イベント情報
ひらけ科学のトビラ!Dear WONDER
講演者3: 矢木 真穂


矢木 真穂(やぎ まほ)
名古屋市立大学 大学院薬学研究科 准教授
<略歴>
2010年 名古屋市立大学 大学院薬学研究科 創薬生命科学専攻 博士後期課程 修了
2010年 日本学術振興会 特別研究員
2011年 自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 特任助教
2022年 エクセター大学, 独立行政法人日本学術振興会 海外特別研究員
2013年 英国ケンブリッジ大学 博士研究員
2015年 自然科学研究機構 分子科学研究所 助教
2018年 自然科学研究機構 生命創成探究センター 助教
2022年 名古屋市立大学 大学院薬学研究科 講師
2025年 現職

クマムシから探る生命と物質の境界
クマムシは、乾燥すると体を縮めて「乾眠」と呼ばれる状態になり、水のない環境を長期間生き延びることができます。乾眠中には、代謝をはじめとする生命活動が、ほとんど止まったような状態になります。それでも、水を与えると再び活動を始めます。動かず、変化もせず、まるで物質のように見えるクマムシは、その間も「生きている」といえるのでしょうか。
この不思議な生存能力を支えているのが、クマムシに特有のタンパク質です。これらのタンパク質は、普段は細胞の中に分散していますが、水が失われると互いに集まり、繊維や網目、ゲルのような状態をつくります。そして、細胞の形を支えたり、大切な分子が壊れたり集まったりするのを防いだりすることで、乾燥から生命を守ると考えられています。水が戻ると、集まっていたタンパク質は再び細胞内に分散した状態へ戻り、細胞も通常の状態を取り戻します。
タンパク質は、それ自体は生き物ではありません。しかし、環境の変化に応じて集まり、姿を変え、生命を守るはたらきを示します。生きていない物質の集まりから、どのように生命を支える仕組みが生まれるのでしょうか。本講演では、クマムシの乾眠とタンパク質の集合を手がかりに、生命と物質の境界、そして「生きている」とは何かを一緒に考えます。
<研究者を目指したきっかけは何ですか?>
研究者を目指すきっかけは、学部4年次の卒業研究で、アルツハイマー病に関わるアミロイドの研究に取り組んだことです。タンパク質が集まることで、その形や性質が大きく変化し、病気にも関わることに驚きました。実験を重ねながら、未知の現象を一つずつ明らかにする研究の面白さに魅了され、もっと研究を続けたいと思うようになりました。それ以来、タンパク質の集合を軸に研究を続けています。