 である o-index (omnidisciplinary index) を 用いて 多元的に 解析した結果、 NIH や MRC では分野横断的な多様性が成果向上に関連している一方、 JSPS では専門性の高 いチームがより高い成果を上げる傾向が見られました。本研究成果をもとに、今後は各研 究領域や資金提供の目的に応じた最適なチーム構成の設計が期待されます。

1 . 研究分野の背景や問題点
 アレルギー疾患や免疫学の分野では、多分野的なアプローチが必要不可欠です。その原因として、アレルギー疾患の多くが人生の長い期間にわたり症状を呈することが挙げられ ます。これらの疾患は眼、耳、皮膚、鼻、呼吸器、消化器、腎、中枢神経など、複数の臓器にまたがる症状を引き起こすため、診療において複数の診療科の併診が必要になる場合 があります。また、小児期から成人期までにかけて、疾患管理を担う診療科が変遷することも少なくありません。 このような疾患の複雑性と幅広い影響を踏まえ、アレルギー疾患対策基本法に基づくアレルギー疾患対策の推進、および免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略が策定されています。この戦略は、免疫アレルギー疾患研究の現状を正確に把握し、疫学調査、基礎病態の 解明、治療開発、臨床研究を長期的かつ戦略的に進めるための具体的な研究事項を提示しています。 本研究は、こうした国内の枠組みをふまえ、国際的な視点から研究チームの専門性や分野横断的な多様性が研究成果にどのように影響を与えるかを分析することを目的としました。 アメリカ NIH 、イギリス MRC 、日本 JSPS の 3 つの主要な研究資金提供機関を対象とし、 各機関が異なる文化的・政策的背景のもとでどのように成果を生み出しているかに注目しました。

2. 研究内容・成果の要点

研究チームの構成がどのように研究成果に影響を与えるのか。これまで曖昧だったこの 課題について、アレルギー・免疫学分野を対象に詳しい分析を行いました。本研究では、 アメリカの国立衛生研究所( NIH )、イギリスの医療研究評議会 MRC )、そして日本の科学研究費助成事業( JSPS )の基盤研究 A )から資金提供を受けた合計 33 チーム( 6356 件の 論文)を対象に、研究チームの多様性と成果の関連を調査しました。

チーム構成の多様性を測る3つの指標

研究チームの多様性は、研究分野の広がりを示す「ASJC コード数」、研究分野のバランスを示す「Shannon Wiener Index」、新たに開発した分野間の格差を示す「Omnidisciplinary Index( o-index )」を用いて評価。一方、研究成果は、論文の総数(研究の量)、引用数の 多い上位 1 %の論文数(研究の質)、および上位 10 %の論文数(研究の厚み=持続性)で評価しました。

研究結果のポイント

 分析の結果、 アレルギー研究の分野は高い水準 にあり、学際性が重要な役割を果たしていましたが、 日米英のチーム間で多様性指標に大きな差は見られませんでした 。しかし、 研究チーム構成の多様性と研究成果との関連性には違いが見られました。 今回 、JSPS については基盤研究( A )領域のアレルギーに関係する研究チームを解析していますが、これらのチームの間 では比較的 専門性の高いチーム構成が研究成果に貢献していました。 一方、NIH や MRC では分野横断的な多様性が研究の量と質の向上に寄与している傾向が見られました。この結果は、国ごとの研究環境や資金提供プログラムの目的に応じたチーム構成が 、研究成果に与える影響の違いを示唆しています。 また、チーム多様性の解釈はその定義によって異なることも明らかになりました。 NIH や MRC では、異なる分野の研究者をチームに迎えることが成果向上に寄与する一方、 JSPS では各分野で深い専門性を持つメンバーが重要な役割を果たしていることが示唆されました。 今後、これらの指標を 含めた複数の指標を統合的に評価することで、チームの多様性が研 究成果に与える影響をより深く理解することができると考えられます。

3 . 今後の展開と社会へのアピールポイント
 本研究は、異なる国や研究環境においてチーム多様性が研究成果に及ぼす影響を定量的に評価したものであり、研究チームの構成戦略を最適化するための一助となる知見を提供します。これにより、アレルギーや免疫学の分野だけでなく、他の多分野にまたがる研究領域においても、多様な視点を取り入れたチーム構成が科学的進展とイノベーションの促進につながることが期待されます。研究資金の効率的な活用や科学政策に対する示唆も含め、本研究の成果が今後の科学技術発展に寄与することが期待されます。

掲載誌情報

雑誌名 World Allergy Organization Journal
発表媒体 : オンライン速報版 
オンライン閲覧 可:URL https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1939455124001364
掲載日:2024年12月13日(日本時間)
論文タイトル(英・日) 英語: Research team diversity impacts scientific output in allergy and immunology programs (日本語: 免疫アレルギー領域における研究チームの多様性が科学的成果に 与える影響
代表著者
京都府立医科大学大学院医学研究科 医療フロンティア展開学/慶應義塾 大学医学部皮膚科学教室 /慶應アレルギーセンター 足立剛也
ライデン大学コンピューターサイエンス学部 成松紀佳
国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室 /アレルギーセンター 森田英明
自然科学研究機構 小泉 周
共同著者
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 、 慶應義塾大学病院アレルギーセンター 、 京都府立医科大学大学院医療フロンティア展開学 足立剛也
ライデン大学コンピューターサイエンス学部 成松紀佳
名古屋大学医学部 附属病院 先 端医療開発部 小川 靖
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 鳥谷真佐子
東京通信大学人間福祉学部 福士珠美
東京科学大学リベラルアーツ研究教育院 調麻佐志
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 国立病院機構 名古屋医療センター小児科 二村昌樹
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 順天堂大学大学院医学研究科眼科学講座 、 順天堂大学大学院医学研究科病院 管理学講座 、 順天堂大学 AI インキュベーションファーム 猪俣武範
国立病院機構三重病院 、 貝沼内科小児科 貝沼圭吾
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 東京女子医科大学 呼吸器内科 神尾敬子
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 千葉大学国際高等研究基幹 大学院医学研究院イノベーション医学 倉島洋介
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 慶應義塾大学医学部内科学教室 呼吸器 、 慶應義塾大学病院アレルギーセ ンター 正木克宜
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 京都大学大学院医学研究科・炎症性皮膚疾患創薬講座 中島沙恵子
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 福井大学医学部附属病院福井アレルギー疾患対策センター 、 福井大学医学部 感覚運動医学講座耳鼻咽喉科・頭頸外科学 、 福井大学医学部附属病院医学研 究支援センター 坂下雅文
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部 佐藤さくら
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部 玉利真由美
免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略次世代タスクフォース( ENGAGE TF) 、 国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室/アレルギーセンター 森田英明
自然科学研究機構 小泉 周

研究情報

研究課題名
2022年度科学研究費助成事業「ナショナルデータ・厚み指標解析による皮 膚アレルギー領域の持続的・多元的評価研究」
代表研究者:京都府立医科大学大学院医学研究科医療フロンティア展開 学/慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 /慶應アレルギーセンター 足立剛也
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究事業:免疫アレルギー疾患研究 10 か年戦略の進捗評価 と課題抽出、体制強化に関する研究」
代表研究者 国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 アレルギー研究室 /アレルギーセンター 森田英明
JST/RISTEX "Science, Technology, and Innovation Policy" Research Program 課題番号: JPMJRX19B
自然科学研究機構 小泉 周
共同研究者:共同著者と同様 資金的関与(獲得資金等)

京都府立医科大学プレスリリース
国立成育医療研究センタープレスリリース